このページは、法人で不動産の売却を担当している方向けのページとなります。また、複数の不動産をお持ちで節税を検討されている個人の方も一部対象としています。
会社法人が土地やマンションなどの不動産売却を行う際に発生する税金ついて初心者でも理解できるよう分かりやすく解説しています。
事業者として、不動産の売却を予定されている方は、ぜひ、最後までご覧ください。
不動産の所有期間によっては、個人よりも法人化することで課税される税金が少なくなります。
まずは、個人が法人化した場合、個人と法人とでは、税金がお得になるのかを比較したいと思います。
個人が所有する不動産の譲渡所得(利益)に対して所得税と住民税がかかります。不動産売却においては、1棟だけ売却した場合は単独で課税されますが、2棟以上を同一期間で売却した場合、合算してプラスの場合のみ課税されます。
しかし、給与所得や事業所得等の他の所得との損益通算は一切できません(分離課税と言います)ので注意が必要です。また、その他の資産(株式やゴルフ会員券)も不動産の譲渡所得とは切り離して独自で計算します。
不動産は不動産だけで譲渡所得(利益)を計算します。
個人が所有する不動産を売却する際の税率は、所有期間によって変わります。譲渡する年の1月1日時点の所有期間が5年境に税率が以下となります。
■短期譲渡所得、長期譲渡所得の税率
所有期間 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
5年以下 | 30.63% | 9% |
5年超 | 15.315% | 5% |
※上記に復興特別所得税を含めています。
5年以下、5年超を比較すると税率が倍近く変わります。
更に所有期間10年超の場合、更なる軽減税率が適用されます。
アザラシ先生
購入日が20××年7月31日だったします。その6年後の12月31日に売却では保有期間が5年5か月となり長期譲渡所得かと思われるかも知れませんが、計算上は売却のあった年の1月1日で見ます。計算上は4年11か月となります。税率は39.63%となります。
一方、20××年7月31日に購入して売却が6年後の1月31日だった場合、保有期間が5年6ヶ月となりますが、売却した土地の1月1日現在では保有期間が5年超となるため、税率が20.315%となります。
アザラシ先生
■所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率
所有期間 | 所得税 | 住民税 | |
---|---|---|---|
10年超(居住用不動産のみ) | 課税譲渡所得6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% |
課税譲渡所得6,000万円超の部分 | 15.315% | 5% |
※上記に復興特別所得税を含めています。
アザラシ先生
次は法人の場合ですが、個人とは違い短期長期の区別はなく、譲渡益(売却益)に対して法人税が課税されます。
一方、法人の法人税率は以下となります。
■法人税率の推移
開始事業年度 | 平成27年4月1日 | 平成28年4月1日 | 平成29年4月1日 | 平成30年4月1日 |
---|---|---|---|---|
普通法人(資本金1億円超) | 23.9% | 23.4% | 23.4% | 23.2% |
資本金1億円超の企業の税率は、平成27年度が23.9%、平成28年度が23.4%、平成29年度が23.4%、平成30年度が23.2%、となっており徐々に引き下げされています。
次に資本金1億円以下の中小法人です。
中小法人(資本金1億円以下) | 所得金額が年800万円以下 | 15.0% |
---|---|---|
所得金額が年800万円超 | 23.2% |
税率だけでみると所有期間5年以下であれば、法人として売却した方が良さそうですし、逆に10年超であれば個人として売却した方が良さそうです。
しかし、税率だけでは判断できませんので、個人、法人それぞれの良い点や悪い点を解説します。
実は、マイホームなどの居住用財産を売却すると「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が適用されます。
この特例は所有期間に関係なく、売却による譲渡益が3,000万円以下であれば、税金が発生しません。
特例を使えば売却益3,000万円以下なら税金が発生しません。
※特例を利用する際は確定申告が必要です。
個人が不動産を売却すると、不動産や株式を売却した場合、分離課税で計算し、本業の所得(サラリーマン等)とは切り離して計算します。
例えば個人の所得の種類は10種類に区分できます。
■所得の種類
事業所得 | 事業から生じる所得 |
---|---|
