家は人生のうちでもっとも高額な買い物の一つ。
住むところに妥協はしたくはないけれど、先行き不透明な世の中で将来どうなるかなんてわかりません。やはり、できれば住居費の支払い額は抑えておきたいものですよね。
そんな方におすすめなのが、通常の家の半分~2/3程度で建てられるローコスト住宅です。
ローコスト住宅なら、自己資金が少なくても、月々多くのローンを払えなくても、憧れのマイホームを手に入れることができます。
当ページでは、
- ローコスト住宅を建てる相場はいくらぐらいなのか知りたい
- 「ローコスト住宅=粗悪品」というイメージがあるけど大丈夫?
- 中古住宅とローコスト住宅を比較してどちらが良いのか教えてほしい
このように感じる方に向けて詳しく丁寧に解説しています。
ローコスト住宅を建てた人のリアルな体験談も掲載していますので、
ぜひ最後までご覧ください。
低価格志向の追い風でローコスト住宅が人気に
「家を持って一人前」という風潮の強かった一昔前と違い、現在では見た目よりも住み心地を重視する人が多くなっています。同時に、家そのものへの低価格志向が強まり、近年の「ローコスト住宅」人気に結びついています。
「ローコスト住宅」は、一般的な家よりも低価格で建てられる家のことです。
「どのぐらい安ければローコストクラスなのか」という決まった定義はありませんが、一般的には、「坪単価30~50万円」もしくは「本体費用1,000万円台」で建てられるような家を指すことが多いようです。
同じ坪数に建てた場合の一般的な住宅とローコスト住宅をシミュレーション・比較してみましょう。
一般的な住宅A | ローコスト住宅B | |
---|---|---|
2,400万円 | 本体費用 | 1,600万円 |
60万円 | 坪単価 | 40万円 |
(坪数40の場合)
同じ坪数でも、このようにローコスト住宅では数百万円も費用が安く建てられています。
ペンギンくん。ここではわかりやすさのために「坪単価」と言ったが、実はこれは注意するべき言葉。「坪単価」は定義のない曖昧な言葉なのじゃ! 会社によって計算式がバラバラじゃから、「坪単価で会社の単純比較はできない」ということをよく覚えておくのじゃぞ!
坪単価、わかりやすいからつい見ちゃうんだよなあ~。
でも、坪単価が安いからって建築会社を決めるのはNGなんだね!
【先輩30名に聞いてみました!】ローコスト住宅で家を建てて実際どうでした?
ローコスト住宅は、「安かろう悪かろう」というイメージを持っている人も少なくありません。通常の家に比べるとかなり安いローコスト住宅、価格面では魅力を感じても、実際の住み心地はどうなのか気になりますよね。
そこで、ローコスト住宅を建てた30人にアンケートを取りました。
ローコスト住宅に興味はあるけど不安もある…という方はぜひ先輩の生の声を参考にしてみましょう。
実施方法 | インターネットによる選択・記述式 |
---|---|
対象者 | ローコスト住宅メーカーで家を建てた経験のある30名(全国) |
実施時期 | 2019年7月 |
ローコスト住宅でも、住み心地に満足している人が8割以上!
ローコスト住宅の住み心地に満足していますか? | |
---|---|
とても満足 | 7人 |
まあまあ満足 | 18人 |
普通 | 1人 |
あまり満足していない | 4人 |
全く満足していない | 0人 |
「ローコスト住宅で建てた家の住み心地に満足していますか?」という設問では、
「とても満足」「まあまあ満足」含めて8割以上が「満足している」と回答しています。
コンパクトに建てて工費を安く上げるのがローコスト住宅のコツ
建てた家の延床面積は? | |
---|---|
19坪以下 | 0人 |
20~29坪 | 14人 |
30~39坪 | 8人 |
40~49坪 | 7人 |
50坪以上 | 1人 |
延床面積は、大人2人ならば最低22坪程度、大人2人・子ども2人で住むならば27坪程度は必要です。ローコスト住宅を建てた先輩方の半分はほとんど最低限の広さで家を建てたことになります。
狭い家は住み心地が悪いのでは?と思う人もいるかもしれませんが、実際の住み心地は間取りによっても大きく左右されます。以下ページで、間取りについて詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
ローコスト住宅を建てた半数以上の先輩は1,999万円以下で家を建てていた!
