ほとんどの方にとって不動産売却は、一生に何度も経験することではないと思います。出来れば高値で売却したい。誰もがそう思います。
不動産を売却して売却益が出ると税金が発生します。
そんな時、多くの方は、以下の疑問を持たれるはずです。
- 不動産売却益ってどうやって計算するの?
- 不動産売却益って節税できるの?
- 不動産売却益って居住用と非居住用の場合、税額が変わるの?
- 不動産売却益って確定申告が必要なの?
そこで、このページでは、不動産売却益にかかる税金計算や売却益にまつわるよくある質問をまとめました。
不動産売却益が出て税金が発生しそうな方は必見です。
税金って何やらややこしそうなので苦手です・・・
大丈夫じゃよ!基本は足し算、引き算、掛け算での計算が基本じゃから気軽に取り組んでもらえればOKじゃぞ!
不動産売却益とは?
不動産売却益とは、不動産を売却した時に発生する「利益」のことを指します。税金の計算は、「利益」に対して「税率」を乗じることで計算します。
税の世界では、「利益」のことを「課税譲渡所得金額」と言いまして、「課税譲渡所得金額」の計算方法は以下となります。
か・か・課税譲渡所得ですか??難しそうな単語ですね!
確かに難しそうな単語じゃが、利益つまり儲けのことを指すのじゃよ!
課税譲渡所得金額=譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除
もっとわかりやすく言い換えますと、
利益=売却金額-購入金額-売却費用-特別控除
ご覧いただいた通り、課税譲渡所得金額の計算は、取得費、譲渡費用、特別控除を差し引いた「利益」に対して税金(所得税と住民税)が発生します。
不動産売却における税金は、「利益」に対してのみ課税されます。
手元にいくら現金が残ったか?は一切関係ありません。「損」が出た場合は納税の必要はありません。
なるほど!利益にたいして税金が課税されるわけですね!!
そういうことじゃ!不動産売却も商売と同じで損失の場合は課税されないのじゃよ!
売却益の計算
では実際に売却益を計算したいと思います。
売却益=譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除
何度も申し上げますが、税金は「売却益」が出た場合のみ発生します。
譲渡価額と取得費とは?
譲渡価額とは、売却代金となり、取得費とは購入代金と諸費用のことを指します。
譲渡価額=土地+建物の売却代金
取得費=土地+建物の購入代金、購入時の諸費用
※主な諸費用⇒仲介手数料、印紙代、登記費用(登録免許税、司法書士報酬)、不動産取得税、住宅ローン関連費用(保証料、事務手数料)、物件購入時の固定資産税精算金、建物解体費用、整地費用などです。
主な取得費は、上記となりますが、他にも取得費としてみなされるものもあります。以下が国税庁HP引用です。
取得費には、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれます。なお、建物の取得費は、購入代金又は建築代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。
引用先:国税庁HP
建物取得費の計算方法
建物取得費は、減価償却費を差し引いて計算します。
建物取得費=建築費(購入代金)-減価償却費
減価償却費の計算例は以下となります。
減価償却費=建築費(購入代金)×0.9×償却率×経過年数
ちなみに、土地と建物内訳がわからない場合は、標準的な額で按分することもできます。確定申告の際に「標準的建物価額」から計算できます。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば簡単です。
取得費がわからない場合
購入した土地やマンションが昔すぎて「取得費」がわからない場合、譲渡価額の5%を概算取得費とみなすことができます。
100万円=2,000万円×5%
※取得費は100万円となります。
譲渡費用と特別控除とは?
譲渡費用とは不動産売却の際にかかった諸費用です。
譲渡費用=売却時の諸費用
※主な諸費用⇒仲介手数料、印紙代、賃借人の立ち退き料、登記費用(登録免許税、司法書士報酬)、借地権売却の名義書換料などです。
主な譲渡費用は、上記となりますが、他にも譲渡費用としてみなされるものもあります。以下が国税庁HP引用です。
・土地や建物を売るために支払った仲介手数料
・印紙税で売主が負担したもの
・貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
・土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
・既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で売るために支払った違約金
これは、土地などを売る契約をした後、その土地などをより高い価額で他に売却するために既契約者との契約解除に伴い支出した違約金のことです。・借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など
引用先:国税庁HP
最後に特別控除額について解説します。要件に当てはまれば、売却益から金額を控除することができます。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を利用しよう
最も有名な特別控除として、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を利用しましょう。
この特例を利用することで、3,000万円以上の売却益が出なければ税金が発生しません。
特例を受けるためには、要件があるため国税庁のサイトを一度確認してみてください。
また当サイトでも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
所有期間に応じて税率を乗じて税金を計算
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を使えば、ほとんどの方は譲渡所得税と住民税が発生しないと思います。
