自己破産する人が自宅などの不動産を所有していると、「破産管財人」が選任されて不動産を売却されるケースがあります。
そもそも「破産管財人」とはどういった人なのでしょうか?
どのようなケースで選任されるのか、破産管財人による不動産売却の流れや注意点などの必要な知識をご紹介していきます。
【執筆・監修】元弁護士 ライター
福谷陽子
そもそも破産管財人とは何なのでしょうか?
破産管財人は、破産の手続きの中で破産した人(破産者)の財産を管理・売却して現金に換え、債権者に平等に配当する人です。
自己破産すると破産者の財産の多くは没収されて債権者に分配されますが、そのための具体的な作業をするのが破産管財人です。
破産者が不動産を所有している場合にも、破産管財人が処分して配当に回します。
自己破産には2種類の手続きがあり、管財人が選任されるのはそのうち「管財事件」のみです。
同時廃止は、財産が少ない方やギャンブルなどの問題行為のない人が破産するときの簡単な破産手続きです。同時廃止の場合、破産管財人は選任されません。
管財事件は一定以上の財産がある人や、ギャンブル・浪費などの問題行動がある人が破産するときに選択される複雑な破産手続きです。管財事件になると必ず破産管財人が選任されます。
同時廃止になるか管財事件になるかは、「破産手続き開始決定」の際に裁判所が判断します。管財事件になったら、破産手続き開始決定と同時に裁判所が破産管財人を選任します。管財人として選任されるのは、地域の弁護士です。
自己破産するときに破産管財人が選任されるのはどういったケースなのか、もう少し詳しくみてみましょう。
破産者に一定以上の財産があると、その財産を現金化して債権者に配当する作業が必要です。そこで必ず破産管財人が選任されます。
現金であれば99万円を超える場合、その他の資産の場合にはそれぞれ20万円を超える財産を所持していると管財事件になります。不動産を所有している場合には多くのケースで管財事件となります。
自己破産には「免責不許可事由」という制度があります。免責不許可事由があると借金を免除してもらえません。たとえば有名なところでは、浪費やギャンブルによる借金が多額な場合「免責不許可事由」となって借金が免除されません。
自己破産を申し立てたときに破産者に重大な免責不許可事由があると、本当に免責して良いか慎重に判断しなければならないので観察のために破産管財人が選任されます。
破産者が不動産を所有しているときには、基本的に破産管財人が選任されて管財事件になると考えましょう。不動産は通常価値が高く、20万円を超える資産性を持つからです。
不動産の所有者が自己破産すると、破産管財人が不動産関係の資料(登記識別情報やカギ、契約書など)を預かって不動産を債権者に売却します。
不動産を所有していても、破産管財人が選任されないケースもあります。それは、大幅なオーバーローンの場合です。住宅ローンの残ローンが家の価値を大幅に上回っている場合、家を売却しても全額ローン返済に充てられるので、債権者に返済する資金にはなりません。そこで破産管財人が不動産を売却する意味が無いので、管財事件にはならず同時廃止となります。
管財事件にするかどうかの判断基準は、「住宅ローン残高が評価額の1.5倍以上」かどうかです。残ローンが家の価値の1.5倍以上なら、どんなに高く売れても残ローンを完済できる見込みが小さいので、同時廃止になります。反対に、残ローンがそれより少なければ配当の見込みがあるので管財事件となります。
同時廃止になるか管財事件になるかは、破産者にとって非常に重要です。同時廃止の方が、費用も安く手続きも簡単になるので圧倒的に楽だからです。
同時廃止にするには「家の査定をなるべく低くする」ことがポイントです。査定額が低くて住宅ローンを大幅に下回れば同時廃止にしてもらえるからです。
自己破産するときには、複数の不動産会社に査定依頼を出して、一番低い評価をつけた会社の査定書を裁判所に提出しましょう。
家の評価額を少なめに見積もり住宅ローン残高の3分の2以下に収まれば同時廃止にしてもらえる可能性が高くなります。
同時廃止と管財事件は、以下の動画でも詳しく解説しています。
3分程度で全て理解できますので、ぜひご覧ください。
自己破産をすると、破産した人の不動産は必ず失われます。このことは、管財事件でも同時廃止でも同じです。ただし不動産がなくなるまでの流れは管財事件と同時廃止で大きく異なるので、以下でご説明します。
破産者が不動産を所有していて管財事件となった場合、破産管財人が不動産関係の資料を預かって不動産を任意売却します。家が売れたら破産者は早急に立ち退かなければなりません。
同時廃止になった場合、破産管財人は選任されないのでしばらくは家に住み続けることが可能です。しかしこの場合でも、住宅ローンを返済しないために住宅ローン債権者が「競売」を申し立てます。すると家が強制的に売却され、破産者は結局家を追い出されてしまいます。
競売前に債務者本人が家の任意売却を進めることも可能です。管財事件なら破産管財人が行う不動産売却の作業を債務者本人が進めるイメージです。
ただ任意売却にしても売れた時点で家はなくなりますし,どちらにしても最終的には家を退去する必要があります。
管財事件となって破産管財人が不動産を売却する場合、どのような流れで売却手続が進められるのでしょうか?
