「ローコスト住宅」と「パワービルダー」。
似ているようで違うような2つの「家」。
ローコスト住宅を検討している人の中には、パワービルダーの家も気になっている人もいらっしゃるかもしれません。
この記事では
- 「ローコスト住宅」と「パワービルダー」って同じもの?ちがうもの?
- 建築会社って一体どれだけ種類があるの?
- 両方のメリットとデメリットにちがいはあるの?
このような内容をわかりやすく解説しています。
なんとなく比較していた2つの家を今一度しっかりと比較して、家づくりの参考にしていただければと思います。
1.ローコスト住宅とパワービルダーの住宅は別物なの?
「ローコスト住宅」と「パワービルダーの家」は別物なのか、同じなのか。
それぞれの一般的な定義と、代表的な会社、2つの家が一般的にどのように認識されているかを、順番に解説していきます。
ローコスト住宅の一般的な定義
ローコスト住宅とは、一般的に延べ床面積が30〜35坪ほどで、坪単価が30〜50万円くらいの家のことです。
建物総額が1,000万円台つまり2,000万円未満で建つ家のことをローコスト住宅とよんでいる場合が多いです。
パワービルダーの一般的な定義
パワービルダーとは、延べ床面積30坪ほどの家を、土地付きで約2,000〜4,000万円で売っている建売分譲会社のことを指します。
特徴は、
- ターゲットとしているのは住宅一次取得者層
- 販売期間が短い
- 建物完成前に販売する
- 売れ残りのリスクがある大規模分譲には手を出さない
という点です。
また、「勢いのある建築会社」という意味で使われることもあるので、たとえばタマホームなどの年間着工棟数がずば抜けて多い会社が「パワービルダー」とよばれる場合もあるようです。
代表的な会社は?
■ ローコスト住宅を扱う代表的な会社
・タマホーム
・アイフルホーム
・アキュラホーム
・アイダ設計
・クレバリーホーム
・ユニバーサルホーム
・ヤマダホームズ(旧レオハウス)
など
ローコスト住宅を扱うメーカーにはフランチャイズグループも多くあります。
また、工務店や建築設計事務所でもローコスト住宅の建築依頼はできます。
ローコスト住宅は、要は「安く建つ家」のことですので、どのような形態の会社でも建てることができます。
■ パワービルダーの会社
・飯田産業
・一建設(はじめけんせつ)
・アーネストワン
・東栄住宅
・タクトホーム
・アイディホーム
など
「パワービルダー」とよばれるこれらの会社はほとんどが飯田グループホールディングスのグループ会社です。
そもそも「パワービルダー」という言葉が誕生したきっかけが、飯田グループだったという経緯があります。
現在全国で建売住宅を購入した人のうち約3割が飯田グループの会社から購入しているので、そのシェアはとても大きいです。
一般的な意味のちがい
「ローコスト住宅」と「パワービルダー」という言葉は、2つとも定義が曖昧なためその使われ方も人によってとらえ方が違っているようです。
一般的には、
ローコスト住宅 | パワービルダーの住宅 |
---|---|
注文住宅 | 建売住宅 |
分譲はしていない | 分譲のみ |
パワービルダーの住宅=ローコスト住宅 |
このように使われていることが多いようです。
パワービルダーの住宅は「建売住宅」であり、それに対してローコスト住宅は「注文住宅」として考えられています。
しかし実際は、ローコスト住宅は規格住宅を主力としている会社が多いので、ローコスト住宅だけをみる場合には「ローコスト住宅=規格住宅」として考える人が多いです。
パワービルダーから家を買うことを検討している人の中には、「パワービルダーの建売 or ローコスト住宅の注文住宅」このどちらが良いかと迷う人もいるようです。
つまり「ローコスト住宅」のとらえ方は、比較対象が変わると「規格住宅」であったり「注文住宅」であったりと、2つのパターンに変わるようです。
ローコスト住宅は分譲をしておらず、パワービルダーは分譲のみであるという点はほぼ現実通りだと言えるでしょう。
また、パワービルダーの家がとても安いので、「パワービルダーの家=ローコスト住宅」だと考える人もいます。建売住宅は比較的にとても安いので、これも間違った考え方ではありませんね。
まとめると、パワービルダーの家については「建売住宅」「分譲のみ」としてある程度決まった意味があり、ローコスト住宅については「注文住宅」であったり「規格住宅」であったり、はたまた単に「ローコスト住宅=安い家」として広い意味で使われているようです。
やはり「ローコスト住宅」の定義があいまいであることで、このような差が出てくるのだと思われます。
2.建築会社の種別からみるローコスト住宅とパワービルダーのちがいは?
