取得費になるもの・ならないもの
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個人の方が土地やマンション等の不動産を売却すると、売却益(譲渡所得)に対して所得税と住民税が発生します。
税金が発生するのは、売却価格(譲渡価額)ではなく、売却益(譲渡所得)です。
つまり、稼ぎの部分に課税されることになります。稼ぎを把握するためには、「不動産をいくらで購入したのか」の取得費を算出する必要があります。
- 取得費に含まれないものって何?
- 取得費がわからない場合でも取得費を調べる方法はないの?
- 銀行の借入利息は取得費に参入できるの?
- エアコンや室外機は取得費に参入できるの?
このページは、譲渡所得を計算するに当たっての【取得費】に特化した内容となっています。
あなたが売却した不動産の取得費が何に該当するかを理解いただけますし、取得費がわからない場合の対処方法も知ることができます。ぜひ最後までお読みください!
取得費が増えれば、それだけ納める税金を少なくできるんですよね?
その通りじゃよ!意外と知られていないものも取得費として計上できたりするんじゃよ。このページでしっかり押さえておきたいものじゃな。
不動産売却で取得費にできる費用一覧
取得費は、土地や建物の取得に要した金額に設備費や改良費を加えた金額です。
ただし建物の場合は、建物の取得価額から売却時までの減価償却費を控除した残額が取得費になります。
減価償却は、建物や車、製造業務で使う機械装置などの固定資産の価値を減少させていく考え方です。
減価償却の考えに則り計上される費用を、「減価償却費」といいます。
不動産の場合、「建物」にフォーカスして考えてみましょう。。
建物は年を重ねるごとに老朽化が進み、物件価値が減少します。この物件価値が下がっている部分を、税法で決められた「耐用年数」に割り当てて経費化することを「減価償却」といわれています。
一般的な取得費【土地建物共通】
- 購入代金
- 購入手数料(仲介手数料)
- 売買契約書、建築請負契約書に貼付した収入印紙
- 購入時の固定資産税、都市計画税の精算金
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 特別土地保有税(平成15年以降は課税なし)
- 不動産を取得するための借入金の利子(注1)
▼建物の取得費一覧をチェック!
▼土地の取得費一覧をチェック!
不動産を取得するための借入金の利子(注1)
借入金の利子は取得費に含めることができますが、注意が必要です。
過去の判例によって、以下の期間のみが取得費と認められています。
①取得した資産の使用開始前の期間に対応する利子となります。
なお、利子以外でも「借入金の保証料」「団体信用生命保険料」も取得費に含めることができますが、取得した資産の使用開始前の期間に対応する部分のみとなります。
使用開始後の利子や保証料は認められないのですね・・・
そうじゃな!意外と知られていないため注意が必要じゃぞ。では続きを見てみよう。
建物の取得費
- 建物等に要した材料費・労務費
- 取得した建物の立ち退き交渉の費用
土地の取得費
- 住宅の敷地に要した宅地造成費(埋立費や土盛費)
- 取得した土地所有者の借金を肩代わりした際の弁済金
- 土地の一部を売却した場合の取得費
- 取得した土地の立ち退き交渉の費用
- 土地と共に取得した建物の取壊し費用
その他
- 所有権を確保するために要した訴訟費
- 離婚による財産分与の取得費
- 相続財産の代償分割の取得費
- 解約解除による違約金
- 贈与、相続により取得した取得費
こうして見てみると意外と取得費に含めてもいい費用って結構ありますね。
うんうん。「取得費に含めていいか」の判断がつかない場合は、税務署に確認することが重要じゃぞ。
不動産売却で取得費にできない費用一覧
- 固定資産税
- ローン保証料(取得した資産の使用開始後に対応する保証料)
- 団体信用生命保険料
- つなぎ融資の事務手数料
- つなぎ融資の金利
- 火災保険料、地震保険料
- カーテン、家具、家電製品代等
- インターネット加入料、CATV使用料
- 管理費、修繕積立金
- 建物リフォーム代金(※注1)
- 土地を改良するための借入金の利息(※注2)
- 遺産分割の訴訟費用(※注3)
建物リフォーム代金(※注1)
例えばリフォーム代金に含まれるものとして、壁の貼り替えや壁紙の張替え、畳の表替えなどがありますよね。
基本的に、現状を維持するための「修繕費」は取得費に含まれません。
一方、「畳をフローリングにした」「壁をモルタルからタイルに張り替えた」など、「資産価値」を高めるための支出は取得費となります。
この辺りの線引きは、非常に難しいため必ず税務署に確認してください。
・迷ったら自分だけで判断せずに税務署に確認してみよう。
・確認の際は、領収書や当時の資料をできるだけ用意することを忘れずに!
