- 自宅にローンが残っている。自己破産前に自分で売却しても良いの?
- 破産したらどっちにしても不動産はなくなるなら、先に自分で売却する意味はない?
不動産を所有しているときに自己破産を検討するなら、いずれかのタイミングで必ず不動産を処分しなければなりません。
自己破産前に自分で処分するのが良いのか、はたまた自己破産申立後に手続き内で処分するのが良いのか、どちらが得策なのでしょうか?
今回は、不動産売却を自己破産前にすべきか申立後にするのが良いのかという問題について、残ローンのあるなしやオーバーローンかどうかなど、状況別に解説していきます。
【執筆・監修】元弁護士 ライター
福谷陽子
法律及び不動産の分野を得意とする。
現役時代は不動産売買や賃貸、遺産相続関係や破産管財事件などを中心に不動産事件を数多く取り扱う。今はその経験を活かして各種の不動産メディアや法律事務所のサイトにて精力的に不動産記事を執筆中。
一生のうち、そう何度もあるわけではない大きな買い物である不動産取引。そこで損をする人が一人でも減るように、読む人が相続でトラブルにならないように、不動産詐欺に遭わないようにと願いながら、わかりやすい不動産記事を届けることを信条としている。
破産で不動産売却するタイミング・ローンなし、アンダーローンの場合
所有している不動産にローンが残っていない場合やアンダーローンの場合には、以下のように対応しましょう。
ローンなし、アンダーローンの状態とは
ローンがない状態とは、始めからローンを組まずに全額キャッシュで不動産を購入したケースか、ローンを組んだけれども全額完済した場合です。
アンダーローンとは、住宅ローンなどの不動産ローンが残っているけれど、家の評価額の方が高いので家を売ったらローンを完済できる状態です。
自己破産前に売却するとどのような問題があるか
不動産にローンがない場合やアンダーローンの場合、自己破産前に自分で売却すると問題が発生するリスクが高くなります。
自己破産では、大きな財産はすべて債権者への配当資金にする必要があります。
それにもかかわらず自己破産直前に不動産を売却して現金に換えると、財産隠しを疑われてしまう可能性があります。
特に相場より低く売却した場合などには「名義変更による財産隠しではないか」と怪しまれてしまうでしょう。
また売却したお金でローン債権者以外の特定の債権者へ支払いをしてしまうと「偏頗弁済(へんぱべんさい)」になります。
自己破産では「すべての債権者を平等に扱わねばならない」決まりがあるので、一部の債権者のみへの支払いが認められないのです。
このようなリスクがあるので、破産直前に自己判断で不動産を売却するのは危険です。
自己破産前に不動産を売却するとどうなるか
自己破産前に不動産を売却すると、以下のような状況になりやすいです。
破産管財人から厳しく追及される
不動産売却の経緯が不透明な場合、「財産隠しではないか」と疑われて破産管財人から厳しく追及される可能性があります。
「売却金は自分で使った」などと説明しても、数百万円以上の売却金を使い込んでいたら、「何に使ったのか」ということになって納得してもらえません。
また売却金で一部の債権者に返済していたら「偏頗弁済」としても責任を問われます。
偏頗弁済や財産隠しとみなされると免責不許可事由になり、免責してもらえない
もしも不動産売却を財産隠しとみなされたり、一部の債権者への支払いが偏頗弁済となったりしたら、自己破産をしても「免責」してもらえない可能性が発生します。
免責とは、自己破産によって借金をゼロにしてもらうことです。財産隠しや偏頗弁済で免責を認めてもらえなかったら、せっかく自己破産をしても借金を免除してもらえないので意味が無くなってしまいます。
管財人が不動産を取り戻す
本人による事前の不動産売却が、債権者の利益を害するとみなされると、破産管財人が売却相手から不動産を取り戻すこともあります。
そうすると、売却先にも迷惑をかけてしまいます。
自己破産後の不動産処分方法
不動産を売っても借金を完済できず破産が必要な状況なら、破産前に焦って売却するのではなく基本的には破産後に破産管財人に売却を任せるのが良いでしょう。
破産手続き開始決定とともに不動産関係の資料を管財人に預けて売却を勧めてもらいます。
