不動産売却の損失で使える税金の特例を徹底解説

地価が異常に高騰したバブル期に、多額の住宅ローンを組んで高い金利を払って、マイホームを購入された方も多いと思います。

バブル崩壊後は、ローン返済が大変になり、やむを得ずマイホームを手放した方で【売却損】が発生した方は、ぜひこのページを最後までご覧ください。

税制面での恩恵を受けることができます。

  • マイホームを売却して損失が出たが、新たに住宅ローンを組んで買換えをした。
  • 住宅ローンが残っているマイホームを売却したが、残債が残ってしまった。

この2つのいずれかに該当する方は、給与所得などの他の所得と4年間も損益通算&繰越控除することが認められています。

目次

不動産売却損による損益通算の威力ってこんなにスゴイ!

まずは、売却損が1,000万円、売却の年分以後4年間の給与所得が300万円の場合の損益通算&繰越控除について見ていきましょう。

売却損が1,000万円、売却の年分以後4年間の給与所得が300万円の場合の損益通算&繰越控除

なんと、譲渡による損失の丸々1,000万円分を繰越控除することで、所得が無かったものとみなされ、所得税と住民税が2年目までは課税されません。

こんなにお得な特例は、使わないと損ですので、以下詳しく解説します。まずは、マイホームを買い替えた方用の特例を見ていきます。

ペンギン生徒

バブルなどの地価高騰していた時にローンを組んでマイホームを購入した方は必見ですね。

アザラシ先生

そうなんじゃよ。税制面での恩恵は計り知れないので、ぜひ最後まで見てほしいものじゃな。

不動産売却の損失(マイホームの買い替え)

マイホームの買い替えで使える特例

マイホームを買換えたこの特例の正式名称は、【居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例】と言います。

ペンギン生徒

な、長いですね。何やら舌をかみそうな名称ですね。

アザラシ先生

はっはっはっ!確かにの!でも心配は無用じゃぞ!考え方はとても簡単じゃから、続きを見てほしい。

この特例は、マイホームを売却して赤字が出ただけでは、適用されず、新しくマイホームを買い替えなければなりません。

また、新しく買い替えたマイホームは住宅ローン付きである必要があります。まずは、適用要件を簡単に見ていきたいと思います。

<売却するマイホームの主な要件>

・日本国内にあり売却した本人が居住しているマイホームである。

・売却した年の1月1日おいて所有期間が5年を超えている。

・空き家の場合は、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却している。

<買い替えマイホームの主な要件>

・日本国内にあり買い替えした本人が居住するマイホームである。

・代わりのマイホームを売却年、売却年の前年、売却年の翌年までに取得して、取得年の翌年12月31日までに居住している。

・居住用部分の床面積が50㎡以上ある。

・買い替えたマイホームを取得した年の12月31日において、住宅ローン(償還期間10年以上)の残高がある。

<他の制限等>

・売却先が親子などの特殊関係者を除く。

・特例を受ける年の合計所得が3,000万円を超える場合は、適用できない。

・住宅ローン控除との重複適用が認められる。

・敷地の売却損(譲渡損失)については、面積500㎡を超える部分の損失は除く。

注意①所有期間の計算には要注意

所有期間を計算するにあたって、よく勘違いされることが2つあります。

  • 土地と建物の所有期間が異なる。
  • 所有期間の計算は売却年の1月1日で判断する。

では順番に見ていきましょう。

土地と建物の所有期間が異なる

土地&建物が5年を超えていない

売却した土地と建物がいずれか一方の所有期間が5年以下の場合、この特例を適用することができません。

土地と建物の両方が所有期間5年を超える必要があります。

次に自分では、所有期間が5年と超えていると思っていても、法律の落とし穴に気づかず、「実は5年を超えていなかった・・・」といったよくある失敗例をご紹介します。

所有期間の計算は売却年の1月1日で判断する。

所有期間の計算

【居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例】を利用するためには、売却年の1月1日で判断します。

例えば、平成25年1月30日にマイホームを取得したとします。平成30年2月15日売却したとします。

× 売却(譲渡)した日で見ますと・・・取得から5年15日

〇 売却(譲渡)した年の1月1日で見ますと・・・取得から4年11ヶ月

となります。従って、この特例を使うことができません。所有期間が5年付近など、微妙な方はくれぐれもご注意ください。

5年超えているかを厳密に判断したい方は、以下の動画がとても参考になります。前半は前置きなので4分過ぎあたりから詳しく解説しています。

注意②その他の注意点

その他についても触れておきます。

居住用部分以外の部分がある場合

居住用部分以外の部分がある場合

マイホームの一部に非居住用部分(居住用として使用されていない部分、店舗部分や賃貸部分)がある場合、居住用の部分だけが適用されます。

居住用建物が2つ以上ある場合

居住用建物が2つ以上ある場合

居住用建物が2つ以上ある場合は、売却した本人が主として居住していると認められる建物に限られます。

ペンギン生徒

なるほど、よく理解できました!

