不動産売却における譲渡所得とは?所有期間によって税率が変わるって本当?【徹底解説】

不動産売却における譲渡所得とは?所有期間によって税率が変わるって本当?【徹底解説】

これから土地や住宅を売却しますが、「譲渡所得!譲渡所得!譲渡所得!」という言葉をよく聞きます。「一体、譲渡所得って何なの?」

「調べれば調べるほど、専門用語がたくさんでます。チンプンカンプンです。どっかでわかりやすく解説しているサイトはないの??」

こんな悩みをお持ちの方も多いと思います。

不動産売却では、所有期間によって税率も変わりますし、特例や特別控除も多いため、はっきり言って意味不明だと思います。

そこで、このページでは、「不動産売却における譲渡所得」にフォーカスして解説します。

まず、結論から解説しますと「購入金額>売却価格」つまり、損した方は、譲渡所得のことは考えなくてもOKですが、「購入金額<売却価格」で儲かった(儲かりそう)な方はこのページがお役に立つはずです。

ぜひ、最後までご覧いただけましたら幸いです。

目次

不動産売却における譲渡所得とは?

不動産売却における譲渡所得

冒頭にも解説しましたが、譲渡所得とは土地や建物を売却した儲け(利益)のことを指します。

売却価格と住宅ローン残高を相殺した売却益を譲渡所得と判断される方がいらっしゃいますが、住宅ローンの残高は一切関係ありません。

  • 売却益=購入価額-売却価額

上記、買った金額<売った金額の場合、売却益のことを譲渡所得と言います。

譲渡所得に課税される所得税と住民税の合計額を「譲渡税」と呼んでいます。

  • 譲渡税=譲渡所得×税率

譲渡所得の課税方法

所得税と住民税は、所得を10種類に区分して、給与や家賃収入、年金などを合算して合計額の税金を計算する「総合課税」と分離して税金を計算する「分離課税」があります。

不動産売却における譲渡所得は、「分離課税」となります。

分離課税の対象となる資産

種類具体的な資産
土地土地
建物及び付属設備建物、冷暖房設備、照明設備、昇降機等
構築物庭園、塀、橋、岸壁、軌道、貯水池、煙突、その他土地に定着する土木設備等
土地の上に存する権利借地権、地上権、耕作権、地役権、永小作権

いろいろ書きましたが、個人の方の場合は、土地と建物という認識だけで問題ないと思います。

アザラシ先生

聞き慣れない単語が出てきておるが、マイホームなら土地と建物が対象だと考えておけばよいじゃろう。

分離課税の理由

では、なぜ譲渡所得のお話で課税方法について解説したかと言うと理由が2つあります。

ポイント
  • 譲渡所得がプラスの場合は、確定申告が必要
  • 譲渡所得がいくら多額でも他の所得に対する税金に影響しない

先にも解説しました通り土地や売った場合は、他の所得とは合算せず単独で税金を計算(分離課税)します。分離課税は、確定申告が必要です。

分離課税されるものは、退職金のように一時的な所得が増え老後の生活資金になるものや不動産の売却益などがあります。

従って、不動産の売却益による儲けである譲渡所得は、儲けがいくら多額であって、給料や年金などの他の所得に対する税金には影響しません。

不動産売却における税率は所有期間によって変わる

不動産の所有期間

譲渡所得は所有期間が5年超の場合を「長期譲渡所得」、5年以内の場合を「短期譲渡所得」といい長期か短期かによって税率が変わります。

所有期間所得税住民税
5年以下(短期譲渡所得)30.63%9%
5年超(長期譲渡所得)15.315%5%
※上記税率に復興特別所得税を含んでいます。

5年を超えているかで、税率が2倍近くも変わります。つまり、税額も倍になるため、取得日と譲渡日を間違わないことが重要です。

取得日、譲渡日を判断する方法

それでは、「取得日」と「譲渡日」を判断する方法は、

「売買契約締結日」or「引き渡し日(決済日)」のどちらか

「取得日」については、中古であれば「売買契約締結日」で良いのですが、

  • 請負契約による住宅の新築
  • 新築分譲マンション
  • 新築の建売住宅

新築は、引き渡し日(決済日)を取得日とします。

所有期間5年付近の人は要注意

所有期間5年付近の人は要注意

所有期間が5年付近の方で特にご注意いただきたいのが、取得日から譲渡日の属する1月1日現在までの所有期間で「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の判断をします。

5年だと思っていたのが・・・実際は短期譲渡の税率39.63%が適用されるハメにならないようくれぐれもご注意ください。

「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の判断
アザラシ先生

5年だと思っていたら、実は5年ではなかった・・・ということもあるので要注意じゃぞ!

