【新築&中古】ホームインスペクションをするべき判断ポイントと失敗しない業者の選び方

【新築&中古】ホームインスペクションをするべき判断ポイントと失敗しない業者の選び方のイメージ

2018年4月より、中古住宅売買などの際に説明が義務化されたホームインスペクション。

耳にしたことはあるけどイマイチよくわからない…という方も多いのではないでしょうか。

しかし、「これから家を建てよう」「中古物件を購入しよう」とお考えであれば、ホームインスペクションについてのチェックは必須。

ホームインスペクションを行うことにより、物件の状況を不具合の有無や劣化状況などを確認することができ、安心して住宅の売買が可能になります。

実際に住むことを考えると、住宅診断で住宅のコンディションを書くにした上で住む方が安心でしょう。

そこで今回は、ホームインスペクターとして活躍する住宅診断のプロに以下3点についてお話を伺いました。

①新築する際にインスペクションをした方が良い状況は?
②中古物件を購入する際にインスペクションをした方が良い物件の状況は?
③インスペクション業者の正しい見分け方は?

今回インタビューにご協力いただいたのは、業界No.1の実績40,000組を誇る株式会社さくら事務所の川野武士氏です。

これから新築や中古物件の購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

株式会社さくら事務所

1999年3月に設立。
業界初の個人向け総合不動産コンサルティングサービス企業。
第三者性を堅持したホームインスペクションやコンサルティング、物件購入アドバイスを提供。その実績は40,000組を超える。

株式会社さくら事務所公式HP
https://www.sakurajimusyo.com/

川野 武士
さくら事務所に在籍するホームインスペクターであり一級建築士

Q.家を新築する際にインスペクションした方が良い状況を教えてください。

A.新築住宅の場合は、建築確認申請がありますので、審査機関による図面のチェックや施工中の検査があります。また、瑕疵担保責任保険の対象であれば、保険会社さんも検査に入ります。

ところが、それだけで全部を見られるわけではなく、審査機関や保険会社の検査でも重要なポイントが含まれていないところも多くあります。いろんな人が現場を見ることによって、見落としを少なくし、リスクを減らして施工精度の良い建物を建てるために行うのが工事中のインスペクションです。

施工会社さんの協力が得られれば、問題を見つけた場合にその場で修正していただくことで、
きちんとした建物をお引き渡しできますので、施工不良などのリスクは少なくなります。

姉歯事件以降は、確認申請手続きの仕方が変わり、会社によっては瑕疵担保責任保険もできましたので、リスクは減ってきていますが、実際にはまだリスクは存在しています。

新築住宅の場合で、施工会社さんがインスペクションを拒否するケースもあるのですか?
A.あります。

例えば、引き渡しまでは現場に入らないでほしいという場合があります。中古の場合も同じで、売主からそのように言われてしまうこともあります。
インスペクションを拒否する業者さんはどの程度いますか?
A.昨年から建物状況調査が始まり、ご理解いただけ易くなりましたので、インスペクションを拒否されるケースは、以前と比べて10分の1以下になっています。
インスペクションを拒否するのは、どういう業者さんですか?
A.どちらかというと、地元の工務店さんや不動産会社さんが多いです。
地元密着の数名でやられているような工務店さんですか?
A.その地域の業者さんで、中堅企業の場合もあります。
いわゆる大手のハウスメーカー、不動産会社さんの物件でも、ホームインスペクションを依頼される方はいらっしゃいますか?
A.いらっしゃいます。 中古住宅の場合は契約前、新築物件の場合はお引渡し前のご依頼が多くあります。 実際に物件を検査してみると、不具合がゼロという物件はほとんどないですね。

でも、不具合がすべて致命的な欠陥になるかというと、そういうわけではありません。

隠れていて表には出ず、建物の寿命を全うする場合もあります。 しかし、中には構造上の懸念や防水上の懸念がある大きな不具合もありますので、 大小含めるとどの物件でも不具合はあると思います。

やはり、現場で人がつくっているものですので、何らかの見落としや気候条件による不具合などがどうしてもあります。それを専門家が検査をして、可能な範囲で不具合を減らすことができます。
マンションの共用部分は、インスペクションできないと思うのですが?
A.マンションの場合は、内覧会自体が専有部分を対象としていますので、これは検査会社さんにもよるでしょうが、弊社の場合は、例えばマンションのロビーや1階の共用スペースで待ち合わせて、お部屋まで歩いて行く途中で気付くことがあれば、お知らせする場合もあります。

ただし、目的は専有部ですので、あくまで専有部のチェックということになります。 共用部分の引渡し前のチェックは、重要視されていないので依頼は少ないですが、共用部分も自分たちの資産という意識のある方は、気付く範囲で共用部分も見てほしいというご依頼はあります。

