不動産を売却した場合は、確定申告が必要となるケースがあります。
会社勤めされている方などは、ふだん確定申告など無縁の方も多いと思います。また、確定申告と聞くと何やら難しそう・・・などの不安をお持ちの方も多いと思います。
- 不動産売却で確定申告が必要なるケースを知りたい。
- 黒字の所得と赤字の所得を相殺する方法を知りたい。
- 確定申告の必要書類を知りたい。
- 確定申告しないとどうなるの?
このページでは、不動産を売却して初めて確定申告される方向けのページです。
最後までご覧いただくことで、今まで確定申告が全く無縁だった方も、理解が深まると思います。ぜひ、最後までご覧ください。
はじめての確定申告なので手順がわからないので勉強します!
その心がけは大切じゃぞ!
不動産売却後の確定申告が必要なケース
ネット上のQ&Aサイトなどを見ていると「個人の方が土地やマンションなどの住宅を売却すると全員確定申告が必要。」と回答している方がいますが、これは完全な間違いです。
売却益が発生した際は必須!
確定申告が必要になるケースは、あくまでも「買った値段よりも高く売れた。」場合つまり、売却益が発生した際は必須です。
この売却益のことを「譲渡所得」といって、譲渡所得がプラス(売却益)なら確定申告が必要ですし、マイナス(売却損)なら確定申告が不要です。
売却した翌年の3月15日までに確定申告をしてください。
売却損でも確定申告した方が良い場合もある
しかし、マイホームの売却における譲渡所得がマイナス(売却損)でも確定申告することで、他の黒字の所得との相殺(損益通算)が認められます。
さらに相殺(損益通算)しきれないマイナス(売却損)分は翌年以降の3年間所得から差し引くことがでできる(繰越控除)が設けられています。
ふだん確定申告に無縁な会社員などは、最大4年間、給与から差し引かれていた所得税が戻ってきます。
ただし、この特例は、マイホーム(居住用財産)を売却して赤字(譲渡損失)が出ただけでは適用されません。
新しくマイホームを買換えなければいけません。確実に売却損が出る方で、新しいマイホームに買い換える方は、詳しくは以下のページをご覧ください。
ほとんどの場合は確定申告が不要
特に東京都内の都心三区(千代田区、中央区、港区)は、空き家問題がある地域とコロナ明けのインバウンド需要などでミニバブル状態となっている一部の地域があり、バラツキが大きいです。バブル期以降に購入した物件を売却したとしても、多くの場合、赤字(売却損)だと思います。
このため、ほとんどの方は、売却益ではなく売却損になるケースが多いと思います。
先の解説の通り、不動産売却における損益通算はマイホームの買換えのみに認められているため、売却損は原則切り捨てとなります。
しかし、ご自身では売却損だと思っていても、実は売却益が発生していたといった勘違いもあるため、具体的な計算方法について解説します。
実際に具体例を挙げて計算してみるぞよ!
確定申告が必要かどうかの具体的な計算方法
中村さんは、平成20年4月に2,000万円の土地を取得し、800万円で木造戸建てを新築しました。その後、平成30年4月に2,700万円で土地と戸建てを売却しました。その他、売却時にかかった経費(譲渡費用)80万円です。
では、実際に売却益(譲渡所得)を計算してみましょう。
譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用
譲渡所得は、上の計算式にあてはめて計算します。
▲180万円=2,700万円-(2,000万円+800万円)-80万円
実は、上記で見落としている部分があります。建物は減価償却費相当額を取得費から差し引く必要があります。
実は、売却益が発生していた!