建物価格はいくらでしたか?(降順) | |
---|---|
1,500万円~1,999万円 | 10人 |
1,000万円~1,499万円 | 8人 |
2,000万円~2,499万円 | 7人 |
2,500万円~2,999万円 | 3人 |
999万円以下 | 2人 |
3,000万円以上 | 0人 |
国土交通省の2018年度の住宅市場動向調査によれば、注文住宅の総工事費は全国で平均3,205万円。それに比べ、今回のアンケートではなんと半分以上の先輩が1,999万円以下で家を建てていました。
3,000万円以上かけたという人はゼロ。
そして30人中2人についてはなんと、999万円以下で建てています。
実際にローコスト住宅で家を建てたリアルな体験談
先輩の声を聞いてみましょう。
満足です。
理由は、好きなように部屋を作ることができたこと、ローコストで注文住宅が建てられたことです。収納や階段の仕様など、建売では叶わなかった夢が色々と実現できて満足しています。床の強度もしっかりしており、ペットを飼うのに最適な仕様にしてくれました。(30代・女性)
大変満足です。
非常に小さい家ですが、その分かなりローコストで建ててもらえました。ローコストでありながら、耐震等級は最高レベルの3で、地震に強い頑丈な家が出来て満足です。また、耐震保証もついているなどアフターフォローも完璧で大変安心です。(50代・男性)
不満が残りました。
家は高価格なものと思っていたので、低価格で購入を出来たことは良かったです。
しかし、震災があった際に外壁が壊れたので耐久性は悪いと思った事で不満が残りました。ローコスト住宅は材料費を削っているので欠点があったと思いました。(40代・男性)
どちらともいえません。
コストを落として家を建てる予定だったのですが、オプションが多く予想外に価格が膨れ上がりました。注文住宅だったのでこだわるところはこだわり、自分達の好きなように住みやすい家が建てられたのはよかったです。(20代・女性)
災害で家の耐久性が保たなかったという意見や、費用がかさんでしまったことを後悔する声があった一方で、低価格で地震に強い家ができたという意見もありました。
そもそもローコスト住宅はなぜ安い?
そもそも「なぜ低価格で家を建てられるのか」を把握できないと、不安ですよね。
ここでは、ローコスト住宅の安さに迫ってみます。
- 間取りやプランの規格化によって設計費を浮かせている
- 材料の一括仕入れによって材料費をコストダウンしている
- 標準仕様のグレードを低く設定している
- 人件費を削減している
- 住宅展示場やCMといった広告宣伝費を削減している
- なるべく自社製造を行い、中間マージンが発生しないように努力している
これらの一つ一つを見ていきましょう。
間取りやプランの規格化によって設計費を浮かせている
一般的に、建築設計事務所に家の設計を依頼すればオーダーメイドの家づくりができる代わりにデザイン料などの費用がかさみます。ローコスト住宅メーカーでは反対に、設計をパターン化することで費用を抑えようとしています。それゆえに、注文住宅でありながら設計の自由度が低くなるというデメリットが生まれます。
間取りや素材にこだわりがある人でローコスト住宅を望む人は、まずメーカーにその設計が実現可能かどうかを問い合わせたほうが良いでしょう。
材料の一括仕入れによって材料費をコストダウンしている
キッチン・バス、ドアやフローリング材、外壁材や屋根材など、家を建てるのに必要な材料は多くあります。完全自由設計であればそれらをいちいち注文しなければなりませんが、ローコスト住宅であれば設計が規格化されているので使う材料もだいたい決まっており、一括仕入れが可能になります。スケールメリットを生かして材料費をコストダウンしているというわけです。
当然ながら、ローコスト住宅でも設計にこだわれば材料費の仕入れ値もあがるため費用のメリットが少なくなってくるでしょう。
標準仕様のグレードを低く設定している