譲渡所得を計算する方法

譲渡所得は以下の方法で計算します。

譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)

譲渡価額とは、売却価格のことを指します。取得費は、土地の購入代金、建物は減価償却費相当額を控除します。譲渡費用は、売却時にかかった費用のことを指します。

売買契約書や領収書は絶対に捨てちゃダメ!

このページをご覧の方で自分の不動産を配偶者や子供が相続したら将来的に売却するするかも知れない方は、購入当時の売買契約書や領収書は絶対に保管しておいてください。

なぜなら、取得日は、被相続人(亡くなった方)の所有年数を引き継ぎますし、取得費も同様だからです。

正直、譲渡所得の計算にあたっては、権利証よりも購入時の領収書や契約書の方が重要です。

不動産の売買契約書と領収書の保管期限は、無限です。

相続、贈与を受けた方が、取得費や取得日を売却するまで延々と引き継ぐことができるからです。

なぜなら、取得費が不明な場合は、概算取得費として譲渡価額の5%を取得費として計算しなければならないからです。

概算取得費で計算すると、実際は売却損でも譲渡所得が発生するケースも多くなるため是非ともご注意ください。

不動産売却における特例と特別控除の活用で税金を0円に!

譲渡所得がプラスの人は、譲渡所得から一定の金額を控除することができます。特別控除と呼ばれるもので、以下が該当します。

800万円特別控除農地保有の合理化などのために土地を売却
1,000万円特別控除特定住宅地造成事業などのために土地を売却
2,000万円特別控除特定土地区画整理事業などのために土地を売却
3,000万円特別控除居住用財産の譲渡に関わる特別控除
5,000万円特別控除収用などで、土地建物などを売却

これらの特別控除を使えば、例えば譲渡所得が2,000万円でも3,000万円までを上限に譲渡所得から控除することができます。

これによって税金0円もしくは譲渡所得がプラスでも大幅に税金を安くすることができます。

このページをご覧の方の大多数が居住用不動産(マイホーム)を売却される方が多いと思いますので、特別控除を活用した実際の計算例を解説します。

譲渡所得にかかる税金の計算例

居住用不動産(マイホーム)を売却される方の多くが下記特例を利用できます。

3,000万円特別控除 所有期間10年を超える場合の軽減税率の特例

3,000万円特別控除は、譲渡所得から最大3,000万円を控除できると解説しました。

3,000万円以上の譲渡所得が発生した方は、短期・長期それぞれの税率を掛けて譲渡税を計算しますが、所有期間が10年を超える場合、「軽減税率の特例」が設けられています。

所有期間所得税住民税
10年超(居住用不動産のみ)課税譲渡所得6,000万円以下の部分10.21%4%
課税譲渡所得6,000万円超の部分15.315%5%

実際に譲渡所得と税金を計算してみましょう。

売却価格8,000万円

購入価格4,000万円

譲渡費用130万円

上記の物件を売却したとします。まず譲渡所得を計算します。

譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)

3,870万円=8,000万円-(4,000万円+130万円)

※簡素化するため建物取得費から減価償却していません。

3,000万円特別控除を適用し、課税される譲渡所得を計算します。

課税譲渡所得=譲渡所得-3,000万円特別控除

870万円=3,870万円-3,000万円

最後に所有期間に応じた税率を掛けると譲渡税である所得税と住民税が計算されます。

 所得税住民税合計
短期譲渡所得(5年以下)2,664,810円783,000円3,447,810円
長期譲渡所得(5年超)1,332,405円435,000円1,767,405円
10年超軽減税率の特例888,270円348,000円1,236,270円

税務署は教えてくれない!自分で確定申告しなきゃダメ

「あなたは、20××年〇月〇日における不動産売却において譲渡所得が発生しています。確定申告してください。」

このようなアナウンスは一切ありません。譲渡所得が発生したら自分で確定申告する必要があります。税務署から連絡は来ません。

従って、このページで概算でも良いので、譲渡所得を計算して、マイナスだったら確定申告の必要はありませんが、プラスの方は売却した翌年の3月15日までに確定申告を行ってください。

税理士監修者コメント

本村健一郎

本村健一郎

譲渡所得の計算式は簡単ですが、不動産の所有期間によって税率が変わるので、売却するタイミングは非常に重要です。

税理士:本村健一郎の詳細

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