不動産売却の税金は「税金=利益×税率」で計算すると解説しました。まず、利益(課税譲渡所得)を計算して、あとは税率をかけるだけで完了します。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | |
---|---|---|---|
5年以下 | 30.63% | 9% | |
5年超 | 15.315% | 5% | |
10年超(居住用不動産のみ) | 課税譲渡所得6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% |
課税譲渡所得6,000万円超の部分 | 15.315% | 5% |
居住用物件の計算方法
実際に居住用物件の課税譲渡所得金額の具体的な計算例を解説します。
ます。
費用 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
譲渡価額 | 3,500万円 | 売却金額 |
取得費 | 3,000万円 | 減価償却後 |
譲渡費用 | 140万円 | 3,500万円×4% |
特別控除 | 3,000万円 | 居住用財産の3,000万円特別控除 |
課税譲渡所得金額 | 0円 | – |
税率 | 20.315%(所得税等15.315%、住民税5%) | 所有期間5年超 |
この場合、課税譲渡所得がプラスでも3,000万円の特別控除が利用したため税金は発生しません。
ただし、3,000万円の特別控除を利用するなら、確定申告が必要です。
非居住用物件の計算方法
費用 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
譲渡価額 | 3,500万円 | 売却金額 |
取得費 | 3,000万円 | 減価償却後 |
譲渡費用 | 140万円 | 3,500万円×4% |
特別控除 | 0円 | 適用なし |
課税譲渡所得金額 | 360万円 | |
税率 | 39.63%(所得税30.63% 住民税 9%) | 所有期間5年以下 |
この場合、課税譲渡所得が360万円となるため、所得税と住民税が発生します。
非居住用の場合、居住用と比べて税率も高く、利用できる特別控除も少なくなります。
概算取得費5%の計算方法
次に取得費がわからず概算取得費5%で課税譲渡所得を計算します。
費用 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
譲渡価額 | 5,000万円 | 売却金額 |
取得費 | 250万円 | 5,000万円×5% |
譲渡費用 | 200万円 | 5,000万円×4% |
特別控除 | 3,000万円 | 居住用財産の3,000万円特別控除 |
課税譲渡所得金額 | 1,550万円 | |
税率 | 20.315%(所得税等15.315%、住民税5%) | 所有期間5年超 |
取得費が不明なら、譲渡所得金額が大きく変わってきます。
取得費が不明でも、居住用なら3,000万円特別控除が使えます。
税金を発生させないためにも、取得費用は明確にしておくことが重要です。
購入時の売買契約書や各種領収書は、大切に保管しておきたいものですね。
概算取得費だと利益が出る方が続出しそうですね!?
その通りなんじゃよ!だから3,000万円特別控除を使って利益を圧縮することが重要じゃな。
売却益が出ると確定申告が必要
売却益つまり課税譲渡所得がプラスであれば確定申告をする必要があります。
売却損つまり課税譲渡所得がマイナスであれば確定申告をする必要がありません。
不動産売却益が発生した際の疑問点
それでは、不動産売却益が発生した際の疑問点をまとめました。ご参考いただけましたら幸いです。
確定申告の翌年は住民税や社会保険料がアップしますか?
この方は給与所得者の会社員です。相続した田舎の土地を売却しました。取得価格は不明で譲渡所得が500万円ほどあるとのことです。
不動産売却益は、給与などの所得とは別で税額を計算します。ご相談者様は、先祖伝来の土地で取得価額が不明な例だと思います。
不動産の譲渡所得は、年末調整では扱えないため確定申告が必要となります。
確定申告は、給与所得で一緒に計算しますが、税額が別ですので、給与所得に対する翌年の住民税や社会保険料がアップすることはありません。
総合課税と分離課税の申告は合算できますか?
確定申告の際に所得の合計をもとに税額を計算して税額を納める場合、「総合課税」が原則ですが、不動産売却益は他の所得と合計せずに分離して税額を計算する「分離課税」となります。
この「分離課税」には、「申告分離課税」と「源泉分離課税」の2種類があります。
「申告分離課税」は文字通り、確定申告によって納税者本人が税金を納めます。不動産売却益は、「申告分離課税」となります。
「源泉分離課税」は、所得を支払う方が、所得税を源泉徴収して、納税が完結することになります。
ご質問の申告は合算できますかですが、不動産売却益は、「分離課税」となるため他の所得とは別で税額を計算しますが、確定申告の際は、合算して申告します。
確定申告は税理士に頼んだほういいのでしょうか?
「確定申告書を作るのが面倒くさい。」「確定申告書を作る時間がない。」方などは、税理士に依頼してもいいと思います。
個人的には、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、画面の指示通りに入力すれば、比較的簡単に作れます。
「よく間違うと大変厄介になります。」と仰る方がいらっしゃいますが、売却価格の桁を間違えたなどの重大なミスを犯さない限り、自分でできます。
- 取得時と譲渡時の売買契約書
- 取得時と譲渡時の領収書
これらを手元に用意して確定申告書等作成コーナーを使ってみてください。
相続物件の売却での注意点はありますか?
相続によって空き家になった物件を売却した際、3,000万円の特別控除を利用することができます。
平成26年1月2日以降に相続した物件が対象となります。相続日から起算して3年を経過する日が属する12月31日までとなり、かつ平成28年4月1日から平成31年12月31日までの譲渡が条件となります。
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