ローコスト住宅でよくある不満が「本体価格は安かったが、結局オプション料金がかさんで費用が高くなってしまった」ということ。この原因は、そもそもローコスト住宅の標準仕様が低く、あるいは少なく設定されていることにあります。
「和室を設置する」「コンセントを追加する」はたまた「2階への階段を設置する」といったことが標準仕様になく、オプション料金になってしまう場合があります。
この点はローコスト住宅での見積もりで最も気をつけなければいけない点と言えるでしょう。
人件費を削減している
ローコスト住宅を建てるのに一番心配なのが「手抜き工事をされないかどうか」「欠陥住宅にならないかどうか」ではないでしょうか。
現在、建築業界では職人不足と言われており、一人あたりの人件費はますます高くなっています。そこで、ローコスト住宅メーカーでも家を建てるのに職人の数を減らしたり工数や日数を減らしたりして低価格を維持する努力をしています。
例えば、あらかじめ木材を工場でプレカットしておく、複雑な工法をそもそも選ばないといった工夫をしているようです。
しかし残念ながら、メーカーの中には社員や職人一人あたりの給与を下げて低価格住宅を実現しているものもあります。やる気や家を建てる技術の低い人に自分の家を建てられてしまうことは絶対に避けたいものです。
そこで、手抜き工事・欠陥住宅が心配な人は、設計施工したローコスト住宅メーカーとは別の建築士に「現場監理」を依頼したりホームインスペクションを利用したりするのはどうでしょうか。
現場監理とは、施工が書いた図面に沿ってきちんと行われているかどうかを工事の現場に行ってチェックすることです。「監理」は「管理」とは異なり、「サラカン」と言われたりもします。監理と施工を分離することで、第三者のチェック機能が働き、間違いや欠陥を予防できるでしょう。
もちろん費用面からいえば第三者の監理やホームインスペクションを入れることはデメリットですが、施工の安心という側面でみて価格との天秤にかける価値はあるのではないでしょうか。
もちろん、ローコストでないハウスメーカーで家を建てるという場合でも、手抜き工事の心配があれば監理やホームインスペクションを第三者にお願いすることはできますよ。
住宅展示場やCMといった広告宣伝費を削減している
住宅展示場を所有したり、全国CMを流したりする費用は、顧客が払う住宅取得費から賄われています。
そのため、ローコスト住宅メーカーは、大々的な宣伝は避けて、住宅価格を下げています。
自社製造やメーカーとの直接取引で、中間マージンが発生しないように努力している
下請け・孫請けの会社が多いほど、それぞれの会社に中間利益が発生し、原価は切り詰められていきますが、製造から販売までなるべく自社でまかなうことができれば、中間利益を払わなくて良い分をコストダウンすることができます。
ローコスト住宅の安さは企業努力の賜物。しかし、家を建てるなら、自分の希望が実現するかも大事にしよう。
お伝えしてきたように、ローコスト住宅の安さは各メーカーの工夫と努力ゆえ実現しているものです。しかし、その安さと理由は、人によってはデメリットになることも…。
たとえば、他の誰もがやっていないような間取りにしたいという希望はローコスト住宅メーカーでは叶いません。限定モノ・一点モノの素材を取り入れたい、という希望も難しいでしょう。
せっかくの家づくりです。
何か特別な希望があるなら、その思いも大事にしましょう。
ローコスト住宅は、見た目も造りも簡素化しています。
安さの理由を確認しながら「これは納得。大丈夫。」と思えるなら、進めていきましょう。
オススメのローコスト住宅メーカーは?悪徳メーカーに注意
おすすめのローコスト住宅メーカーについては、こちらの記事で口コミも含めて紹介しています。
どうすれば安く家が手に入る? ~ローコスト住宅で家を建てる VS 中古住宅を購入&リフォーム~
家を手に入れる予算が限られている人ならば、中古住宅という選択肢もありますね。 同じ理想の住まいを実現するために、中古住宅を購入してリフォームするのとローコスト住宅を建てるのでは、一体どちらが良いのでしょうか?
