「家を建てよう!」と思ったとき、家そのものと同じぐらい大切になってくるのが「家をどこに建てるのか?」という悩み。「このへんのエリアがいいなあ」「このあたりの価格なら手が届きそう」とぼんやり土地を選んでしまったがために、建てたかった家が建たないこともあるとか?!
家を建てるために注意を払うべき項目は多岐にわたります。中には思いもよらないようなトラブルや制限も!チェックリストを活用しながら漏れなく、のちのち後悔することのないように土地選びを進めていきましょう。
この記事では、
・家を建てる土地を探しているが、何に気を付ければいいのか不安
・親族の土地に家を建てるが、いちばんおトクになる相続税対策を知りたい
・できるかぎり近隣トラブルを避けたい
という方が少しでも「なるほど!」と思えるようにお手伝いしていきます。
新しく家を建てる土地を探す場合
「家を建てよう」と思ったとき、多くの方は「どこに建てよう?」と悩むのではないでしょうか。ここでは、どのように土地を選べばいいのか、そして、どのような土地は選んではいけないのかを解説していきます。
家を建てる土地を先に購入するのは、不正解?!
「よし、家を建てよう!」と思い立ったら多くの人は、
その次に「まず土地を探さなきゃ」と思うのではないでしょうか?
残念ながら、それは失敗しやすい家づくりのパターンです。
というのも、選んだ土地によっては、建てたかった家を建てられないからです。
どういうことでしょうか?
土地には「見えない決まりごと」が多くひそんでいる?!
土地には、どういった建物なら建てて良いのか定めている「用途地域」や、衛生・防災上の制限である「建ぺい率・容積率」、自治体の独自のルールなど、見えない決まり事がいっぱいひそんでいます。
これを知らずに土地を購入してしまうと、
本当は3階建てを建てたかったのに、「用途地域上、2階建てまでしか駄目」って言われた!
広い土地だと思って買ったのに、建ぺい率が低くて希望以下の広さしか確保できなかったの
といった悲しい家づくりになりかねません。
土地だけの購入では住宅ローンが使えない?!
多くの人は、家を建てる際に住宅ローンを利用すると思います。住宅ローンは、土地と建物両方を対象にしているので、通常土地だけの利用は認められていません。
とはいえ、特に注文住宅では、キャッシュで払えるという人以外はどうしても土地を対象にしたローンを利用せざるを得ません。
というのも、土地取得と建物の完成までにタイムラグがあることから、土地代の支払いが住宅ローン融資実行より以前に来てしまうからです。
この場合、多く使われるのが「つなぎ融資」です。ただし、これはたいてい金利が高く、返済額がかさんでしまいます。ほかには、「土地先行融資」や「分割融資」のような住宅ローンと併用したり、分割したりするようなローン商品も少ないながら存在します。
土地を入手してから家を建てるまでの期間が定められていることもあります。依頼先とよく相談しながら「知らなかった!」とならないように計画しましょう。
まずは建てたい家を考え、そのあとに土地と依頼先を決める
「まずは土地をおさえて、そのあとにゆっくり家づくりを考えよう」とすると、法制限上も、支払い上も希望が通りにくい可能性が高いということですね。
これを避けるには、「建てたい家はどんなものか?」を第一に考え、「それを叶えられる土地はどこか?」を探す順番にする必要があります。
より理想的には、家づくりの実行パートナーであるハウスメーカーや工務店等の依頼先も並行して探せると良いでしょう。設計士に建てたい土地を見てもらえれば、より細かくその土地についてみることができ、建てたい家に近づけることができます。
なによりもまず、自分が住みたい床面積を知るべし
日本全国にある膨大な空き地。まず自分がどのような条件で土地を探しているのかを整理しておくことが時間と手間の短縮につながるでしょう。
自分や家族に必要な家の広さとは?
そして、それをどのように算出し土地面積を割り出せばいいのか?