売却金は、まずはローン返済に充てられて残りは債権者に配当され、無事に破産手続きが終了すれば免責で借金を免除してもらえます。
売却によって借金を完済出来るなら早期に売却する
以上に対し、不動産売却によって借金を全額返せる場合や、ほとんど返せて破産する必要がなくなる場合もあります。
このような場合、偏頗弁済や財産隠しを気にする必要がないので、早めに売却して借金問題を解決しましょう。
破産で不動産売却するタイミング・オーバーローンの場合
次に、不動産がオーバーローンの場合の対処方法をみてみましょう。
オーバーローンとは
オーバーローンとは、残ローンの金額が不動産の評価額を上回る状態です。つまり不動産を売ってもローンを完済できない場合に「オーバーローン」となります。
オーバーローンなら任意売却が必要
オーバーローンの場合、不動産の所有者であっても独断で売却できず「任意売却」という手続きが必要です。
任意売却とは、ローン債権者の了承をとって不動産を通常の市場で売却することです。売却金は全額ローン返済に充てます。
オーバーローン物件で債務者がローンを支払えなくなったら、原則的にローン債権者は競売を申し立てて家を強制的に売却します。
ただ競売になると市場価格の8割や7割程度でしか売れないケースも多数です。
それよりも任意売却の方が高く売れる可能性が高いので、債権者にとっても任意売却の方にメリットを感じられます。
そこで債務者が金融機関に任意売却の相談をすると、売却予定金額が妥当である限り、金融機関も売却に納得するのです。
対処方法や流れは残ローンの金額によって異なる
実は自己破産の手続きには「同時廃止」と「管財事件」の2種類があり、オーバーローン物件の場合、残債の金額によってどちらになるかが異なります。
各地の裁判所の運用状況にもよりますが、一般的に「残ローンが評価額の1.5倍以上かそれより低いか」によって同時廃止と管財事件に振り分けられます。
以下で場合分けして解説していきます。
なおローン残額による破産手続きの振り分け基準は地域によっても異なるケースがあるので、詳細は地域の弁護士に聞いて確認してから行動して下さい。
破産で不動産売却するタイミング・残ローンが評価額の1.5倍以上の場合
「残ローンが家の評価額の1.5倍以上のケース」での破産手続きの流れや対処法をみていきます。
破産すると「同時廃止」となる
残ローンが家の評価額の1.5倍以上となっていたら、家がどんなに高く売れてもローンを完済できる見込みがないので、家は「無価値」とみなされます。
そこで自己破産の手続きは「同時廃止」という方法で進められます。
同時廃止とは、財産がほとんどない方が破産をするときの簡単な自己破産の方法です。
もう1つの複雑な手続きである「管財事件」と比べて手間もかからず費用も安くなっています。免責までの時間も短いので、債務者にかかる負担が軽いです。
不動産は競売にかかって売られる
不動産を所有していても同時廃止になる場合、破産手続きで不動産の存在は無視されます。
ただ、破産手続きに入るとローン支払いをしなくなるので、ローン債権者が抵当権にもとづいて「競売」を申し立てます。競売になると、不動産は強制的に売却されます。
競売が始まると裁判所の執行官が家を見に来ますし、裁判所やネットなどに競売情報が掲載されて、関心を持った不動産会社が家の周辺をうろつき、近所に不審に思われるケースもあります。
また競売で売れた売却金は全額競売費用やローン返済に充てられるので、債務者の手元には一切入ってきません。引っ越し代も出ないので、自力で引っ越しをする必要があります。
任意売却も可能
同時廃止となった場合、競売ではなく家の任意売却も可能です。任意売却すると通常の不動産市場で売れるので近隣に怪しまれる心配はありません。
また売却した金額から30万円程度の引越費用も出してもらえます。
自分で売却手続を進めなければならない手間はかかりますが、プライバシーや引っ越し代などのメリットを考えると、競売より任意売却した方が良いでしょう。
ただし任意売却をするときには、競売の開札日よりも先に売却手続きを行う必要があります。早めに金融機関に連絡を入れて売却手続きを開始しましょう。
自己破産前に任意売却しておいた方が安心
残ローンが家の評価額を大幅に上待っていて同時廃止見込みの場合、破産前か破産後のどちらに任意売却するのが良いのでしょうか?