自己破産を申し立てると裁判所で「破産手続き開始決定」があり、速やかに破産者と破産管財人が面談を行います。
面談時、破産者は破産管財人に不動産の全部事項証明書、登記識別情報やローン返済計画書、売買契約書、カギなどの関係資料一式を渡します。
破産管財人が不動産を売却するために、不動産会社に依頼して不動産の査定をとります。
破産管財人は、不動産の査定書をもってローン借入先の金融機関に「任意売却」の相談をします。
任意売却とは不動産ローンがあるときに、ローン債権者と債務者が協力して不動産を市場で売却する方法です。
不動産ローンがあるとローン債権者は不動産に「抵当権」を設定しているので、外してもらわないと売却できません。そこで売却に際し、事前に金融機関の承諾が必要になります。
一方、任意売却は金融機関にとってもメリットがあります。一般的に競売よりも任意売却の方が不動産は高額で売れるので、残ローンを多く返済してもらえるからです。
そこで、破産管財人の提示した査定額が妥当と判断すれば金融機関は不動産の任意売却に納得します。
金融機関が不動産売却について承諾をしたら、破産管財人が不動産の売却活動を進めます。
査定を出した不動産会社との間で不動産売却についての媒介契約を締結し、売出しを行って買主を募ります。
買主が見つかったら破産管財人の名義で「不動産売買契約」を締結し、手付金の受け渡しなど行います。
これらの一連の作業はすべて破産管財人が行うので、破産者本人は何もしなくてもかまいません。
売買契約の締結が済み、買主のローン審査なども終わったら「決済」を行います。決済時には残代金の支払いや固定資産税・マンション管理費の精算、カギの受け渡しや所有権移転登記などを行います。決済場所は多くの場合、買主のローン借入先の銀行です。
また決済当日には破産者本人も立ち会う必要があります。事前に弁護士から日程の連絡があるので、予定を空けておきましょう。
決済が終わったら不動産は正式に買主のものとなり、不動産売却手続が完了します。
破産管財人が不動産を売却したとき、売却金がどうなるのかも確認しておきましょう。
不動産に「ローン」がついていない場合、売却金は各債権者に平等に配当されます。このときの配当割合は、基本的に「債権額」に応じた割合です。
不動産にローンがついている場合、ローン債権者は不動産に「抵当権」を設定しているので他の債権者に優先して売却金を受け取れます。破産管財人が不動産を売却したお金は、基本的にローン返済に回されます。
ローンを完済してあまりがあれば、他の債権者に平等に配当されます。
破産管財人が不動産を売却したとき、破産者本人に入ってくるお金は基本的にありません。ただし決済時にまだ破産者が家に住んでいる場合、引っ越し代として30万円くらいを破産者に渡してもらえるケースが多くなっています。
通常、不動産を売却すると不動産会社の仲介手数料やもろもろの費用がかかります。
破産管財人が売却する場合、これらの費用は不動産の売却金から差し引かれるので破産者本人が用意する必要はありません。
ただし破産管財人が選任された時点で、破産者は既に高額な予納金を裁判所に支払っています。このことについては次の項目で詳しく説明します。
破産管財人が不動産を売却するときには以下のような注意事項があります。
破産者に不動産があると破産管財人は、通常住宅ローン債権者の許可をとって任意売却を進めます。
しかしいつまでも売れない場合、金融機関がしびれを切らして「競売」を申し立てる可能性があります。そうなったら家は任意売却より安い金額でしか売れません。
また裁判所の執行官や不動産会社などが家の様子を見に来たりして、近隣に不審に思われるケースもありますし、引っ越し費用も出してもらえません。
自己破産では管財事件になると高額な予納金が必要です。予納金とは破産管財人に動いてもらうための費用です。予納金は最低20万円であり、破産者に大きな負担となります。
自己破産時に高額な予納金の支払いを避けるためには「同時廃止」にする必要があります。
住宅ローンの残ローンが不動産評価の1.5倍以上なら同時廃止になりますが、その場合以外でも破産申立前に自分で家を「任意売却」しておくと同時廃止になる可能性があります。
たとえば残ローンが2000万円、家の査定額が1900万円の場合、そのまま破産すると管財事件となります。
一方自分で売却してローン返済に充て、諸費用等も引いて残ローンが70万円になった場合には、不動産所有者ではなく所持金も少ないので同時廃止で処理してもらえます。
不動産担保ローンを利用しており、住宅ローン以外の抵当権がついているケースでも注意が必要です。
この場合、住宅ローン債権者だけではなく2番抵当権者も納得しないと不動産を売却できないからです。
基本的に破産管財人が不動産担保ローンの債権者と話し合いをして「はんこ代」を渡して抹消に応じてもらいますが、話し合いができない場合には「担保権消滅請求」という方法で強制的に抵当権を抹消させます。
この手続きは破産管財人が行いますが、破産手続きが複雑化して長びく要因となるので、知識として知っておきましょう。
破産者が不動産を所有している事案では、破産管財人が不動産を売却するのが基本です。
ただ事前に自分で任意売却しておくと、管財事件にならず費用も労力も節約できる可能性があります。
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