一緒に考えていきましょう。
建ぺい率と容積率についてまず知ろう
土地には、見えない決まり事がいっぱいひそんでいます。
そのうちの一つが、「建ぺい率」と「容積率」です。
建ぺい率と容積率については、こちらでも解説しています。
「建ぺい率」とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことです。
衛生上・防火上などの観点から、建物の大きさを制限しています。
第一種低層住居専用地域のなかでも歴史あるエリアや田畑の多いような場所では、建ぺい率30%と指定されている場所もあります。この場合は、たとえ土地が100平方メートルあったとしても、30平方メートルほどの一層の床面積しかとれないので、相当狭小な家を建てざるをえません。
「容積率」とは、敷地面積に対する建築延べ面積の割合のことです。
容積率も建ぺい率と同様に、建物の大きさを制限するものです。例えば、建ぺい率30%、容積率50%と定められている100平方メートルの土地ならば、一階を30平方メートル、二階を20平方メートルにしなければ容積率の制限をクリアできません。
建ぺい率・容積率は、用途地域や建物全面の道路幅によって変化します。
建ぺい率と容積率から、建てる家の大きさを考える
建ぺい率はどのように家の大きさに影響してくるのでしょうか?
たとえば、60坪の土地が売りに出されていても、その土地の建ぺい率が40%であれば、家を建てられる坪数は24坪しかありません。
仮に30坪の土地であっても、建ぺい率が80%なら同じ24坪の家を建てらえることになります。
このように、土地の面積が60坪でも30坪でも、建ぺい率の制限次第では同じ程度の大きさの家になってしまうのです。建ぺい率が高いことのデメリットは、庭や駐車場などのスペースが少なくなることですが、もし庭やマイカーを持たないのであれば、30坪の土地であっても十分検討に値するでしょう。
容積率も同様です。
60坪の土地で容積率60%の場合、全フロア合わせて36坪程度の家までしか建てることができません。ところが、30坪の土地で容積率150%ならば、全フロア合わせて45坪まで確保することができます。
土地探しにおいては建ぺい率・容積率も見逃せない情報だということが分かります。
小さいと感じる土地であっても、建ぺい率・容積率次第で、想像以上の大きさの家を建てられる可能性があります。
固定資産税軽減条件から、家の大きさを考える
固定資産税は、所有している現在の土地や家に対しての税金です。
固定資産税はその土地や家の評価額×1.4%で計算されます。
土地や家の評価額には、当然広さも関わってきます。
一般的に、土地や建物が小さいほど評価額は下がるので、固定資産税も減らすことができます。
住宅用地ならば、200平方メートル以内の土地は固定資産税が6分の1に減額されます。
これ以上の土地ならば、3分の1に減額されます。
建物の床面積が50平方メートル~280平方メートルならば、固定資産税は2分の1に減額されます。一般的な住宅であればほぼこの範疇に収まるでしょう。
もし土地の面積について悩んでいるのであれば、固定資産税を最も安く抑えられる200平方メートル以内で、建ぺい率・容積率の低すぎない土地を購入するのが一つのテクニックと言えます。
家を建てる土地探しで注意するべきチェックリスト
土地探しにおいては、注意するべきポイントがとても多くあります。
通勤・通学経路などのアクセス、環境、エリアや土地の様子などを見るだけでなく、法制限や登記などについてもしっかりチェックしていきましょう。
法制限 | 用途地域は何か。建ぺい率や容積率はいくつか。4m幅以上の道路に2m以上接しているか(接道義務)。セットバックはないか。自治体による景観制限がないか。 |
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登記と実際の差 | 登記されている測量図の坪数や方位は実際と異なっていないか。 |