家を建てようと思っている人はどんな会社に依頼しようか、とても迷うと思います。
いろいろな会社の資料を見たり見学に行ったりしていると、建築に関する会社の種類の多さと複雑さに「一体どれくらいの種類の会社があるの?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか?
そこでここでは、さまざまな建築会社の分類をわかりやすく解説していきます。
ローコスト住宅とパワービルダーの位置付けもよくわかるように表にしていますので、参考にしてください。
(※建築会社の種別については定義があいまいなものもあります。全国的に統一されたものではありませんので、ご了承ください。)
建築会社の種類
会社の種類 | 家のつくり | 会社名 |
---|---|---|
①プレハブメーカー | 鉄骨系・木質系・ユニット系・コンクリート系 | 積水ハウス、大和ハウス、ミサワホーム、ヘーベルハウス、パナホームなど |
②オープン工法ハウスメーカー | 在来工法・2×4工法 | 住友林業、三井ホーム、一条工務店、スウェーデンハウス、アキュラホーム、タマホームなど |
③ホームビルダー | 〃 | 新昭和(千葉)、ポラスグループ(埼玉)、桧家グループ(埼玉)など |
④工務店・建設会社 | すべて | 地域の工務店、アイフルホーム、ユニバーサルホーム、クレバリーホームなど |
⑤設計事務所 | すべて | 地域の設計事務所 |
⑥パワービルダー・建売業者 | 在来工法 | 飯田産業、一建設、アーネストワン、東栄住宅など |
①プレハブメーカー
建材の一部を工場でつくり、それを現場で組み立てる方法を取り入れているハウスメーカーのことです。
施工方法は各社独自のものなので、地元工務店ではなく子会社や協力会社が施工します。
このような第三者が施工出来ない特殊な工法のことを「クローズド工法」とよびます。
住宅展示場に豪華なモデルハウスを展示しているような有名なハウスメーカーがここに分類されます。
おもに軽量鉄骨造のメーカーが多いですが、木造を扱っている会社もあります。
坪単価は比較的高いので、建物だけで2,000万円をゆうに超えます。
②オープン工法メーカー
①のプレハブメーカーのクローズド工法に対して「オープン工法」とは、在来工法や2×4工法などの職人さんなら誰もが施工出来る一般公開された工法のことです。
ここに分類されるメーカーは、その名の通りオープン工法で家を建てるメーカーです。
施工は地元工務店が行うことが多いです。
会社の規模は、全国展開していて年間に約1,000棟以上を施工します。
高級ハウスメーカーが多いですが、ローコストハウスメーカーの一部(アキュラホーム、タマホームなど)がここに分類されます。
③ホームビルダー
①と形態はほぼ同じですが、規模が小さく建設業許可が知事許可のみの会社をホームビルダーやビルダーとよびます。
全国的な知名度は低く、対応エリアが2〜3県ほどの規模で地域に根ざした企業が多いです。
年間数百〜数千棟を施工します。
パワービルダーや建売業者についてもこの中に分類する場合がありますが、ここでは分けて考えています。
④工務店・建設会社
地元密着型の建設関係の会社です。
工務店は個人の注文住宅を手がけることが多く、建設会社は個人や法人の施設(賃貸マンション、医療施設、介護施設など)を手がける割合が多いです。
工務店はハウスメーカーとは違い、規格という概念がないため家をゼロから施主との打合せの中で作り上げていきます。
この記事ではこの分類の中にフランチャイズも含めて考えています。
フランチャイズとは、地元の工務店がフランチャイズ本部に加盟し本部の企画力や商品開発力を得て、経営自体は加盟店がそれぞれ行う業態のことを言います。
ローコスト住宅メーカーとして有名な、アイフルホーム、クレバリーホーム、ユニバーサルホームなどがここに分類されます。
いずれも施工までを自社が行うため、比較的コストは安く建てることができます。
⑤設計事務所
地域密着という点では工務店と同じですが、違う点は、
設計事務所は”設計”のみを専門で行う会社だということです。
そのため施主の立場にたってさまざまな提案を出してくれます。
こだわりたい部分と削りたい部分のコストコントロールもしてくれます。
施工は地元工務店に委託するので、着工後は第三者の目から施工をチェックしてくれます。