ローコスト住宅 | 中古住宅をリフォーム | |
フルリフォーム程度 | 価格 | リフォームの程度によっては安い |
10~15年後 | 大規模修繕 | 築年数によってはすぐに必要 |
新しい | 設備 | 古い場合もある |
すぐには住めない | 入居時期 | すぐに住める |
新建築基準を満たす | 耐震性 | 築年数による |
高い | 資産価値 | 低い |
減税措置あり | 固定資産税 | 築年数やリフォーム内容によって安くも高くもなる |
価格についてはやはり中古住宅リフォームのほうが安くなりやすい
費用面で考えると、中古住宅でリフォームを施す方が安く済みます。
いくらローコスト住宅とは言え、土地を買って新たに家を建てるとなると、そう安くは済みません。
しかし中古住宅の場合、築年数によりますが、水回りや壁紙のリフォームを行う場合があります。リフォームする箇所が少なければその分費用も少なくてすみますが、もしフルリフォームを行う場合は、新築ローコスト住宅とほとんど同じ値段になってしまうこともあります。
10~15年ごとに必要な屋根や壁の修繕、古すぎる設備に注意。中古住宅ではすぐに必要な場合も。
一戸建てで長く暮らすためには、10~15年ごとに屋根や壁といった大きな修繕を行う必要があります。一回の費用はだいたい100~200万円程度です。
新築の場合は、建てたその年からリフォーム時期を計算すれば良いので、
単純に「リフォームを行うのは10~15年後を予定しておこう」と考えるのでOKです。
しかし中古住宅は、築年数によっては購入後すぐ大規模リフォームが必要になることも…。設備についても同様で、引っ越して早々に寿命が来てしまったということも少なくありません。
中古住宅を購入する場合は、修繕費や設備導入費もはじめからしっかり費用として計上しましょう。
中古住宅は住み始めてからリフォームもできる
新築ローコスト住宅の場合は、家が完成するまで入居することはできませんが、中古住宅をリフォームするのであれば、最低限のクリーニングが終わっていればいつでも入居できます。住み始めてから少しずつリフォームするということもできますね。
すぐに入居できるのは中古住宅のメリットの一つと言えるでしょう。
ただし、フルリフォームが必要であればやはり仮住まいが必要になります。
リフォームを小分けにすればその分費用がかさむ場合もあります。
「新建築基準」を満たす住宅であることが絶対条件。「ホームインスペクション」が新しいスタンダード
中古住宅で何より気になるのは耐震性能ですよね。
現在の建築基準は1981年6月より施工された「新建築基準」です。それ以前に建てられた住宅は「旧建築基準」であり、大地震の際に倒壊するリスクがあります。
中古住宅を購入するならば、建築年度はいつなのかをまずしっかり確認しましょう。もし気に入った物件が旧建築基準であれば耐震補強工事を行う必要があります。
ただし、新建築基準を満たしていても、工事が粗雑であったり以前の住人の手入れされていなかったりすれば、家の耐震性は落ちてしまいます。
そこで「ホームインスペクション(住宅診断)」を利用し、住宅の耐震性をチェックしてもらうと良いでしょう。診断によって家の耐震性をランク付けしてもらえますが、耐震等級によっては地震保険料が最大50%もオフになるメリットもあります。
やはり新築のほうが資産価値は高い。固定資産税については築年数次第
住宅の価値は建築後10年間程度で下落します。
やはり中古住宅に比べると、資産価値は新築住宅のほうが高いでしょう。
固定資産税は土地と住宅の評価額に基づくので、資産価値が高ければ額が大きくなります。
ただし、新築住宅には固定資産税の特例の軽減措置があり、通常の住宅であれば3年間税額が二分の一になります。(120平方メートルまでの分が対象。長期優良住宅の場合は5年間。適用には条件がありますのでよくご確認ください。)
したがって、築4年以上の中古住宅であれば、同条件の新築の住宅に比べて2倍の固定資産税が課税されることになります。
ただし、中古物件でも省エネ・バリアフリー・耐震化等のリフォームに伴い、固定資産税が二分の一から三分の一ほど減額される制度があります。実際に行われるリフォームが制度に該当するかどうか、自治体・業者にしっかり確認するようにしましょう。
まとめ
ローコスト住宅についてご紹介しました。
ローコスト住宅はデメリットと上手に付き合えるならばぜひ検討したい住宅の一つです。上手に住居費を抑えてゆとりある新生活をスタートさせたいものですね。
二級建築士・インテリアコーディネーター監修者コメント
建築費の安さがかえって不安という声もあるローコスト住宅ですが、安い理由が納得できれば満足できる家を手に入れられます。検討する際には、不安な点をひとつずつ解消させていくことが大切です。
二級建築士・インテリアコーディネーター:河野由美子の詳細
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