権利トラブル | 抵当権は消えているか |
「建築条件付き土地」というくせ者
「建築条件付き土地」は、「注文住宅」と「建売住宅」のちょうど中間のような家づくりの方法です。
建築条件付き土地を購入すると、決められた建築業者とプランを話し合って建物を建てることになります。プランニングの自由がありながら注文住宅ほど業者選びや手続きが煩雑ではないことがメリットです。
ただし、決められた建築業者に不満があっても変更できなかったり、プランニングにじっくり時間をかけられなかったり、そもそもプランニングの幅自体もいくつかの選択肢から選ぶだけでほとんど建売に近かったりする場合もあります。
「建築条件付き土地」を購入する際には、自分の建てたい家づくりができるのかどうか詳細に確認し、確認した事項はすべて書面で残しておくことがのちのちのトラブルを避けるコツです。
個人取引の場合は、調査が必須
一般の人が土地を購入する場合、大きく分けて二つのパターンがあります。
一つは、不動産会社が販売している分譲地を購入する場合です。
この場合は、道路や上下水道、電気、ガスなどのライフラインが整備されていることがほとんどで、買いやすいと言えるでしょう。
もう一つは、個人が売り出している土地を購入する場合で、こちらは注意が必要です。
個人が所有している土地を、仲介会社を通じて売り出しているようなケースでは、現状ありのままの引き渡しとなる「現況取引」が原則です。購入前には、土地がどのような状態であるのかをしっかり把握する必要があります。通常は仲介会社が調査しますが、買い主としてもしっかりと確認・把握することが必要です。
いい土地が見つかっても油断できない、近隣トラブル
ずっと探し続けて、ようやくいい土地を見つけたんだけど、なんだか隣の人がちょっと怖い感じなんだよね。気にしすぎかなあ
土地と同じぐらい重要かもしれないのが、近隣の様子。一度家を建ててしまえばなかなか引っ越すことは簡単ではありません。住み始めてからトラブルに発展するのは避けたいもの。
近隣の様子は、土地探しの段階でしっかり確認しておきましょう。
「引っ越しを検討しています」と言って、近隣の人に話を聞くと良いでしょう。
もっと具体的に隣の家の様子を知りたい場合は、「以前に近隣トラブルがあったので気になって。○○さんはどのような方ですか?」と直接聞くのもアリです。
「ここに住むかもしれない」と言えば、たいていの人は親切に教えてくれるでしょう。
古い家が多いエリアで、引っ越したら自治体の役員をやらされることになったんだけど
人付き合いが好きならば良いのですが、そうでない場合、自治体の雰囲気も聞きこんでおくことが大事です。特に古くから家のあるエリアでは自治体や消防団が大きいことがあり、苦手な人は注意が必要です。
共有のブロック塀が古いから新しく作り直さなくちゃいけないんだけど、隣は留守が多くてなかなか話し合いが進まず、困ってるよ
土地境界上に共有のブロック塀があるような場合、近隣と協力して話し合いを進める必要があります。ただし、どちらか一方が非協力的だと話が進まず頓挫してしまいます。
近隣とは普段から挨拶などコミュニケーションをとり、必要な際には協力しあうことはどこの土地でも最低限必要でしょう。
もし実際にトラブルが起こってしまい、自力での解決が難しいようなら、まずは自治体などの第三者に相談してみることがいいでしょう。
警察相談専用電話「#9110」でも、近隣トラブルの相談を受け付けています。
家を建てる土地がすでにある場合
「親が持っている土地に建てていいと言われている」「両親の家を建て替えて二世帯住宅を建てる」といったような場合はどうでしょうか?
この場合、土地探しや土地代について考えなくてよい分、手間がかからないように思えます。しかし、この場合は土地の整地や名義・相続といった、新規取得にはない面倒がある可能性があります。
親族の土地に家を建てる「使用貸借」
例えば、自分の父親名義の土地に自分の名義で家を建てることはできるのでしょうか?
