マンション育ちのツンデレ猫を連れて、農家に嫁いだ話

マンション育ちのツンデレ猫を連れて、農家に嫁いだ話のイメージ

はじめまして、フリーライターの村崎なぎこです。

30代半ばで「いい加減に結婚しろ」「結婚しない主義の私に何を言う」と親子ゲンカの果てに実家を出て、アパート住まいに。5年住んだ後、築30年近い中古マンションを購入して、「終身独身の覚悟」で転居しました。

【著者】村崎なぎこ
栃木県在住のフリーライター。2004年から「1000円グルメの旅」を公開中(現在はライブドアブログ)。
「1000円で楽しめるグルメ」を求めて、47都道府県踏破終了。2019年1月にトマト農家の男性と結婚。現在、夫婦と愛猫しじみの2人+1匹の暮らし。 特に好きなのはアイスコーヒー、いちごパフェ、かき氷、モーニングセット、そして肉料理。

その1 ツンデレ猫「しじみ」、マンションで育つ

持ち家になると、恋しくなったのが猫。

小学5年の時に拾った猫を、17年後に老衰で亡くなるまで可愛がった身としては、猫にそばにいて欲しかったのです。

マンションの管理組合には事前に飼育許可はもらっていたものの、仕事で留守にすることも多い私。動画サイトで猫動画を観ていればいいかなと思っていたところ、縁あって保護猫(推定3か月の女の子)をもらうことになったのでした。

実家が商店をやっていたこともあり、看板猫だった初代猫は人なつこく、猫とはそういうものかと思っていたのですが、「しじみ」と名付けた保護猫は違ったのです。

とにもかくにも、人間が大嫌い。私のマンションに来た最初の三日間は、ひたすら私から逃げる逃げる。

落ち込んだものの、私も孤独が好きだし、きっとしじみも独りがいいんだろう。と、不干渉を決め込んだ四日目。なんと、自分から近づいてきたのでした。


初めてデレた直後の「しじみ」

感動したのもつかの間。すると今度は「遊べ!構え!」とひたすら鳴き、トイレはもとより、お風呂の中まで追いかけてきて、湯舟に落ちそうになる始末。

「この子はツンデレだったのか!」と気づいた時には既に遅く、ひたすらデレてくる猫に、私のプライベートな時間はすべて取られることになったのでした。

マンションで飼うと、心配なのが「脱走」。水平方向はもとより、垂直方向にも動き回る猫を逃がしてしまったら、マンション中を探し回らなければならないことに。

細心の注意を払ったものの、脱走回数は3回。1、2回目は自分で網戸を開けて逃げ(その直後に発見・捕獲)、3回目は私がベランダに布団を干そうと網戸を開けた瞬間に飛び出し、ベランダをつたって3軒先まで逃げてしまったのでした。

マンションのドライな人間関係を満喫していた私は、近所づきあいをしていませんでした。顔面蒼白になった私。しかし、逃げた先の住人の方に遭遇してビックリしたのか、私の部屋に逃げ帰ってきたのでした。

この日以来、布団を干す時には、しじみを違う部屋に閉じ込めるように。また、網戸は養生テープで止め、しじみが自力で開けることもできないようにしました。

しかし、リビングのキャットタワーから外をじっと見つめるしじみを観ていると、ちょっと申し訳ない気分になったのも事実。

せめて「お友達猫」を迎えて遊ばせてあげたいと思いつつも、そのマンションは多頭飼育は不可だったのでした。

その2 縁談が来た

そんな「しじみ」との暮らしも4年目に突入。基本的に心配性の私はアレコレ不安に襲われることもありました。その最もたるものが

「私に何かあった場合、誰がしじみをレスキューしてくれるんだろう」

マンションの密閉空間で倒れたとしたら、誰かが助けてくれるまで時間はかかる(誰も来ないという可能性も)。そしてしじみは大の人間嫌いだから、たとえ誰かが来たとしても隠れてしまう。

そんなある日、私は胃腸炎で三日間寝込むハメに。布団で呻く私を心配してニャーニャー鳴くしじみの姿を眺めながら、「私の人生、このままでは……やっぱりダメなのかもしれない」と思い始めたのでした。

