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空き家になった1957年築の違法建築群を再生して住居兼オフィス・コワーキングスペース・カフェなどで構成された複合施設「ミナガワビレッジ」に

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空き家になった1957年築の違法建築群を再生して住居兼オフィス・コワーキングスペース・カフェなどで構成された複合施設「ミナガワビレッジ」にのイメージ

表参道にある木造の違法建築群を再生

東京都渋谷区表参道にある「ミナガワビレッジ」は東京メトロ「表参道駅」より徒歩5分の場所にある4つの住居兼オフィス・コワーキングスペース・ギャラリースペース・カフェ・キッチン・お庭などから成る複合施設です。

▲この日は「ミナガワビレッジなつまつり」という入場無料のイベントが開催されていました

元々は1957年に木造2階建ての個人住宅「皆川邸」として新築されその後、検査済証未取得のまま4回以上増改築を繰り返し1969年からは共同住宅「ミナガワビレッジ」として使われてきました。

2016年頃から相続や老朽化に伴い、再生が模索されるようになります。渋谷区にも違法建築と言われるなどして建て替えも検討されましたが、伯父にあたる皆川さんからこの土地を受け継いだ事業主の希望はこの地の歴史を尊重し建物を再生することでした。

設計管理を担当したのは株式会社再生建築研究所です。「建築の不可能を可能に」というビジョンの下、建物の調査から企画・設計・運営までをトータルプランニングしています。

一つの敷地に4棟の建物があるなど建築基準法の「一建物一敷地の原則」に違反していましたが、渋谷区と協議を重ね既存不適格証明を行うなどして適法建築物として認められ2018年5月、60年ぶりに検査済証が発行され新たな用途として生まれ変わりました

▲1階の共有スペースから2階のオフィスを望む

古い建物ほど検査済証が交付されていない傾向

建築物及びその敷地が建築基準関連規定に適合していることを証明する文書である検査済証は、既存建築物を増改築や用途変更する、中古住宅を再活用する上で非常に重要になってきます。

国土交通省が2014年7月に公開した「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」によると、1998年度時点の完了検査率(検査済証交付件数/建築確認件数)は38%となっており、古い建物ほど検査済証が交付されていない傾向があります。

かつては5%〜20%程度だったともいわれています。

▲以前に比べれば完了検査率は格段に高くなっていますが、2012(H24)年度時点でも約1割の建築物が完了検査を受けていません

再生建築のノウハウやテクニックの需要は今後増す

建築に関する法令は頻繁に改正されており、建てた時に適法だったけれど後年、法令に合わなくなり既存不適格という状態になることがよくあります。

ですが建てた時に適法で当たったことが証明できればその建物は違法ではなくなり、現行の法令に適合させることができれば増改築や用途変更も可能になります。

そういった細々とした地道な調整作業に取り組む事業者の存在は貴重です。これから人口減少する中で既存建築物や中古住宅の再生、再活用が見直されるようになっていくときに、そのノウハウやテクニックの需要は増していきます

▲2年に渡る時間と手間がかかった再生のプロセスがわかる写真や図面や文章などが展示されていました

路面にあるカフェとドーナツ店が街とのタッチングポイントに

空き家を「住む」以外の用途として再活用することで街との連続性が生まれ、新しい発見や交流、経済活動が創出されることが期待されます。

ミナガワビレッジでも「住む」以外の多様な用途として再活用されることで、新しい価値が生まれる街とのタッチングポイントがそこかしこにあります。

特に路面にある「HIGUMA Doughnuts(ヒグマドーナッツ)」と「Coffee Wrights(コーヒーライツ)」の共同店舗「HIGUMA Doughnuts × Coffee Wrights」では揚げたてのドーナツと挽きたてのコーヒーが楽しめ、多くの人々を引き付けています。

▲9月の週末。主に20〜40代位の人たちで賑わっていました

時間とともに建物の使われ方は変わる、建築の適法性を確保するための地道な仕事を行う事業者、グラウンドレベルの使われ方のデザイン

当初は個人邸として建てられましたがその時々の状況に応じて下宿だったりアパートだったり、そして現在の複合施設「ミナガワビレッジ」へと建物や敷地の使われ方は変化してきました。

持続可能な建築・不動産市場を実現するために建物は一度建ててしまったらそれで完成ではなく、使う人やその人の状況に応じて柔軟に変化していくことが今後ますます必要になっていきます。

建築・不動産も「永遠のベータ版」とでもいうように定期的なメンテナンスに加え使い方もその時々に合わせてアップデートさせていくことが重要です。

そこで必須となってくるのが今回ご紹介したような検査済証のない建物を再生させるために必要な建築の幅広い知識を持ち、現行法令に適合させるための調整作業や行政などとの交渉やコミュニケーションを地道に取り組む事業者の存在です。

再生建築研究所のような「0を1にする」事業者の存在感は今後ますます高まっていきます。

最後にグラウンドレベル、つまり1階部分の使われ方のデザインの重要性も指摘しておきます。

「1階づくりはまちづくり」というミッションを掲げているのは株式会社グラウンドレベルですが、誰もが通り、目にする1階部分をオープンで賑やかな開かれた場所としてデザインすることは、本来的には完全な私有財産にはそぐわない不動産の使い方としてとても理にかなっています。

ミナガワビレッジにおける1階の路面店の使い方のデザインはまさにそれで、「1階づくりはまちづくり」を体現しています。

▲当日展示されていたミナガワビレッジの建築模型

【著者】空き家グッド
「空き家の活用で社会的課題を解決するブログ」を運営。空き家の再活用事例、空き家に関する法制度の動向などについて情報収集・発信しています。東京都内で空き家の所有者へ再活用に向けた働きかけを実行中。
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