これは、可能です。
ただし、いくつかのパターンがあります。
よくあるのは、使用貸借(たいしゃく)、すなわち「無償で土地を借りる」こと。
通常は親子兄弟や友人知人などの特別な間柄で信頼関係に基づき行います。
建物が通常利用できる間は住み続けることに問題はありませんが、借り主が死亡した場合その効力を失い、土地利用の権利を失ってしまうことになります。
例えば、義実家名義の土地に夫が家を建てていた場合、夫が死亡した際に妻はこの使用貸借契約を相続できません。もし住み続けるならば、改めて使用貸借もしくは賃貸借を結びなおす必要があります。
家を建てるのに住宅ローンを組む場合には、親が連帯保証人になることが必要になるケースがほとんどです。ただし、土地の支払いが残っているなどで抵当権がまだある場合は、金融機関によってはローン融資を断られることがあります。
土地利用について普通借地契約を結ぶなどして「賃貸借」にする方法もあります。
この場合、あまりに安い金額設定にすると贈与とみなされ贈与税を課税されてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
親族の土地に家を建てるのに、一番お得な相続税対策は?
親族の土地に家を建てる場合に悩ましいのが、「このまま親族の名義で家を建てて相続を待つか、それとも家を建てるのと一緒に買い取ったり贈与されたりするべきか」という問題です。
家を建てるにあたっては、住宅取得等資金の非課税など、親からの援助について優遇される施策がありますが、土地そのものについては適用されません。
なので、税制対策ならば、贈与税よりも相続税の方が控除額は多いので、「親族の名義で使用貸借にしておいて、相続を待つ」が最も節税になる可能性が高いでしょう。
■相続税の控除額
基礎控除3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)
父母どちらかが生存の場合の配偶者控除 1億6,000万円まで、または法定相続分のいずれか多い金額まで非課税
■贈与税の控除額
通常 年間110万円
相続時精算課税制度利用の場合、2,500万円まで非課税
土地を整地する
土地の整地を行わなくてはいけない場合はどうでしょうか。
古い住宅を解体したガラや瓦礫が残されており、撤去を行わなくてはいけないような場合、その費用は大きさによって高くかかってしまう場合があります。
量が多いと、撤去後地面がへこんだり地盤が緩んだりすることもあり、地盤改良工事が必要になることもあります。この場合は、工事費が100万円を超えることもあります。
解体業者に依頼した場合、解体・整地完了後に工費が請求されるため、ローン等が使えないことにも注意が必要です。
状態によりますが、先に家を建てる施工業者を決めてしまい、解体や整地とセットで工事してもらうことがオススメです。
家を建てるのにかかる費用の全貌はこれ
「どのような家を建てよう?」「どこに家を建てよう?」といった構想を練るのと同時に考えなくてはいけないのが費用について。
何にどれだけかかってしまうのか? ローンの返済はどうなるのか? 自分の収入に見合った家の規模はどのぐらいなのか?…
など、始めのうちはわからないことだらけでしょう。ここでは、家を建てるための費用についての「基本のき」を押さえていきましょう。
家を建てるための全費用
家を建てる費用は大きく分けて、土地代と建物代に分けることができます。
建物代は、本体の工事費とは別に、エアコンや外塀などのオプションである付帯工事費や、手続きや登記に必要な諸経費がかかります。
家を建てる費用と収入の平均と相場
「自分の収入では、どのぐらいの家を建てられるものなのだろう?」という疑問がある方は、下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
家を建てる予算別 建てられる家の特徴はコレ!
国土交通省によれば、平成30年度、注文住宅の総工事費(土地代を除く)は、全国で平均3,205万円でした。とはいえ、最近では1,000万円台で建てられるローコスト住宅も珍しくありません。
1,000万円から4,000万円までの費用別の住宅の特徴について、こちらで解説しています。
ローコスト住宅については、こちらの記事にまとめています。
まとめ
家を建てる土地選びで気を付けたいポイントについて解説しました。そのままズバリ家づくりの基礎となる大事な場所選び。入念に下準備をして、納得感ある家づくりのスタートを切りましょう!
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