長引くゼロ金利政策の影響で、住宅ローン金利や不動産投資ローンの金利は過去最低水準が続きます。一方で大手企業が副業を解禁したことで、若手サラリーマンや公務員・主婦層が不動産投資に興味を持ち始めています。
そこで、今回は全く投資資金がない人やこれから投資資金を貯める人向けに、不動産投資一口オーナーと言われる少額不動産投資のメリットとデメリットについて考えます。
これらを少しでもお考えなられたことがあるなら、当ページがお役に立つと思います。
ペンギン生徒
アザラシ先生
もともと、不動産投資の世界において少額不動産投資の定義が定着している訳ではありません。それでは一般的に一体いくら位までが少額不動産投資と定義されるのでしょうか?
不動産を購入する上で一般的な少額不動産投資は一口数十万円程度の投資を意味する場合が多いようですが、以下の一覧にありますように少額不動産投資にはさまざまな方法があります。それらの少額不動産投資の主なメリットとしては以下のポイントが考えられます。
まず、不動産小口化商品のメリットは、所得が不動産所得として扱われるため減価償却が使えることと生前贈与や相続税対策にもなることです。
また、クラウドファンディングのメリットは利回りがREITより高く1万円から投資が可能であることです。
加えてJ-REITのメリットとしては金融機関が仲介する不動産投資信託なので、不動産投資の経験豊富なプロが運営してくれることです。
不動産小口化商品 | 1つの不動産を投資家が共同所有し、家賃収入や売却益を分配する |
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不動産投資クラウドファンディング | 不動産投資会社が資金を募りREITと同様に運用し投資家に還元するが、REITとの相違点は金融機関が仲介しないので銀行審査がなく、さまざまな物件が選べる。 |
J-REIT・不動産投資信託 | 金融機関が仲介する不動産投資信託 |
少額投資用物件 | 築古物件・格安物件・競売物件など全国を探せば1,000万円以下の投資部件は山のようにある。 |
フルローン投資 | 自己資金ゼロの不動産投資 |
ペンギン生徒
アザラシ先生
不動産投資一口オーナーになることは難しいことではありません。全く投資資金がない人やこれから投資資金を貯める人でも、少額不動産投資なら気軽に始めることができるからです。
しかも、少額不動産投資は自己資金が少ないため始めやすいですし、少額から始めてだんだんと規模を大きくすることができます。
特に、不動産小口化商品・不動産投資クラウドファンディング・J-REITなどは、少ない資金をコツコツ貯めて大きな投資に備えるには最適な少額不動産投資です。
また、激安物件や競売物件は高利回りを狙えますから、一発当たれば小金を持つことも可能です。いずれにしても、挑戦しない人に幸運は巡りません。
アザラシ先生
少額不動産投資一口オーナーは、必ずしも不動産投資の初心者向けというわけではありませんが、多くの不動産投資初心者が参加していることも事実です。
特に、不動産クラウドファンディングは実質利回りが、REITよりも高く1万円から投資することもできますから、不動産投資初心者に向いていることは間違いありません。
以下で不動産小口化商品と中古ワンルームマンション投資の違いを比べてみました。
不動産小口化商品 | 中古ワンルームマンション投資 | |
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ミニマム投資金額 | 1万円~ | 10万円~ |
メリット | ・国債などより高利回りが見込める。 ・個人では買えない物件に投資できる。 ・元本割リスクが少ない。 |
・ローンが利用できる。 ・毎月安定した家賃収入が入る ・値上り益も期待できる。 |
中古ワンルームマンション投資のミニマム投資金額10万円は、フルローンの場合の自己資金額を意味します。例えば、物件価格500万円の中古ワンルームマンション投資をフルローンで購入する場合でも、ミニマム自己資金として10万円は必要になります。
アザラシ先生
最近の少額不動産投資の新潮流は不動産投資型クラウドファンディングですが、不動産投資型クラウドファンディングは資金を不動産系の事業に投資しリターンを狙うファンドということになります。
ただ、不動産投資型クラウドファンディングは、投資の場合でもローンの場合でも法的スキームにおいての規制は緩くなっています。
つまり、類似のソーシャルレンディングは貸金業法と金融商品取引法に規制されるスキームですし、株式投資型クラウドファンディングは金融商品取引法に規制されるスキームです。
一方、不動産投資型クラウドファンディングは不動産特定共同事業者法を利用しますが、貸金業法や金融商品取引法に規制されることはありません。