しかし設計にかかる費用や施工を他社に依頼する費用などがかかるため、施主が支払う建築コストは比較的高くなってしまいます。
⑥パワービルダー・建売業者
パワービルダーや建売業者は、まず土地を大量に仕入れるところから始めるのが特徴です。
建物が完成してから販売するのが建売業者で、建物完成前から販売を開始するのがパワービルダーです。
パワービルダーは大都市圏で業績を上げてから地方に進出しているパターンがほとんどです。
比較的高く土地を購入する資金力があるので、地方の好立地な土地はパワービルダーが独占で購入しているところもあります。
施工も自社で徹底して規格化し、コストダウンをしています。
家の仕様の変更はほぼ受け付けず、販売に関しては仲介業者に丸投げしている会社が多いです。
ローコスト住宅メーカーとパワービルダーの分類は別
このように建築会社の分類をみてみると、
ローコスト住宅メーカーにはハウスメーカーや工務店があり
、そしてそれとはまた別にパワービルダーがあることがわかります。
「パワービルダーの家=ローコスト住宅」という考え方は間違ってはいませんが、一般的とは言えないかもしれません。
3.ローコスト住宅・パワービルダーの住宅のメリットとデメリットを比較してみよう
分類が別のものだということがわかりましたが、でもローコスト住宅とパワービルダーの建売住宅は似ているところが多く、どちらを選ぼうか迷われている人も多いと思います。
そこで次に、両方のメリットとデメリットを比較して、同じところや違うところをあらためてみていきましょう。
ローコスト住宅には規格住宅と注文住宅がありますが、ここでは規格住宅とパワービルダーの建売住宅を比較しています。
メリットを比較する
まずはメリットの比較です。
ローコストの規格住宅 | メリット | パワービルダーの建売住宅 |
---|---|---|
〇 | 価格が安い | 〇 |
〇 | リフォームや建て替えがしやすい | 〇 |
〇 | シンプルな外観 | 〇 |
〇 | シンプルな間取り | 〇 |
〇 | 入居までが早い | 〇 |
△ | 購入手続きが簡単 | 〇 |
△ | 隣地トラブルが少ない | 〇 |
△ | 周辺環境が整っている | 〇 |
まず両方に共通するメリットとして
- 価格が安い
- リフォームや建て替えがしやすい
- シンプルな外観
- シンプルな間取り
- 入居までが早い
という点があります。
入居までの早さは、購入のタイミングによってはパワービルダーの方がより早いです。
そしてパワービルダーの建売住宅のみのメリットとして
- 購入手続きが簡単
- 隣地トラブルが少ない
- 周辺環境が整っている
という点があります。
購入手続きは、土地とセットなのでローコスト住宅よりも簡単です。
住宅ローンに関しても比較的スムーズでしょう。
分譲地なので区画整理がきちんとされており隣地トラブルが少ないです。
全面道路や公園など、整備されたばかりなのでとてもきれいで周辺環境が良いです。
デメリットを比較する
続いてデメリットの比較です。
ローコストの規格住宅 | デメリット | パワービルダーの建売住宅 |
---|---|---|
〇 | 自由度が低い | 〇 |
〇 | 標準仕様が低い | 〇 |
〇 | 打合せ回数が少ない | 〇 |
〇 | 工期が短い | 〇 |
〇 | 不具合が出やすい | 〇 |
〇 | オプションが高額 | 〇 |
〇 | 材料が低品質 | 〇 |
〇 | 耐久性が低い | 〇 |
〇 | メンテナンスコストがかかる | 〇 |
〇 | 提案力がない | 〇 |
〇 | 表示価格より実際価格の方が高い | △ |
△ | 仲介手数料が必要 | 〇 |
△ | 外観が画一的 | 〇 |
△ | 施工ミスが不明 | 〇 |
両方に共通するデメリットとして
- 自由度が低い
- 標準仕様が低い
- 打合せ回数が少ない
- 工期が短い
- 不具合が出やすい
- オプションが高額
- 材料が低品質
- 耐久性が低い
- メンテナンスコストがかかる
- 提案力がない
以上のような点があります。
ローコスト住宅のみのデメリットとして
- 表示価格より実際価格の方が高い
パワービルダーの建売住宅のみのデメリットとして
- 仲介手数料が必要
- 外観が画一的
- 施工ミスが不明
などの点があります。
メリットに関してもデメリットに関しても、パワービルダーの建売住宅の方が多いようです。
