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空き家だった築60年の木造二階建て住宅を再生して誰もが気軽に立ち寄れる居場所「こまじいのうち」に

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空き家だった築60年の木造二階建て住宅を再生して誰もが気軽に立ち寄れる居場所「こまじいのうち」にのイメージ

本駒込の住宅街の中にある多世代交流の居場所

東京都文京区本駒込の住宅街の中にある「こまじいのうち」は、赤ちゃんから高齢者まで多世代がゆるくつながり気軽に憩える居場所として2013年10月にオープンしました。

2017年12月放送の文京区制作の取材番組によると年間5500人もの利用者が訪れるそう。 具体的には育児中の若い母親が立ち上げた親子サロン「ばびぶ☆ベビー」や栄養士会による「こまじいキッチン」、東洋大学落語研究会の学生による「学生落語」、他にも「脳トレ健康麻雀」や「ビーズ教室」など様々なプログラムが開催されています。

プログラムのスケジュールはGoogleカレンダーで公開されています。

▲「こまじいのうち」のオープン日時は火〜金10:00〜15:00。筆者が立ち寄った日はお休みでした

空き家所有者である秋元さんの提案からスタートした地域の居場所づくり

「こまじいのうち」のFacebookを見てみると、メディア取材や社会福祉協議会などからの視察、大学の学外活動などを相次いで受け入れていることがわかります。

現在は全国に数ある「居場所づくり」の先行事例の一つとして注目されるようになりました。元々は築60年の木造二階建て空き家でした。

所有者は「こまじいのうち」のマスターである秋元さん。以前は秋元さんの親族が住んでいました。その後秋元さんが相続しますが秋元さんには別に住宅があるため数年間空き家に。

秋元さん所有の空き家を再生した「こまじいのうち」がスタートしたきっかけは、2013年3月に開かれた駒込地区町会連合会・定例会で「居場所づくり」の話題が出たことです。

これを聞いた秋元さんはご自身が所有する空き家の提供を提案します。約8ヶ月間の準備期間を経てオープンした当初は閑散とした状態が続きました。

そこで、「カフェこま」の営業日を増やしたり、2014年1月には実行委員会やボランティアスタッフが商品を持ち寄ってバザーを実施するなどしました。

その結果、地域住民の認知度が上がり利用者を増やしていきました。

(出典:「こまじいのうち」マスター 秋元康雄さん【文京区公式チャンネル2017/12/26公開】

駒込地域活動センターや文京区社会福祉協議会などのサポート

「こまじいのうち」は多くのサポートで成り立っています。

例えば、駒込地域活動センターは町会間の連携を図ったり、各町会からの運営経費協賛金のとりまとめ、開設・運営資金を捻出するために東京都地域の底力発展事業助成金の申請手続きを行いました。

文京区社会福祉協議会では運営ボランティアの募集やプログラムの企画、特に地域の人を巻き込む上で地域福祉コーディネーターが重要な役割を果たしました。

近くに東洋大学白山キャンパスがあり、社会福祉学科の先生とも縁ができ、学生がボランティアに関わってくれることにもなりました。

さらに、お客さんやボランティアなどから中心スタッフになる方もいて、多くの人が関わっているのが「こまじいのうち」の特徴と言えます。

(出典:「こまじいのうち」マスター 秋元康雄さん【文京区公式チャンネル2017/12/26公開】

「こまじいのうち」の隣家の空き家が地域子育て支援拠点「こまぴよのおうち」に

「こまじいのうち」の隣家も空き家でしたが、主に3歳未満の子どもを持つ親子を対象にした情報共有や交流の場所である「こまぴよのおうち」として再生され2017年5月にオープンしました

保育士が常駐し子育て相談も可能です。 なお、開設及び運営に必要な経費の一部は文京区から助成を受けています。子育てに役立つ講座も開催されています。

▲「こまぴよのおうち」のオープン日時は月〜金10:00〜15:00

空き家所有者の意思、地域を知る行政機関のサポート、多世代交流のデザイン

まず、「こまじいのうち」は空き家所有者である秋元さんが提供を提案されないことには始まらなかった点で、地域の居場所づくりに役立てたいという秋元さんの意思の存在は非常に重要です。

古くから住んでいる住民が高齢となり、町内の昔なじみの人が亡くなって話し相手がいなくなったことから引きこもりがちになっていたり、新しいマンションに入居してきた若い世代と古くから住む人たちとの交流の機会がなかったり、ある種の断絶が各地域社会で起こっています。

この断絶を解消する一つの手段として、誰もが気軽に立ち寄れる居場所づくりには大きな社会的意義があります。

次に、駒込地域活動センターや文京区社会福祉協議会など地域をよく知る行政機関のサポートが手厚かったことです。

助成金手続きを代行したり、運営ボランティアの募集やプログラムの企画を行ったりと、中核的な役割まで行政機関がサポートしていたことには驚きました。

ただ一方で、東京都や文京区などからの助成金や委託事業が目立つことから持続可能性の面で不安を感じるのが正直なところです。

参加費用は無料ではなく100円以上を支払ってもらうことになっていますが、広いスペースがありますので場所貸しや民泊として活用するなど、収益事業にチャレンジする余地はあるのではないかと思いました。

最後に、多世代交流のデザインです。別世代向けのプログラムが同じ時間に隣り合ったスペースで開催されることで、多世代が同じタイミングに同じ空間で過ごすことになり、自然に参加者同士が混ざり合って交流や助け合いが生まれるようになるなど、多世代が無理なく交流できるような仕掛けがデザインされています。

▲手前が「こまじいのうち」、奥が「こまぴよのおうち」

【著者】空き家グッド
「空き家の活用で社会的課題を解決するブログ」を運営。東京都吉祥寺周辺であまり使われていなさそうな住宅の所有者へ、子どもや若者、子育て世帯など未来の世代のための住宅活用を提案中。
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