給与所得 | 給与や賞与から生じる所得 |
退職所得 | 退職から生じる所得 |
利子所得 | 預貯金などの利子から生じる所得 |
配当所得 | 株式の配当などから生じる所得 |
不動産所得 | 不動産の貸付などから生じる所得 |
山林所得 | 山林を売却したなどから生じる所得 |
譲渡所得 | 家庭用の資産売却などから生じる所得 |
一時所得 | 保険満期金などから生じる所得 |
雑所得 | 上記9種類に含まれない所得 |
不動産を売却して得られた利益は上の「譲渡所得」に該当しますが、売却の際に損失が発生しても不動産は「分離課税」のため、給与所得などと相殺することができません。
※個人が不動産を2件以上売却して1件は「売却益」、もう1件が「売却損」の場合は相殺(損益通算)可能です。
一方、法人は、事業毎の損益計算の区別はせず、他事業との損益を合算して計算します。不動産売却で得た損失を他の事業利益から控除して、それでも損失が残る場合は青色申告をしていれば9年間にわたって欠損金の繰り延べが可能になります。
つまり、法人は収入の区別に関係なく、不動産売却や事業で得た全ての収入と経費を合算して所得金額を計算します。しかも、税率も一律です。
事業年度内であれば、本業や不動産売却などの臨時の損失と相殺できるため、使い勝手や欠損金の繰り延べのしやすさで見ると法人の方が有利だと言えます。
先の解説の通り、法人は事業毎の損益の区別はしません。不動産売却においても譲渡日(売却日)が決まったら経費がいくらかかったのか?を経理処理します。
個人同様、法人が不動産売却した際では仲介手数料、印紙税、登記を行う際の登録免許税が経費となります。
他の事業で得られた収益を全て合算して、経費を引いた所得金額に税率を掛けます。
課税所得金額=(不動産売却益+他事業の収益)-経費
法人税=課税所得金額×法人税率
しかも、資本金1億円以下の法人税率は23.2%です。年800万円以下の部分については、15%の軽減税率が適用されます。例えば軽減税率を適用した場合の法人税は以下となります。
■所得金額が2,000万円の場合(資本金1億円以下の中小法人)
800万円×15%=120万円⇒120万円所得金額が800万円以下の税率
(2,000万円-800万円)×23.2%=約278万円⇒所得金額が800万円超の税率
120万円+約278万円=約398万円
また、所得金額がなく、マイナスの場合は、課税されません。このマイナスを欠損金と言いますが、欠損金が出た場合、翌期以降の所得から差し引くことができます。
しかも先に解説しました通り、欠損金は9年間有効ですので、今期の所得から控除しきれれず余ってしまった場合でも翌期以降に繰越して控除することができます。
しかも、資本金1億円以下の中小法人については、法人税を納付した翌期以降に欠損金(マイナス)が出た場合、既に納めた法人税が還付される欠損金の繰戻し還付という制度があります。
法人が不動産を売却すると前述の収入と経費の考え方、さらに売却日の考え方も、個人と法人では異なります。
不動産売却では以下の手順で売買されます。
では、「不動産が売却された日(譲渡日)」はいつになるのでしょうか。法人税では、不動産の売却日は以下のように定められています。
原則 | 不動産が引き渡された日 |
---|---|
特例 | 不動産の売買契約締結日 |
つまり、上記手順の「1.売買契約の締結」あるいは「3.売買代金の残代金の支払いと同時に物件引き渡し」どちらかで処理を行えば良いことになっています。
これは、1と3の手続き日が違う事業年度になる場合、売却日をいつにするか?で利益や税金が変わってきます。
個人が不動産を売却しても法人同様、経費と認められるものがあります。
物件購入時の取得費や売却時の譲渡費用です。取得費や譲渡費用の代表例が法人同様、仲介手数料、印紙代、登記費用などです。
売却で得られた売却益(課税譲渡所得)を計算して、所有期間毎の税率を乗じることで税額を計算します。
個人の不動産売却日は、土地・建物を譲渡した日は、「引き渡し日」と「売買契約締結日」のどちらか好きな方を選択できます。
例えば先に解説しましたが、「引き渡し日」を選択した場合は長期譲渡所得、「契約日」を選択した場合は短期譲渡所得となり、税率が39.63%と20.315%で約2倍違うことから、税金額も2倍変わってくることになります。
原則 | 引き渡し日or売買契約締結日どちらか好きな方が選択可能 |
---|
個人の不動産売却に対して消費税は発生しません。
不動産売却において消費税はあまり意識されませんが、しっかり課税されますので法人担当者の方はぜひ覚えておいてください。
消費税の納税義務は事業者となるため、課税事業者である法人や個人事業主が不動産を売却すると買主から預かり消費税を受け取ります。