・2月から3月15日までは確定申告の時期と重なるため税務署が大変混雑します。なるべく早めに確認しましょう。
土地を改良するための借入金の利息(※注2)
「意外!」と思われるかもしれませんが、土地を改良する際の借入利息は、土地の「改良費」には該当しません。
遺産分割の訴訟費用(※注3)
相続財産について、遺産分割の際に相続人の間で紛争が発生した際の訴訟費用や弁護士報酬は、取得費とは見なされません。
判例によると遺産分割は共有による相続財産の分配にすぎず、相続財産に含まれている個々の財産価値はそのものに変動を及ぼすものではないからです。
不動産売却では取得費の計算方法は2種類から選べる
- 実際に支出した取得費から計算
- 概算取得費(取得費が分からないとき)
→譲渡価格の5%を取得費とする
2の概算取得費を採用する場合は、①取得費が不明、②実際の取得費よりも譲渡価格の5%の方が有利な場合となります。
では実際に建物と土地の取得費を計算してみましょう。
1.実際に支出した取得費から計算
減価償却費=購入代金×0.9×償却率×経過年数
建物の取得費=購入代金ー減価償却費
※購入代金は先に解説した取得費の合計額です。
経過年数?減価償却?
むむむ・・・何やら難しい用語が出てきましたね・・・
建物の取得費を計算する際は、「減価償却」という考え方が重要です。もう一度おそらいしましょう。
土地は年数が経過しても価値が減少しませんが、建物は老朽化によって物件価値が下がりますよね。
この物件価値が下がる部分を、国税庁が定めた「耐用年数(経過年数)」に割り当てて経費化することを「減価償却」と言います。
建物価格の取得費を計算する際の「取得費」は、購入価格ではなく「減価償却費」を控除した残額となります。
土地と違い、建物は年月が経過すると価値が下がるじゃろ?この年月分の価値を建物価格から「減価償却費」として差し引く必要があるのじゃ!
「耐用年数」は、建物が木造なのか鉄骨なのか建物構造によって以下のように決まっています。
構造 | 業務用 | 非業務用 | |||
---|---|---|---|---|---|
耐用年数 | 償却率 | 1.5倍した耐用年数 | 償却率 | ||
木造 | 22年 | 0.046 | 33年 | 0.031 | |
木骨モルタル | 20年 | 0.050 | 30年 | 0.034 | |
(鉄骨)鉄筋コンクリート | 47年 | 0.022 | 70年 | 0.015 | |
金属造 | 骨格材3mm以下 | 19年 | 0.053 | 28年 | 0.036 |
骨格材3超4mm以下 | 27年 | 0.038 | 40年 | 0.025 | |
骨格材4mm超 | 34年 | 0.030 | 51年 | 0.020 |
【実践!】建物の取得費を計算してみよう
Aさんが平成18年4月に3,500万円(建物価格2,500万円、土地価格1,000万円)で新築した木造戸建てのマイホームを平成27年8月に3,000万円で売却しました。取得費はいくらになります?
6,277,500円=25,000,000円×0.9×0.031×9年
建物=建物価格-減価償却費=25,000,000円-6,277,500円=18,722,500円
土地=10,000,000円
取得費=建物取得費+土地取得費=18,722,500円+10,000,000円=28,722,500円
今回は、建物価格2,500万円とし他の取得費は参入しませんでしたが、手数料や印紙代などがある場合は、建物価格に含めて計算してください。
計算方法は意外とカンタンでしたね。計算式に当てはめてみればいいだけなんですね。
そうなんじゃよ!減価償却と聞くと「難しそうだ・・」と身構えてしまう人もいるかもしれんが実際の計算はとても簡単なんじゃよ。
2.取得費不明の場合の計算と証明方法(概算取得費)
先に解説しました通り、取得費が不明な場合は、売却代金の5%を概算取得費とします。
例えば、売却価格4,000万円の不動産の取得費が不明な場合、以下となります。
概算取得費=売却代金×5%=4,000万円×5%=200万円
概算取得費で算出すると大幅に取得費が下がるため、可能な限り購入当時の資料を用意してください。
しかし、すぐに見つからない場合や紛失して見当たらない場合は、他に代わる資料で取得時の金額を証明する必要があります。
証明方法1.購入当時の銀行口座の通帳など金額が明らかに証明できるもの
預金通帳があれば、少なくとも口座からお金が出ていれば証明できます。
購入日は登記簿謄本で確認できるため、近い日付での出金であれば、高い確率で資産の取得日だと考えられます。
通帳に「○○の土地代」などのメモ書きや前の所有者名が振込先として印字されていれば、信頼性の高くなります。
証明方法2.購入時の住宅ローンを借りた時の契約書や返済予定表
金融機関は、物件価格を超えるオーバーローンで融資しないため、住宅ローンの金額が大体の購入価格だと考えられます。
もし、ローンの他に自己資金を入れている場合は、自己資金の額がわからないと正確な取得費がわかりませんが、少なくともローン額以上ということは推測できます。参考になる資料だと言えます。
証明方法3.抵当権の設定金額がわかるもの