現在、少額不動産投資の新潮流として不動産投資型クラウドファンディングが人気になりつつあるのは、不動産と投資型クラウドファンディングの相性が良いことが要因と言われています。もともと、不動産は建物を売却することを見込めますので、将来の売り上げ予測が立てられます。
また、不動産投資型クラウドファンディングには、有担保の物件も多いので投資し易い部分があると言えます。
不動産投資を新しく始めたい人はどのように始めれば良いのでしょうか?まず、最初に現在の不動産市場の状況や仕組みなどを理解する必要があります。そこで、今回はそのような不動産投資初心者が決めなければならない …
不動産ファンドは不動産小口化商品を含む不動産特定共同事業と、J-REITなどの不動産投資信託に分類することができます。
そして、不動産小口化商品は不動産特定共同事業法で規制されていますが、不動産特定共同事業法とは現物不動産を資産とするファンドの運用を規制する法律を意味します。
そして、不動産小口化商品とは特定の不動産を小口化したものを意味し、それを口数単位で購入し不動産から得られる収入や、キャピタルゲインを口数に応じて分配する商品を意味します。
例えば、不動産価格1億円の物件を1口100万円で100口販売するようなケースが想定され、それらは不動産特定共同事業法で規制されています。
そして、不動産特定共同事業法は平成29年に改正されましたが、主な改正ポイントは現物不動産ファンドの組成・運用範囲を拡大すること、また、現物不動産ファンドについてもクラウドファンディングを可能にすることでした。
以下、不動産特定共同事業法の平成29年改正を図で示します。
投資家→出資→適格特例投資家限定事業者→業務委託→宅建業者
(第一号事業)投資家→出資→小規模不動産特定共同事業者(宅建業者)
(第三号事業)投資家→出資→SPC→業務委託→小規模不動産特定共同事業者
上記の通り不動産特定共同事業法の平成29年改正では、宅建業者などの不動産業者がスキームに参加し易くなっていることがわかります。
現物不動産 | 宅地建物取引業法 |
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不動産小口化商品・不特法商品 | 不動産特定共同事業法 |
不動産小口化商品・信託受益権 | 信託法 |
J-REIT | 投信法 |
ペンギン生徒
アザラシ先生
管理代行契約はオーナーと管理会社が管理代行契約を結び管理会社の専門スタッフの経験・ノウハウ等で日々の運用をしますが、賃貸経営者としてはオーナー自らが積極的に判断・決定を行うシステムを意味します。
家賃保証がないためオーナーが空室リスクなどのリスクを負いますが、サブリース契約より通常の家賃は高いシステムと言えます。
一方、サブリース契約はオーナーと管理会社が契約し管理会社は入居者と賃貸借契約を結ぶことで、オーナーが受け取る家賃は管理会社が保証することになります。
不労所得とは所得を得るために労働する必要がない所得のことを意味します。
通常、賃金や報酬は労働の対価として得ます。例えば、サラリーマンは毎日決められた時間内に決められた事務所で仕事をしなければならず、フリーターも1時間の時給が決められ働いた時間分の賃金を受け取ります。
一方、不労所得とは賃金・報酬以外による所得を意味し、働かずとも得られる収入または収入源という意味で用いられます。
例えば、作家や歌手の印税収入・有価証券や不動産等の投資による利子・配当・賃料収入などはもっともわかりやすい不労所得です。
アパートやマンションを購入して家賃収入を得ることや、購入した物件の価格が上がり利益を得た場合も不労所得と見なされます。
このような不動産による不労所得は、少額不動産投資においても得ることができます。
(引用元):「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」(東京都総務局)
少子高齢化の傾向を強める我が国ですが、人口増加傾向が続く自治体もわずかに残っています。人口増の傾向を示すのは東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県・愛知県・沖縄県の6都県で、とくに、東京を中心とした首都圏への人口流入は続いています。
その要因として考えられることは、首都圏が政治・経済の中心地であること、日本の大学(国公立・私立合わせて)781校のうちの139校が東京に拠点を置いていること、留学生約30万人の半数は東京に住んでいることなどが考えられます。
その結果、東京の中古ワンルームマンションを含めたマンション需要は好循環が続いており、新築ワンルーム供給戸数は2016年7,028戸・2017年6,074戸・2018年4,623戸(上半期)と高水準を維持しています。
