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投資における利回りは最も重要なポイントで、それは不動産投資でも同様です。
現在、不動産投資で利回りと聞くとアパートマンション賃貸経営の表面利回りを思い浮かべますが、他にも様々な視点から見た利回りが存在します。
本項ではそれらの不動産投資利回りを4つの視点から深堀します。
これらを少しでもお考えなられたことがあるなら、当ページがお役に立つと思います。
利回りとは元金に対するリターンの割合を示します。
例えば、100万円を預金し1年後に3万円の利息を受け取ったとすれば、その預金の利回りは年率3%となります。株式投資においても年間配当に対する利回りが重要な指標の1つとなっています。
マンション投資においても物件を選ぼうとする場合、複数の物件を比較する際の重要な判断基準として利回りが用いられています。最も基本的な利回りとして使われる表面利回りの計算方法は以下の通りです。
表面利回り=(年間家賃収入÷物件価格)×100
表面利回りは物件情報によく記載されている利回りで、年間家賃収入を単純に物件の購入費用で割った数値になります。 表面利回りの計算例は以下の通りです。
年間家賃収入10万円×12=120万円
物件価格 =2,500万円
表面利回り=(年間家賃収入÷物件価格)×100
表面利回り=120÷2,500×100=4.8%
表面利回りに対して実質利回りはより現実に近い指標と言えます。
というのは、実質利回りは年間家賃収入から固定資産税・火災保険料・各種管理修繕費・その他手数料などの経費を差し引いた金額をベースに計算するからです。
したがって、実質利回りはより正確に物件の収益力を示す指標として日常的に使われています。実質利回りの計算方法は以下の通りです。
実質利回り=(年間家賃収入-年間支出)÷物件価格×100
年間家賃収入10万円×12=120万円
物件価格 =2,500万円
表面利回り=(年間家賃収入-年間支出)÷物件価格×100
表面利回り=(120-35)÷2,500×100=3.4%
表面利回りと実質利回りの違いは上記の通りですが、より実質利回りを不動産の収益性実態に即して計算するのがNOI利回り(純利回り)です。
NOI(純利回り)とは英語のNet Operating Incomeの略で、会社の業績数字で言えば営業純利益に相当します。
そして、実質利回りとNOI(純利回り)の最も大きな違いは、満室状態での想定家賃収入に空室となる比率を加味しさらに維持管理費などの支出を差し引いたあとの実質的な収益を表すことができることです。
現実的に空室率が0%のアパートマンションはあり得ませんから、NOI(純利回り)はより収益性実態に即していると言えます。NOI(純利回り)の計算式は以下の通りです。
NOI利回り={1年間の満室家賃収入×(1-空室率)-1年間の維持管理経費)}÷(不動産の購入価格+不動産の購入にかかる諸経費)×100
このNOI(純利回り)はNOI利回りやネット利回り・純利回りなどと言われることもあります。
空室率 | 特定時点での空室率:空室戸数÷全体戸数 年間の空室率:(空室戸数×空室期間)÷(全体戸数×365日) |
---|---|
物件維持管理経費 | 固定資産税・管理費・設備修繕費用・火災保険料・マンション共用部の光熱水費・入居者募集費用・退去費用 |
購入諸経費 | 不動産取得税・仲介手数料・登記費用 |
長引くゼロ金利状態の中で、何もしなければマネーは少しずつ目減りしていきます。そこで、投資に打って出てマネーの目減りを食い止めたい訳ですが・・・
過去の都心部の区分マンションの平均利回りを見てみますと、新築マンションで4%後半~5%前後・築20年までの中古マンションで5%~6%半ば・築20年から35年の中古マンションで7%~10%という数字です。
また、都心部の木造戸建て物件の平均利回りは新築で5%~6%前後・中古で 6%~8%という感じです。
ただ、これらはあくまでも平均値で築年数が経過した古いマンションや戸建てでも、リフォームやリノベーションを施して物件の価値を高めれば家賃を高く設定できるため利回りは高くなります。 また、以下の通りエリアによっても利回りの平均値は異なります。
札幌 | 5.9% |
---|---|
東京 | 3.5% |
横浜 | 5.0% |
名古屋 | 5.1% |
大阪梅田 | 4.7% |
福岡 | 5.2% |
現在、主な不動産各社は顧客サービスとしてネットで利回りシミュレーションを行なっています。
特に、最近は不動産投資シミュレーションの分析ツールが以前よりも格段に進歩していますから、必要に応じて簡易収支キャッシュフロー・キャッシュフロー予想・税引き後利益・売却シミュレーションなどのシミュレーションを行なうことができます。
ただ、上記の利回りシミュレーションを行なっても、購入者の金利などの資金調達の条件や物件の構造や築年数による減価償却費の水準・賃貸稼働率などは異なります。したがって、それらにより税引き後の手取り金額は変わってきますので要注意です。その意味では以下の項目が必要なシミュレーションは、ある程度、信頼できるシミュレーションと言えます。
物件情報 | 物件価格 | 購入価格 |
---|---|---|
満室時想定年収 | 満室時の家賃総額 | |
想定空室率 | 想定される空室の割合 | |
諸経費率 | 固定資産税・管理費・修繕積立金・諸経費 | |
資金計画 | 自己資金 | – |
借入金額 | – | |
借入期間 | 3年~35年 | |
借入金利 | 年利 |
それでは、高利回りが期待できる物件とは、どのよう条件を備えた物件でしょうか?
