非居住者の外国人をはじめ、国外に出国した人が、日本国内の不動産を売却した際の税金について、疑問をお持ちの方も多いと思います。
・非居住者が納税する税金の種類を知りたい。
・非居住者が不動産を売却したら源泉徴収しなきゃいけないって本当なの?
・非居住者でも3,000万円特別控除や軽減税率って使えるの?
こんな疑問をお持ちではありませんか?
そこで、このページでは、非居住者の外国人や海外居住者が、日本国内で不動産を売却した際の税金にフォーカスして解説します。
すでに出国した方はもちろん、これから長期の海外出張をされる方は、ぜひ、このページを最後までご覧ください。
外国人(非居住者)が不動産を売却した場合の税金
海外在住の非居住者が不動産を売却した際に発生する税金の種類は以下となります。
1.譲渡所得税
2.源泉徴収税
1.譲渡所得税については、不動産を売却して儲け(譲渡所得)が出たら納めなければならない税金となります。譲渡所得税については、ご存知の方も多いと思います。
聞き慣れないのが、2.源泉徴収税です。国外居住者の方が、不動産を売却した際に、購入者が譲渡対価の10.21%を源泉徴収して、翌月の10日までに税務署に納める必要があります。
ここで重要なのが、譲渡所得税については、「儲け」つまり「利益」が発生した場合のみ課税されますが、源泉徴収税は「譲渡対価」つまり「売買価格」に対して源泉徴収する必要があります。
ただ、海外在住者の全員が源泉徴収されるわけではありませんので、ご安心ください。後ほど不動産売却における源泉徴収判定のフローチャートで改めて解説します。
まずは、税務上の非居住者とは、どんな人に該当するのか?について見ていきたいと思います。
売れた金額で源泉徴収されるんですね!!知らなかった!
これから海外に赴任する人や外国人の方は要注意じゃぞ!!
税務上の非居住者とは、どんな人?
非居住者とは以下に該当する方です。
・住所や居所が1年以上日本国内にない方を指します。
非居住者の区別は国籍に関係なく、1年以上住所や居所が日本国内にない方は非居住者に該当します。
例えば、1年以上国外に在住している外国人の方や1年以上海外赴任されている方は、非居住者となります。
なお、これから、海外に赴任される方で、今の自宅を処分する予定の方は、売却損が発生しても、売買代金に対して10.21%源泉徴収される可能性があるため注意が必要です。
源泉徴収義務が発生するケース
では非居住者の方で、源泉徴収義務の判定チャートをご用意しましたので、ご自身が該当するか判定してみてください。
要するに源泉徴収義務が発生しない人は、
・購入者が個人で自分や親族(配偶者、6親等内)の居住用のために購入した。
・売買価格(譲渡価額)が1億円以下である。
上記2つを同時に満たす方は、源泉徴収されません。
ただし、利益(譲渡所得)が発生した方は、確定申告が必要となりますので、くれぐれもご注意ください。
要するにマイホーム用で1億円以下ということじゃな。
譲渡所得の計算方法のおさらい!
このページをご覧の方は、不動産を売却した後の利益(譲渡所得)の計算方法についてご存知の方も多いと思いますが、知らない方のために少しだけおさらいします。
譲渡所得の計算方法は以下となります。
譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用
譲渡価格は、売買契約が成立した価格です。取得費は、売却した不動産を取得した際の費用(仲介手数料、印紙代等)です。譲渡費用は、売却した際に支出した費用(仲介手数料、印紙代等)を指します。
※外国人(非居住者)が不動産を売却した際の税金計算例は、後で詳しく解説します。
非居住でも3,000万円特別控除が適用されます
利益(譲渡所得)が発生しても売却した不動産がマイホーム(居住用)であれば3,000万円特別控除が適用されます。
非居住の場合は、「居住しなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売却した場合」に適用されます。
つまり、引っ越してから3年目の12月31日までに売却すれば、3,000万円特別控除が受けられることになります。
しかも、元のマイホームは、居住しなくなったあとで、どんな用途に使用していても特例が適用されます。
例えば、海外に在住後、元のマイホームを賃貸物件として貸し付けていたとしても、引っ越した後の3年目の12月31日までに売却すれば、3,000万円特別控除が使えます。
課税譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用-3,000万円特別控除
3,000万円までなら税金がかからないのは助かりますね!
ただし、確定申告が必須になるので、忘れずにな!
つまり、譲渡所得がプラスであっても、最大3,000万円まで利益が無かったことにできます。
軽減税率の特例も適用されます
マイホームを売却した場合、利益(譲渡所得)から3,000万円を控除した場合、3,000万円を超える利益(譲渡所得)がある場合のみ、残額に対して税率を掛けて譲渡税を計算します。
税率は、所有期間が5年を超えている場合を「長期譲渡所得」、5年以内の場合を「短期譲渡所得」と言いまして、税率が変わります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
5年以下(短期譲渡) | 66,30.63% | 9% |
5年超(長期譲渡) | 15.315% | 5% |
※上記に復興特別所得税を含めています。
しかし、マイホームの売却のみ所有期間が10年を超えていれば軽減税率の特例を受けることができます。
所有期間10年超軽減税率の特例 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
3,000万円控除後の6,000万円以下 | 10.21% | 4% |
3,000万円控除後の6,000万円超 | 15.315% | 5% |
しかも、軽減税率と3,000特別控除の併用が可能ですので、所有期間10年を超える方はぜひ活用いただきたいです。
所有期間が10年を超えていれば居住期間は関係ありません。
外国人(非居住者)が不動産を売却した際の税金計算例
お待たせしました!非居住者の方が不動産を売却した際の税金を計算してみたいと思います。
■事例
・取得価格5,000万円
・減価償却費2,000万円
・譲渡価格4,000万円
マイホームとして6年所有。その後、海外赴任し1年以内に売却。買主は法人の事業者となります。
この場合、買主が個人の居住用ではないため売却価格4,000万円に対して10.21%源泉徴収義務が発生します。
源泉徴収税額=譲渡価格×10.21%
4,084,000円=4,000万円×10.21%
次に譲渡所得を計算してみましょう。
譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用
870万円=4,000万円-(5,000万円-2,000万円)-130万円
譲渡所得が発生していますが、3,000万円特別控除が適用されるため、譲渡所得が発生しません。
譲渡所得=譲渡価格-取得費-譲渡費用-3,000万円特別控除
0円=4,000万円-(5,000万円-2,000万円)-130万円-870万円
ただし、確定申告が必要となります。
出国前に納税管理人の選定を忘れずに!
源泉徴収された源泉徴収税額を取り戻す際は、2月16日から3月15日までに確定申告で精算することになります。
この時、ご自身で確定申告できない方は、出国前に納税地を管轄する税務署に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を出国する日までに必ず提出しておいてください。
納税管理人は、本人の代わりに確定申告や納税を行う人を指します。なお、納税管理人は誰でもなることができます。
確定申告は忘れずに!
利益(譲渡所得)が発生しない方も、売却先が個人の居住用ではない場合や売却価格が1億円を超える場合、売却価格の10.21%が源泉徴収されます。
確定申告することによって精算することが、利益(譲渡所得)の有無に関係なく、源泉徴収されそうな方は、忘れずに確定申告を行うようにしてください。
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