アザラシ先生
不動産投資のメリットは相続税対策に生かすことができますが、とくに少額不動産投資は一般的な不動産投資よりも購入しやすいうえに手間がかからず相続対策に適していると言えます。以下に少額不動産投資で相続税対策を行うメリットを列挙しました。
相続税の節税などのメリット | ・貸家評価・貸家建付地・小規模宅地等の特例などの評価減を適用できる。 ・遺産分割時に口数毎に分割できるため、相続人間で共有にすることなく分割できる。 ・資金が必要な場合、口数に応じて必要な分だけ売却できるため資金を確保しやすい。 |
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生前贈与 | 小口化商品の場合、時価の20~30%ほどの価格で贈与可能 |
管理 | 管理は不動産管理会社が行うため管理の手間がない。 |
費用 | ・小口化商品の場合、購入手数料が掛からないものや登記費用が不要なスキームもある。 ・信託受益権なら不動産取得税も掛からず登録免許税も少額で済む。 |
アザラシ先生
少額不動産投資で一口オーナーになると多くのメリットがあることがわかりますが、一方で少額不動産投資特有のリスクやデメリットも少なくありません。
例えば、通常の不動産投資の場合は不動産を担保に入れることで金融機関から融資が受けられレバレッジを利かせることができますが、不動産小口化商品では商品を担保に入れてローンを組むことはできないケースが目立ちます。
また、不動産小口化商品の課税方法が一般の不動産と異なる場合があります。
このように少額不動産投資の良い面ばかりを見て前のめりで投資する前に、投資をする上での注意点をチェックすることをお奨めします。
以下で少額不動産投資特有のリスクやデメリットを一覧にしました。
項目 | リスク・デメリット |
---|---|
融資 | ・不動産小口化商品では、その商品を担保に入れてローンを組むことはできない場合が多いのでレバレッジがきかない。 |
課税方式 | ・不動産小口化商品から得られた配当金は雑所得。 ・年20万円を超える場合は確定申告も必要。 |
収益性・流動性 | ・想定利回りが高く設定されている商品も多いが人気商品は瞬間蒸発し圧倒的に投資商品が少ない。 ・換金する際はマーケットが限定されており流動性は低く幅広く次の購入者を募集しにくい。 |
運用会社 | ・運用会社が倒産した場合、配当金はもちろん元本が戻ってこないケースもある。 ・ただし、株や投資信託等と違い不動産価値は残る。 |
アザラシ先生
ネットで少額不動産投資や不動産投資一口オーナーなどと検索しますと、さまざまな悪い口コミを目にすることがあります。以下で少額不動産投資や不動産投資一口オーナーに関する悪い口コミの代表例を紹介します。
悪い口コミの代表例の1つ目はソーシャルレンディングに関する口コミです。
不動産小口化商品や不動産クラウドファンディングの類似商品としてソーシャルレンディングで不動産事業を行う会社に融資する商品や、貸付型不動産クラウドファンディングと銘打つ商品も多く見られます。
ただ、ソーシャルレンディングの運用会社の中には信用度に疑問符が付く会社や正体不明の会社も少なくありませんので要注意です。
悪い口コミの代表例の2つ目は格安物件やボロ物件に関する口コミです。
少額不動産投資の対象として地方の古いワンルームマンションやリゾートマンションを格安で見かけることがあります。
例えば、長野のある温泉リゾートマンションの一室は10万円で販売されていましたが、温泉の給湯料が毎月数万円かかる部屋や前のオーナーが滞納した管理費や修繕積立金を数百万円肩代わりしなければならないケースもありました。
また、築30年を超える地方の郊外ワンルームマンションも10万円で販売されていましたが、相当、リフォームしなければ住めない物件でした。
このように少額不動産投資には少額不動産投資特有のリスクやデメリットが付き物ですから、現地調査はもちろんのこと書類の確認も十分に行う必要があります。
ここまで不動産投資一口オーナーのメリット・デメリットについて説明しましたが、不動産投資一口オーナーには多くのメリットがある反面、少額不動産投資特有のリスク・デメリットがあることがわかります。
とくに、少額不動産投資で不動産投資一口オーナーを目指す方は、不動産投資初心者が多いと思われます。ですので、不動産業者や担当営業マンの説明を鵜呑みにすることなく、自分の価値観と着眼点で物件のメリット・デメリットを判断する姿勢が求められます。
たとえ、市場価値が低い物件であっても特定の投資家には価値が高い物件も中にはあるからで、その意味では少額不動産投資の対象物件の中に多くのお宝物件が含まれているのかもしれません。