建物の取得費は、以下で算出します。
建物の取得費=購入価格-減価償却費相当額
減価償却費相当額は以下で計算します。
減価償却費相当額=取得価格×0.9×償却率×経過年数
中村さんが売却した木造戸建ての償却率は0.031、経過年数10年となりますので減価償却費相当額は以下となります。
2,232,000円=800万円×0.9×0.031×10
減価償却費相当額を建物取得費から差し引いた際の譲渡所得は以下となります。
43.2万円=2,700万円-(2,000万円+800万円-223.2万円)-80万円
このように購入価格よりも譲渡価格のほうが低かったとしても、譲渡所得(利益)が発生することになります。
- 「購入価格>譲渡価格」であるものの差額が少ない方
- 「購入価格=譲渡価格」がほぼイコールの方
税務署に問い合わせして計算してもらう
年明けから3月15日まで確定申告が終わるまでの繁忙期を避けた方がいいですが、税務署に問い合わせすれば、親切丁寧に教えてくれます。
また、確定申告が必要なケースと不要なケースも教えてくれます。
ぜひ、活用いただきたいです。
もう少し詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
買った時期が相当古い場合は要注意
また、買った時期が相当古い場合も表注意です。
特に購入当時の売買契約書や取得に要した領収書を紛失している場合は、概算取得費の5%で計算します。
取得費=譲渡価格×5%
先ほどの中村さんの例にあてはめて譲渡所得を計算しますと・・・
2,485万円=2,700万円-135万円-80万円
大幅な売却益(譲渡所得)が発生することになります。
マイホームの売却なら3,000万円特別控除を使おう
マイホームの売却なら、所有期間は居住期間に関係なく、売却益(譲渡所得)から3,000万円を引いてあげようという3,000万円特別控除の特例が使えます。
この3,000円特別控除は、売却した不動産がマイホームであれば、売却後に新たな住まいを購入しようが、賃貸住まいになろうが、売却後に制約を受けることがなく適用を受けることができます。
課税譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用-3,000万円特別控除
取得費5%で計算した中村さんの例に当てはめてみますと、
0円=2,700万円-135万円-80万円-2,425万円
なんと、3,000万円特別控除が適用されると税金が0円になりました。
なお、適用を受けるためには、確定申告が必須です。
もっと詳しく見たい方は、以下のページをご確認ください。
不動産売却後に確定申告しないとどうなるの?
会社員の方ふだん確定申告に無縁の方は、会社が代わりに納税してくれるため、あまり意識したことがないと思いますので、売却益(譲渡所得)が出ているにも関わらず、確定申告せず放置しているとどうなるか?について解説しておきます。
重加算税
例えば、所得隠しの場合、ペナルティーの意味で35%または40%と高率の「重加算税」がかかります。
さらに損害遅延金にあたる「延滞税」が原則として年7.3%または14.6%。さらに本来の税金を納める必要があります。
過少申告加算税
申告漏れで修正申告したり税務署から正しい納税額を通知される「更正」の処分を受けた場合も、原則10%の「過少申告加算税」がかかります。
無申告加算税
もし、期限内に申告をしないで、納税額を通知される「決定」の処分を受ければ、原則15%または20%の「無申告加算税」がかかります。
自分の身は自分で守るしかない
不動産売却における売却益(譲渡所得)が発生した場合は、申告分離課税と言って、確定申告しなければなりません。
税務署が会社に代わって税金を計算して代わりに納めてくれません。
自分で税金を計算して自分で納める必要があります。
「確定申告してください!」といったアナウンスは一切ないんですね。
そうなんじゃよ。申告が必要か?どうかは自分で判断するしかいないんじゃよ。
不動産売却後の確定申告における提出書類
確定申告を行わないリスクを十分ご理解いただけたと思います。以下は、確定申告の期限である3月15日までに提出する書類は以下となります。
提出する書類一覧
- 確定申告書B様式
- 分離課税用の確定申告書(第三表)
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書(購入時と売却時の双方)
- 住民票の除票等
- 領収書(仲介手数料や登記用等)
確定申告書B様式、分離課税用の確定申告書(第三表)、譲渡所得の内訳書については、税務署で取得できます。
売買契約書(購入時と売却時の双方)、住民票の除票等、領収書(仲介手数料や登記用等)については、ご自身で用意することになります。
実は、確定申告は簡単です!
確定申告に無縁の方は、確定申告は税理士に依頼するものと思われている方も多いと思います。
しかし、確定申告は以外と簡単に行えます。実際、一度、手続きを行えば「案外楽勝だった!」という声もあります。
ネットが無い頃と違い、国税庁が用意している確定申告書作成コーナーを使えば、税金なども自動で計算してくれます。
また確定申告書もPDFファイルで出力され、プリントアウトして税務署に持参すればOKです。
これから、「ふるさと納税」を利用すれば、会社員でも確定申告するのが当たり前の時代になります。
譲渡所得が発生したのも、ちょうどいい機会と言えますので、ぜひご自身で確定申告にチャレンジされてみてはいかがでしょうか?
実際に確定申告書作成コーナーを使って、確定申告書を作っているページをご紹介します。
詳しくは、以下のページをご確認ください。
不動産売却時の確定申告書の作成方法と必要書類居住用財産(マイホーム)を売却して譲渡益が出た場合、確定申告を行いますが、国税庁の確定申告書等作コーナーを使えば、画面指示通りに操作を行うことで、・・・・
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税理士監修者コメント
税金が生じたときは確定申告することはもちろんですが、税金が生じなくても確定申告することで特例が使えることをおさえましょう。
税理士:本村健一郎の詳細
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