ローンに関する資料が無い場合は、登記簿謄本の乙欄から抵当権設定金額がわかれば、借入金額から購入価格を推測することができます。
証明方法4.購入当時の価格が記載されているパンフレット、チラシなど
特に新築物件の場合、パンフレットに記載されている売出価格がわかれば、その金額で購入している可能性が高くなります。
中古の場合は、金額が記載されていても、値引きされている可能性があるため、他の資料(預金通帳、ローン契約書など)を用意できれば、金額を裏付ける資料になる可能性が高くなります。
これらは一例ですが、可能な限りの資料を集めて税務署に相談してみましょう。
【応用】建物の購入価額がわからない場合の計算方法
請負契約で建物を建築した場合、建物の購入価額がわかるため減価償却がすぐにできますが、マンションや建売住宅、中古住宅の場合、土地と建物が一体の場合、建物の購入代金がわからないことがよくあります。
この場合以下の3パターンごとに建物の購入代金を計算します。
①消費税額から建物価格を逆算する
売買契約書に消費税額が記載されている場合は、消費税を割り戻すことで建物の購入価額を計算します。
建物の購入価額=(消費税額÷消費税率)+消費税額
実際に建物の取得費を計算してみましょう。
契約書に記載されている購入代金8,240万円(内消費税240万円)
建物=(消費税額÷消費税率)+消費税額=(2,400,000円÷8%)+2,400,000円=32,400,000円
土地=購入代金-建物=82,400,000円-32,400,000円=50,000,000円
②取得時期から建物価格を推計する
土地と建物の価格が区分されておらず、消費税も記載されていない場合は、「建物の標準的な建築価額表」を基に建物の取得費を計算します。
建物の標準的な建築価額表(一部抜粋)
建築年 | 構造 | |||
---|---|---|---|---|
木造・木骨モルタル | 鉄骨鉄筋コンクリート | 鉄筋コンクリート | 鉄骨 | |
平成14年 | 153.6 | 195.2 | 180.5 | 135.0 |
平成15年 | 152.7 | 187.3 | 179.5 | 131.4 |
平成16年 | 152.7 | 190.1 | 176.1 | 130.6 |
(単位:千円/㎡)
計算式は以下となります。
建物の購入価額=建築価額×建物床面積
実際に建物の取得費を計算してみましょう。
契約書に記載されている購入代金の総額5,000万円。
平成15年に新築した木造の建物(床面積100㎡)とその敷地
建物=建築価額×建物床面積=152.7千円×100㎡=15,270,000円
土地=購入代金-建物=50,000,000円-15,270,000円=34,730,000円
③固定資産税評価額の比率で按分する
購入当時の土地建物の固定資産税評価額など土地と建物の価格を示す数値がわかっている場合は、土地と建物の価額を按分することもできます。
建物の購入価額=購入代金×建物評価額÷(土地評価額+建物評価額)
実際に建物の取得費を計算してみましょう。
契約書に記載されている購入代金の総額7,000万円。
購入当時の固定資産税評価額(土地3,500万円、建物1,500万円)。
建物=購入代金×建物評価額÷(土地評価額+建物評価額)=70,000,000円×15,000,000円÷(35,000,000円+15,000,000円)=21,000,000円
土地=購入代金-建物=70,000,000円-49,000,000円=21,000,000円
建物価格が不明でも計算する方法があるんですね。
そうなんじゃよ。この辺りは参考程度に見ておけばよいじゃろう!
【超お得!】不動産売却をした場合、3,000万円特別控除を活用しよう
マイホーム(自宅)を売却した場合は、売った利益から3,000万円分まで税金がかかりません。
課税譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-3,000万円特別控除
例えば3,000万円で自宅を売却したとします。取得費が不明なため概算で計算します。譲渡費用は仲介手数料等で100万円かかったとします。
この場合、3,000万円特別控除を適用すると以下になります。
課税譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-3,000万円特別控除
0円=3,000万円-150万円-100万円-2,750万円
このように課税対象となる所得が0円となるため、譲渡税が発生しません。
概算取得費の5%で計算しても3,000万円特別控除が使えるから安心ですね。
そうじゃな!マイホームの売却なら所有期間も関係ないため、ぜひ利用して欲しいな。3,000万円特別控除を適用する際は、確定申告が必要なので忘れずに!
税理士監修者コメント
【監修者】本村 健一郎
本村健一郎不動産を売却したときの取得費にはなるものとならないものがあります。もれなく把握して正確に税金を計算するようにしましょう。
税理士:本村健一郎の詳細
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