まず、誰に聞いても出て来るのは空室率の低い物件を選ぶことが重要だということです。
どんなに良い物件で高い家賃を設定できたとしても、肝心の借り手がいなければ家賃収入を得ることはできません。したがって、駅近など立地の良い賃貸需要の旺盛な都心部の物件に投資することが優先条件と言えます。
もう1つのポイントはローン返済率と収益のバランスで、家賃収入に比べてローン返済額が大きいと利益が出ません。当初からその様な計画であれば問題ありませんが、空室率が上昇し利益が出ない場合は高利回りが期待できるはずもありません。
一方で高利回りでも要注意の物件も少なくありません。目先の利回りだけで飛びつくと大きな痛手を負うこともあるのです。
借地権物件 | 借地権付きの不動産は高利回りでも避けなければならない物件の筆頭 |
---|---|
旧耐震基準の物件 | 1981年6月以前に建てられた物件 |
管理状態が悪く管理費・修繕積立金が高い物件 | 賃を相応低く設定しなければならない |
遠方物件・事故物件 | 郊外や地方の物件・いわくつきの事故物件 |
災害リスクの高い物件 | 埋立地・湿地・海抜が低い場所・地盤が悪い 山沿い |
不動産投資で場所選びは最も重要なポイントであることは誰もが知っていることで、特に、場所とともにエリア・物件選びは投資の成否を決める胆の中の胆と言えます。
前の項でNOI(純利回り)は満室状態での想定家賃収入に空室となる比率を加味し、さらに維持管理費などの支出を差し引いたあとの実質的な収益を表すことができると説明しました。
つまり、NOI(純利回り)には空室率や固定資産税・管理費・設備修繕費用などの物件維持管理経費や不動産取得税・仲介手数料・登記費用などの購入諸経費を含みますが、借入をした場合の経費や返済利息は含まれていません。
多くの不動産投資においてはローンが使われているのが現実ですから、投資家の経営状態をより正確に把握するには借入の経費を含めた利回りの考え方も必要になってきます。
ただ、借入の経費を含めた利回りの考え方は外部に見せる必要は無い利回りで、投資家自身が把握していれば済む利回りと言えます。
現在は少し絞られている感じですが、不動産投資ローンの貸し出し上限は年収の20倍という基準が設定されています。
そのため上限に達していないかはまず審査で見られるポイントです。
また、想定以上の空き室の発生や急なリフォーム費用などに対応するには自己資金が必要になります。そのため、借金がないことはもちろんのこと、自己資金の有無や額も審査に影響すると考えられます。
そして、最も重要なポイントは投資物件の収益性ですから、収益性を見る上での実質利回りやNOI(純利回り)の数値は不動産投資ローンの審査では重要なポイントとなります。
以下、金融機関が投資物件の収益性を見る上での不動産投資事業の計画性のポイントです。
利回りがマイナスの事例として多いのが不動産投資ローンに頼った投資です。
例えば、首都圏郊外区分マンションの投資の事例で、購入金額 3,000万円(フルローンで購入)・年間家賃収入144万円・年間ローン返済額110万円 とします。この場合、入居者が家賃を払い続ければ、年間経費と年間ローン返済額を差し引いても何とか黒字経営は確保できます。
ところが、入居者が退去して空室になった途端にキャッシュフローがマイナスに転落することになります。また、入居者が退去して直ぐに次の入居者が決まるような健全な賃貸経営においても、現実的には家賃収入が入金されるまでに2~3ヶ月のタイムラグはつきものです。
したがって、不動産賃貸経営においては、利回りが低過ぎる物件や過大に不動産投資ローンに頼った投資は避けた方が良いということです。
不動産投資において利回りの高低で投資リスクが増減することはありません。
つまり、低利回りの物件の投資リスクが高いとか高利回りの物件の投資リスクが低いなどと見ることはできず、利回りと投資リスクに相関関係は認められません。
一方で、一般的には市場で取引される際のキャップレートという目安の利回りが存在します。言わば特定のエリアにおける目安の利回りがキャップレートと考えられます。そのキャップレートは以下の数式で求められます。
物件の価格=NOI(営業純利益)÷市場の利回り(キャップレート)
したがって、上記のキャップレートを使えば物件価格の割安・割高が解りますので、結果的に不動産投資リスクを把握することができます。
区分マンションの1室投資 | 新築3%~4%前後・中古6%前後 |
---|---|
アパートの1棟投資 | 新築6%前後・中古8%前後 |
戸建投資 | 新築8%程度・中古16%程度 |
現実問題として低利回り物件からオーナーは大きな利益を得られませんから、オーナーの賃貸経営が順調なはずはありません。その結果、オーナーは物件を保有し続けることができなくなりオーナーチェンジを招くことになります。
一方で賃貸経営を目指す投資家が手軽に購入できるのはオーナーチェンジ物件です。
そこで、オーナーチェンジ物件を購入する際のチェックポイントが大事になりますが、そのポイントの1つ目は管理会社についての確認です。例えば、管理会社の契約期間や管理会社に信頼性が持てるかなどを確認する必要があります。
ポイントの2つ目は物件の管理状態の確認です。
オーナーチェンジ物件は何らかのトラブルを抱えている場合が多いからです。
ポイントの3つ目は入居者の契約内容の確認で、入居者の入居期間や敷金や礼金・保証人の有効期限などの確認が必須です。
また、前オーナーが物件を手放す理由も確認したいものです。
以下、オーナーチェンジのメリット・デメリットをまとめました。
メリット
デメリット
ここまで不動産投資利回りについて4つの視点から説明してきましたが、言うまでもなく不動産投資において利回りはとても重要な指標であることは間違いありません。ただ、物事に絶対が無いのと同様に利回りにも絶対はありませんから、利回りの数字だけを見て物件購入を決めることは危険です。中には利回りが独り歩きしている物件や見せかけの利回りや詐欺的な利回りもあるからです。
不動産投資で最も大切なことは確実に投資家の手元にお金を残すことですから、無理せずにリスク・コスト・ニーズといった要素も考慮して綿密な事業計画を立てたいものです。