大手デベロッパーさんの場合、共用部分は必ず1~2年の保証期間がありますので、その間に共用部分をチェックしてほしいというご依頼はよくあります。
管理組合から依頼が来るのですか?
A.そうです。個人からではないです。 内覧会のときもそうですが、個人の依頼を受けて共用部分を全部チェックするわけにはいきませんので、歩ける部分や見ることのできる範囲でしかお伝えできないという事情もあります。
そういう意味では戸建てのほうが、インスペクションの自由度が高いということですか?
A.そうです。一個人による調査の許可ができる範囲が戸建てとマンションで異なります。
戸建ての場合で不具合が多い箇所はどこですか?
A.床下や小屋裏です。

点検口を開けないと見ることができない箇所は、やはり不具合は多いと思います。

1階には床下収納庫があり、屋根裏には点検口が付いている物件がほとんどですので、そこをのぞいてみると不具合や劣化事象が見つかることが多いです。例えば、床下の基礎にひび割れがあったり、断熱材に乱れがあったりすることもあります。

屋根裏の場合は、染みがあったり構造金物が少し緩んでいたりすることがあります。 見えているところは修繕や補修をし易いですが、やはり見えにくい箇所には、どうしても不具合が多いと思います。

新築の場合、施工会社さんは、問題なく施工していると思われていますが、しっかり施工しても、雨が降れば染みができたり乾燥が不十分だったりということもありますので、どこまでチェックされているかですね。

コンクリートも基礎ができた当時はきれいでも、乾燥する過程でひび割れが入ることがあります。 ところが外側は仕上げをするのでひび割れはなくなりますが、内側に気付いていない業者さんも多いですね。ひび割れ自体は、自然現象なので仕方がないことです。
内側はどうやって判断するのですか?
A.通常は、床下点検口からのぞいて目視で検査しますが、弊社の場合はご依頼があれば進入して検査を行います。

特にこれからの時期は梅雨ですので、水が溜まっていることがあります。

床下収納庫の場合、開けるとプラスチックのケースが入っていますが、それを外して床下を見る方は少ないですから、のぞいてみると水が溜まっているというトラブルもありますね。
水が溜まるとどうなるのですか?
A.例えば、カビが発生します。

溜まった水は、施工中の雨ではなく完成後の雨漏りや設備からの漏水ということもありますので、 気付かないうちに木材が腐食したり、シロアリが発生したりするトラブルもありますね。

Q.中古物件を購入する際に、インスペクションした方が良い物件の状況を教えてください。

A.築5~6年程度の築浅の物件は、あまり劣化していないです。

どちらかというと、新築時に施工不良がないか、また、すでにお住まいになられていますから、 摩耗しているところがないか、建具がおかしくないかなどです。

築10年を超えてくると、修繕が必要な箇所も多くなってきますので、どの程度劣化しているか、 いつごろ修繕が必要か、修繕の費用はどの程度かかるか相談したいとご依頼いただくケースが多いです。

仲介会社さんは、建築の専門ではありませんので、いつごろ修繕が必要か、修繕にどの程度費用がかかるかアドバイス出来ない方が多いです。

ただ、「10年経っている、この程度の物件です」ということで案内されることが多いので、劣化していることはわかっても、どの程度影響があるか、どの程度もつか判断するのは難しいところです。

築年数に限らず重点的に検査するポイントはありますか?
A.特に耐久性に影響がある箇所です。

例えば、外まわりですと屋根・外壁部分・バルコニーなどの防水関係です。防水関係が劣化してくると、雨漏りの原因となることがあります。

雨漏りすると木造住宅では構造を傷めてしまいますので、外まわりの耐久性に影響がある箇所の防水の状態は、しっかり検査したほうが良いポイントです。
防水の次に重要な箇所はどこですか?
A.構造自体がしっかりしているかどうかです。

最近の建物は、ほとんど構造材が壁の中に入っていて見ることはできませんので、点検口からのぞける範囲になりますが、構造材が腐食していないか、カビが発生していないか、構造をつないでいる金物が緩んでいないか、あとは床下にひび割れがないかです。

構造に著しいひび割れや緩みがあると耐震性が心配になります。 建物の傾斜も重要です。 買主様にとって構造も心配ですが、一番困るのは健康への害です。

実は建物が傾斜していて、平衡感覚に異常を感じたり、よく眠れずストレスになったりして、もう物件には住めないというトラブルもありますので、著しい傾斜がないか検査しています。
傾斜に関しては、マンションでも同じですか?
A.同じです。

マンションの場合は、床・壁・天井などの仕上げが直接コンクリートに張られてなく、二重になっていたりしますので、構造自体に問題があるかどうかはわからないこともあります。