この場合でも、ローンを払わずに時間が経過するとローン債権者が家を競売にかけるリスクが高まります
競売が始まると「開札日」までに売却できないと競売が優先し、任意売却が不可能となってしまいます。
このことを考えると、できるだけ申立前、競売が始まる前に債権者と話をつけて、任意売却しておくのが良いでしょう。
破産で不動産売却するタイミング・残ローンが評価額の1.5倍を下回る場合
オーバーローン状態で、残ローンの金額が家の評価額の1.5倍を下回る場合、どのような流れや対応になるのかご説明します。
破産すると管財事件となる
残ローンが家の評価額の1.5倍を下回る場合、家を売ると残ローンを完済できる可能性もあると考えられます。
そこで家に「財産的価値」があると考えられて、破産管財人による換価の対象となり、自己破産の手続きは「管財事件」が選択されます。
管財事件は、一定以上の財産がある人が破産する際の複雑な破産の方法です。
管財事件は費用も高く労力もかかる
管財事件は、破産者にとって非常に負担の重い手続きです。
破産者は何度も裁判所に行って「債権者集会」に参加しなければなりませんし、管財人とも面談してさまざまな質問事項に答えなければなりません。
さらに大きな問題となるのが、高額な「管財予納金」です。
管財予納金とは、破産手続きが開始するタイミングで管財人に支払う費用です。最低でも20万円はかかります。
同時廃止では管財予納金は不要ですが、管財事件になると、破産開始決定とともに裁判所から指定された金額の予納金を払わねばならないので金銭的な負担が大きくなります。
さらに管財事件は、免責までの時間も非常に時間もかかります。
以上のようなことから、破産者にとっては、できる限り管財事件より同時廃止で解決できた方が有利です。
自己破産前に任意売却しておくと同時廃止にできる
実は残ローンが家の評価額の1.5倍を下回る場合でも、自己破産を同時廃止で進めることができます。
不動産を自己破産前に任意売却しておくのです。
破産前に任意売却をして不動産がなくなって金銭的なローンの負債に変わっていれば「財産がない人」として同時廃止で破産を進めてもらえるのです。
また、事前の任意売却で家が予想以上に高く売れれば、破産せずに任意整理などで解決できる可能性も出てきます。
オーバーローン物件を抱えているのであれば、なるべく自己破産前に金融機関と交渉し、不動産の売却を終えてから自己破産を申し立てましょう。
まとめ
自己破産をするときに不動産を売却するタイミングについてまとめると、以下の通りです。
住宅ローンの状況 | 対応方法 |
---|---|
ローンがない場合、アンダーローンの場合 | 破産後、管財人に家の売却を任せるのが安心 ただし家を売って借金を完済できるなら破産前に売却するのが良い |
オーバーローンの場合(残ローンが家の評価額の1.5倍以上) | 破産手続きは同時廃止になるが、なるべく早めに(破産前に)家を売っておいた方が安心 |
オーバーローンの場合(残ローンが家の評価額の1.5倍を下回る) | 家を持ったまま破産すると管財事件となるので、できる限り破産前に任意売却を済ませて同時廃止にするのが良い |
以上が破産するときの不動産売却のタイミングです。もしも今後破産をする予定があるなら、参考にしてみてください。
なお同時廃止と管財事件の振り分け基準は地域によっても異なるケースもあるので、自己判断せずに地域の弁護士に相談してから対応を決めることをお勧めします。
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