アザラシ先生

もし、自分がこの適用を利用できるか不安なら税務署に相談すれば、すぐに解決できるぞ!では実際に計算してみよう。

繰越控除の計算例(ケーススタディ)

繰越控除の計算例(ケーススタディ)

ペン子さんは、平成27年にマイホームを4,000万円で売却しました。このマイホームは平成元年に7,000万円で購入しました。

ペン子さんは、平成27年10月に80㎡の新築マンションを自己資金半分、住宅ローンを半分で購入。現在は、このマンションに住んでいます。

①売却損(譲渡損)は▲3,000万円(4,000万円-7,000万円)として、計算例をわかりやすく解説するため減価償却費や譲渡費用は考慮しません。

売却損(譲渡損)=4,000万円-7,000万円=▲3,000万円

②ペン子さんは、会社員で平成27年の給与収入は1,000万円として、扶養控除等の所得控除額は250万円とします。

課税所得=(1,000万円-220万円※)-250万円=530万円

※給与収入1,000万円のみなし経費額(給与所得控除額)です。

③計算例をわかりやすく解説するため、平成28年以降の給与収入と所得控除額も平成27年と同じとしています。また、住民税の所得控除額も所得税の所得控除額と同じとして計算するものとします。

所得税=530万円×20%-42万7,500円=63万2,500円

復興所得税=632,500円×2.1%=1万3,282円

所得税+復興所得税=63万2,500円+1万3,282円=64万5,700円

住民税=530万円×10%=53万円

税金合計=64万5,700円+53万円=117万5,700円

繰越控除と損益通算

では、実際にペン子さんの繰越控除と損益通算しましょう。

繰越控除と損益通算
1年目(売却年度)▲2,220万円=780万円+▲3,000万円
2年目▲1,440万円=780万円+▲2,220万円
3年目▲660万円=780万円+▲1,440万円
4年目120万円=780万円+▲660万円
120万円<250万円(所得控除額)、課税所得は0円

ペン子さんは、本来であれば、所得税と住民税を毎年117万5,700円納めるわけですが、売却損(譲渡損失)を毎年給与と損益通算することで、3年目まで売却損(譲渡損失)の繰越赤字が給与所得を上回ります。

さらに4年目になると給与所得が売却損(譲渡損失)の繰越赤字を上回りますが、所得控除を差し引くことで課税所得が0円になります、。

従って、4年目も所得税・住民税が0円となります。

つまり、約470万円分(117万5,700円×4年分)も税金が安くなります。

マイホームの売却損が発生して、しかも住宅ローン(返済期間10年以上)を組んでマイホームを新たに買い替えた方は、ぜひこの特例を使っていただきたいです。

不動産売却の損失(売却のみ)

不動産売却の損失(売却のみ)

マイホームの売却損売却損(譲渡損失)が発生した場合の損益通算と繰越控除は、売却のみでも利用することができます。

ちなみに、この特例の正式名称は、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と言います。

ペンギン生徒

買い替えと同じで、何やら舌がかみそうな名称ですね。

アザラシ先生

この特例は、買換えの時よりもいたってシンプルなんじゃ。売りっぱなしでも使える特例なのが特徴じゃよ。では早速見ていこう。

この特例は、マイホームの売却損(譲渡損失)が発生した場合、売却した建物の住宅ローンが残っている場合に、買い替えしなくてとも、売却した年は損益通算及びその翌年から3年間繰越控除が認められます。

では、買い替えの時と同様に適用要件から見ていきましょう。

<売却するマイホームの主な要件>

・日本国内にあり売却した本人が居住しているマイホームである。

・売却した年の1月1日おいて所有期間が5年を超えている。

・空き家の場合は、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却している。

・売買契約締結日の前日において、住宅ローン(償還期間10年以上)の残高がある。

・住宅ローンの残高が売却金額を上回っている。

<他の制限等>

・売却先が親子などの特殊関係者を除く。

・特例を受ける年の合計所得が3,000万円を超える場合は、適用できない。

適用要件は、買い替えの時と似ているのですが、この特例の肝の部分は、「住宅ローン残高が売却金額を上回っている」必要があります。

先に解説した買い替えは、赤字が全て損益通算の対象でしたが、売却代金で返済しきれなかった分のローンが損益通算の対象となります。

適用イメージを図解で解説します。

売却損(譲渡損失)と売却代金の合計がローン残高を上回る場合

ローン残高が売却代金を上回っている場合は、取得費を限度として上回っている金額を他の所得から控除します。

売却損(譲渡損失)と売却代金の合計がローン残高を上回る場合

売却損(譲渡損失)と売却代金の合計がローン残高を下回る場合

売却損(譲渡損失)と売却代金の合計がローン残高を下回る場合

上記いずれのパターンでも売却しても住宅ローンが残ってしまう必要があります。

繰越控除の計算例(ケーススタディ)

マイホームの売却代金3,000万円
売却したマイホームの購入代金と譲渡費用の合計額6,000万円

売却損(譲渡損)=3,000万円-6,000万円=▲3,000万円

住宅ローン残高5,000万円
売却代金3,000万円
売却しても払いきれないローンの額2,000万円

損益通算&繰越控除対象額=2,000万円<▲3,000万円=2,000万円

上記から損益通算&繰越控除対象額は、2,000万円となります。

税理士監修者コメント

本村健一郎

本村健一郎

不動産の売却、特にマイホームを売ったときには損失が出ることが珍しくありません。損益通算や繰越控除といった特例を使えるかどうか確認しておきましょう。

税理士:本村健一郎の詳細

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