それ以来、公私共に壁にぶつかって悩んでいたら、なんと私にお見合い話が。

相手は農家の男性で、二階建ての家に一人暮らし。

しじみのためにも、私も身を固めた方がいいのかもしれない。親も高齢だし、安心させてあげたいという気持ちも湧いてきた。でも、既にアラフォーも過ぎてしまったし、今さら感も。ここまで一人で頑張ってきたんだから、最後まで独身を貫きたい気持ちもあるし。

……と悩んだ結果、お見合いする前に、先方に三つの条件を出しました。

「その1、完全室内飼いの猫がいます。その2、(取材や趣味で)フラっと一人旅に出てしまいます。その3、私は大の漫画好きなので、大量のマンガ本と共に嫁ぐ形になります」

これでダメなら生涯独身で行こう。たぶんお断りだろうと思って返事を待ったら、まさかのOK。「勢いとタイミング」が一致し、あっと言う間に結婚が決まり、お見合いから4か月後には入籍&引っ越しとなったのでした。

夫には結婚前に、しじみの特性(私以外の人間が大嫌い、マンション育ちだし外には絶対出せない)を繰り返し説明しました。二人で話し合った結果、「慣れるまでの間、しじみが住むのは二階(夫は二階を全く使っていなかった)。階段には『衝立(ついたて)』を置いて、しじみを一階には下ろさない」という結論に。

そして、私はしじみを連れて嫁いできたのでした。

これからの波乱を象徴するかのように、その日は吹雪でした。


引っ越し当日、クローゼットに籠城した「しじみ」

その3 しじみ、一軒屋の生活になる

マンション住まい時代、「しじみに与えてあげたいな」と思う環境がありました。それは、木登りできる庭木、思いきり走りまわれる庭、私と一緒にひなたぼっこできる縁側。

引っ越してきた夫の家には、それらがすべて揃っていたのです。

しかし、現実は難しい。しじみが木登りしたら、絶対降りられない。それ以前に、庭に出したら逃走必至。縁側も、一階にいる夫の気配を察して、絶対に降りてこないし。

これではマンション時代と変わらないのでは……悩み始めた私。

しじみはしじみで、環境の激変に苦労していました。床が(ボロボロの)カーペット敷きだったマンションでは滑ることなく走り放題。

しかし、夫の家はフローリング。走ると滑る滑る。さらに、私以外の人間(夫)の気配が常にある。一階で夫が物音を立てるたびに、飛び上がってクローゼットに隠れる日々。

どないしよー。

…と悩むのは、早かったようで。

実は神経が太いしじみ。

私と夫の留守中、さらには寝静まった真夜中に衝立を自分で開けて、一階に潜入調査を始めたのでした。

それだけでなく、今まで存在の無かった「階段」の上り下り訓練や、フローリングの走行訓練(特にコーナリング)も自主的に行い始めました。

そして、結婚から半年になろうという現在。 しじみは、縁側に行くようになりました(ただし、夫が家にいない時限定)。 これで、ハッピーエンドと思いきや。しじみの人間嫌いは相変わらず。

夫が二階に上がって来る気配を感じるとクローゼットに逃げ込み、夫の姿が見えると「シャー!」と威嚇。

しかし、がんばる夫。朝昼晩とクローゼットに逢いに行き、「シャー!」の洗礼をもらい、引っかかれ…。

そんな日が続いていたのですが、夫が多忙で、二日間ほど二階に上がれませんでした。そうしたら心配(?)したのか、夜、しじみが一階の夫の部屋に降りてきて、様子を伺ったのです(ただし夫は就寝中)。

それを伝えたら夫は感激し、しじみに逢いに行ったのです。でも「シャー!」。

なんで~?と嘆く夫に、私はこう伝えたのでした。

しじみは、ツンデレだから……。
現在の夢は、縁側でお茶を飲む私と夫の間で、しじみがひなたぼっこをすること。いつ叶うことやら。


「しじみ」、夫の留守中に縁側を探索

【著者】村崎なぎこ
栃木県在住のフリーライター。2004年から「1000円グルメの旅」を公開中(現在はライブドアブログ)。
「1000円で楽しめるグルメ」を求めて、47都道府県踏破終了。2019年1月にトマト農家の男性と結婚。現在、夫婦と愛猫しじみの2人+1匹の暮らし。 特に好きなのはアイスコーヒー、いちごパフェ、かき氷、モーニングセット、そして肉料理。

ブログ:http://1000yen.blog.jp/
Twitter:https://twitter.com/utsunomiya1000y

 
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