なお、個人事業主ではない、個人は事業者ではないため、消費税が課税されることはありません。
消費税は、「消費する」という行動に税金が課税されます。「消費する」とは「物を購入する 」「情報などのサービスを受ける」などの行為を指します。税金の負担は法人・個人に関係なく消費行動した「消費者」となります。
実際には、税金を徴収した会社が納付することになります。
実は、法人が不動産売却する際に消費税が課税されます。課税されるのは建物だけで、土地は課税されません。
例えば、譲渡価格4,000万円の物件における消費税は、320万円ではありません。譲渡価格4,000万円のうち土地2,400万円、建物1,600万円だとしたら、消費税は128万円(1,600万円×8%)となります。
不動産売買の現場では、土地+建物を分けた価格で計算する場合もありますが、「総額」で取引されることも多いです。
特に収益用賃貸物件の場合は、利回りで割った収益価格で取引されることも多いので、土地と建物内訳が不明な場合がほとんどです。
このため、消費税を計算するため土地建物の内訳を総額から振り分ける必要あります。
消費税を計算する上で代表的な計算方法ご紹介します。
土地の固定資産税評価額と建物の固定資産税評価額の比率によって按分します。
不動産 | 固定資産税評価額 | 割合 |
---|---|---|
土地 | 2,400万円 | 60% |
建物 | 1,600万円 | 40% |
土地建物合計 | 4,000万円 | 100% |
実際の売却価格が総額で5,000万円だったとします。
では実際に計算してみましょう。
建物価格=売買価格×建物の固定資産税評価額
2,000万円=5,000万円×40%
土地価格=売買価格×土地の固定資産税評価額
3,000万円=5,000万円×60%
この時、建物については消費税が含まれていると考え、税率で割り戻すことで税抜きの建物部分の本体価格を算出します。
建物本体価格=建物価格÷消費税
1,851万円≒2,000万円×1.08
よって総額5,000万円の物件の消費税は以下となります。
消費税=建物価格-建物本体価格
149万円=2,000万円-1,851万円
実は、この固定資産税評価額は、建物価格を計算するための一つの方法として認められているに過ぎません。別の方法で算出することも可能です。
最初に建物または土地の適切な時価を求めて売買価格から建物または土地を差し引いて計算する方法です。
この方法は、比較的簡単ではありますが、適正価額と売買価格に開きがある場合、合理的とは言えません。
不動産鑑定士に依頼して鑑定評価額を算出してもらう方法もあります。不動産鑑定士に依頼すれば、数十万円程度の報酬が発生しますので、悩みどころではあります。
前述の通り、土地については、消費税は課税されませんが、建物は課税されます。このため建物代金をいくらにするかの問題が発生します。
法人が不動産を売却する場合は、税込み価格での売却は避けましょう。
特に築年数が古い不動産の場合は注意が必要です。
次は、法人が不動産売却した際の仕訳について解説します。
以下の不動産取引を例に解説します。
価格 | 3,000万円 |
---|---|
手付金 | 400万円 |
残代金 | 2,600万円 |
法人が所有する不動産を3,000万円で売却しました。契約時に400万円の手付金を普通預金の振込で受け取りました。
その後、決済時に2,600万円残代金を普通預金の振込で受け取りました。
建物帳簿価格2,100万円、土地帳簿価格800万円、期首からの減価償却費100万円。譲渡日は物件引き渡し日とします。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 400万円 | 前受金 | 400万円 |
減価償却費の仕訳
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | 100万円 | 建物 | 100万円 |
建物は期首から売却日までの減価償却を行います。
これによって、建物価格は、2,000万円になります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
前受金 | 400万円 | 土地 | 800万円 |
普通預金 | 2,600万円 | 建物 | 2,000万円 |
固定資産売却益 | 200万円 |
売却時の仕訳では、手付金(前受金)400万円を精算します。譲渡益は、「固定資産売却益」などの科目で処理します。
不動産物件をそれなりに保有しており、不動産の売却もそれなりにある方は、法人成りすることで節税につながる可能性があります。
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