4.ローコスト住宅・パワービルダーの住宅それぞれの注意点
それぞれのメリットとデメリットを比較してみてわかることは、両方ともがメリットよりもデメリットの数の方が多いということです。
でも価格が安いというメリットの方により魅力を感じる人も多いと思います。
メリットを活かしてデメリットを極力感じないようにすることが、良い家づくりにつながります。
ここでは、デメリットに対する注意点をまとめていますので家づくりの参考にしてください。
ローコスト住宅の注意点・共通する注意点
まずローコスト住宅とパワービルダー共通のデメリットはこのような点でした。
- 自由度が低い
- 標準仕様が低い
- 打合せ回数が少ない
- 工期が短い
- 不具合が出やすい
- オプションが高額
- 材料が低品質
- 耐久性が低い
- メンテナンスコストがかかる
- 表示価格よりも実際価格の方が高い(ローコスト住宅のみのデメリット)
これらのデメリットへの注意点はこちらの記事にわかりやすくまとめていますので、ぜひご覧ください。
- 提案力がない
この点についても共通するデメリットです。
両方とも、一棟のお客様にかけられる時間が限られているため仕方のないことですが、少しでも解消するためには、お客様自身が家づくりについて知識をつけておき、家族の希望をしっかりまとめておくことが大切です。
パワービルダーの建売住宅の場合は、購入のタイミングによっては仕様が確定していますので、そもそも何の変更も効かないことがあります。
パワービルダーの住宅のみの注意点
パワービルダーの建売住宅のみのデメリットとして以下がありました。
- 仲介手数料が必要
- 外観が画一的
- 施工ミスが不明
それぞれのデメリットについて注意点を解説します。
- 仲介手数料が必要
多くのパワービルダーは土地の仕入れから施工をいかに効率良くコストを抑えて行うかに専念しています。
そのため販売については仲介業者に丸投げしていることが多く、お客様は仲介業者から土地と建物をセットで購入することになります。
仲介業者から購入する場合、必ずかかるのが仲介手数料です。
パワービルダーを検討する際は、仲介手数料については必要経費ということになりますので、予算にあらかじめ入れておくようにしましょう。
- 外観が画一的
パワービルダーの建売住宅は、同じ分譲地内の外観が画一的であることが多いです。
よく見ると微妙に違いは作られているのですが、パッと見た感じは同じような家ばかりが並んでいるように感じることもあります。
このことが、住んでから気になる人もいるようです。
軽減する方法として、購入のタイミングが早く仕様変更が可能であれば、外壁の色を変えることも一つです。
しかし全体的な雰囲気は似てしまいますので、ある程度は仕方のないこととして納得しておくことも必要かもしれません。
- 施工ミスが不明
パワービルダーの建売住宅を完成後に購入する場合、施工中にミスがあったかどうかが不明です。
入居前にホームインスペクション(住宅診断)をすることは可能ですし、とても有益なことではありますが、内部のミスについては診断ができません。
これも仕方のない部分ではあります。
建売住宅の中には住宅性能表示制度を導入しているものもありますので、そういった住宅であれば安心して購入することができます。
建物完成後の物件を購入する際はそういったところにも注目して選ぶようにしましょう。
まとめ
この記事では、ローコスト住宅とパワービルダーについて解説しました。
似ている部分が多く、どちらを購入するか迷われる人も多いかと思いますが、きちんと比較するとメリットもデメリットもパワービルダーの方が少し多いことがわかりました。
メリットのどの点に魅力を感じるか、デメリットのどの部分が気になるかはお客様によってさまざまですよね。
家は一度買うと、気に入らなくても買い直すことはできません。
じっくり検討して、ベストな選択をしてくださいね。
二級建築士・インテリアコーディネーター監修者コメント
【監修者】河野 由美子
メリットやデメリットはあまり変わりませんが、仕様に若干でもこだわりたいならローコスト住宅、購入手続きをスピーディーに進めたいならパワービルダーの住宅です。どの部分を優先するのかをよく考えて検討することが重要です。
二級建築士・インテリアコーディネーター:河野由美子の詳細
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