共用部分は見ることができないので、専有部から見える部分、例えばお風呂場の天井に点検口がある物件が多いので、そこからコンクリートの構造を見て、ひび割れがないかどうかを検査します。

そのほかには、専有使用権のある共用部のバルコニーの劣化状況を検査して、塗装や防水があまりよくない状況であれば、長期修繕計画と照らし合わせて、修繕する予定があるかどうかの確認を促します。修繕する予定がなければ、長期修繕計画自体に問題があるかもしれないです。

あくまで専有部分だけの情報ですが、マンション全体の大規模修繕の計画が適切かも見えてくることもあります。

Q.インスペクション業者の正しい見分け方

A.昨年から建物状況調査が始まって、今まさにいろいろな会社さんが調査をしています。 建物状況調査は、建築士が講習会を受ければ誰でもできるもので、特に資格試験もない制度です。

ところが、インスペクションは、例えば新築の勉強は資格試験や学校でも勉強しますが、 建物の劣化については勉強する機会がありませんので、講習会の知識だけなのです。

講習会で習う程度では、表面的な劣化の検査はできるかもしれませんが、例を挙げるとすれば、鉄が錆びていた場合、表面的なものもあれば、破損をしているものもあります。

「錆があります、劣化事象がありました」という報告だけでは依頼者は判断できません。 しかし、その錆がどの程度かは、建築士は教わる機会がありませんので、業者さんの見分け方として重要なのは、それなりの経験がある会社かということです。

表面的な劣化も重要ですが、その劣化事象がどの程度かわかる実績のある会社さんでないと、インスペクションは難しいと思います。

業者さんの経験はどうやって見定めればいいですか?
A.調査会社のこれまでの実績件数や個人であれば経歴を見ると良いです。 具体的には、リフォームや修繕をやられている建築士の方でしたら、建物の劣化はある程度知っているかもしれません。

しかし、新築ばかりの実績がある方は、中古の場合は難しいかもしれませんので、リフォームや、具体的には耐震補強工事の経験がある方だと、劣化の程度にも詳しいので良いと思います。重要なのは、どれだけ調査をした経験があるかです。
件数的な目安はありますか?
A.去年から建物状況調査が始まりましたので、月に1件程度の実績では、まだ20件そこそこですから、それでたくさんの実績がありますでは困りますね。
最低何件という目安はありますか?
A.個人的には、依頼者に対して劣化はどの程度か、修繕にはどういう方法があるか、さらに一歩踏み込めば、費用がどの程度かかるかなど、十分なアドバイスをするためには、100~200件程度は経験があるほうが良いと思います。

やはり20~30件では、不安な感じはしますね。 あとは、客観的なところですね。

去年、建物状況調査が始まって、いろいろな会社さんがインスペクションを始めましたが、当初は売主さんも不動産会社さんから説明があり、売主側で事前に建物状況調査をされている物件が増えました。

ところが、そのあと買主さんが建物状況調査の報告書を持って、相談に来られる方が多くなってきました。

せっかく売主さんが建物状況調査をしても、それが信頼できるかわからないということで、更に第三者に検査を依頼するわけですので、客観的・第三者性というのは、どれだけ信頼されているかだと思います。
不動産屋さんのお抱え業者さんは、インスペクションの客観性に欠ける可能性がありますか?
A.悪いことは、言わないようにしているのではないか、リフォーム会社さんのインスペクションの場合は、リフォームが必要なように偏った報告になっていないか気にされている方が多いです。

客観性があって信頼できる情報かどうかだと思います。 結局同じ建物に別の調査会社が入って一緒に検査するということもあります。

また、売主さんが行ったインスペクションが半年前だとして、半年間売れずにあらためて検査すると、半年間の突発的な事故や経年劣化がある場合があります。情報の新鮮さがポイントです。

例えば、1~2週間前の検査の場合は、台風が来ていないので良いかもしれませんが、3ヶ月前の検査だとその間に台風が来たとすれば、当初のインスペクションの報告書には雨漏りがないかもしれません。3ヶ月で状況は変わる可能性もあるのです。

業者さんの見分け方も大事ですが、インスペクションの情報はいつの情報なのかということも重要です。

まとめ

いかがでしたか?

リスクの少ない家にするには、施工中や購入前のホームインスペクションが重要だということですね。

マンションや中古物件のチェックポイント、業者の選び方についても丁寧に教えていただきました。

ホームインスペクションは、手抜き工事の牽制や今後の修繕時期を把握するためにも非常に役立ちます。

また、売却を検討している方にも住宅診断を考えてみてください。 買手は「安全な物件」を求めています。

ホームインスペクションで安全性を明示できれば、売れる物件へと価値を上げることができるはずです。

多くの人にとって、不動産取引は一生に一度の大きなイベント。

「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、ホームインスペクションを検討してみましょう。

 
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