投資家は不動産投資を行なうことにより様々な税金メリットを得られます。
国も不動産投資に税金メリットを与えることで取引の活性化を狙っています。
ですので、それらの税金メリットを正確に理解することが、まず、求められることです。その上で、具体的な節税方法や申告方法を実践する必要があります。
そこで、今回は不動産投資の税金メリットについて解りやすく説明し、後半は節税メリットを高めるためのテクニックに言及しています。
これらを少しでもお考えになったことがあるなら、当ページがお役に立つと思います。
まず、最初は不動産投資関連の税金を把握・理解することが第一歩です。
そこで、不動産投資関連の税金をただ並べるよりは、不動産投資の順序に沿って関連税金を見て行きます。
税の名称 | 税率 |
---|---|
印紙税 | 500万円超1,000万円以下→1万円・ 1,000万円超5,000万円以下→2万円など |
登録免許税 | 不動産登記 所有権保存0.4% 新築住宅0.15% 売買による所有権移転2%(土地は1.5%) 中古住宅0.3% 抵当権設定0.4%・新築住宅0.1%・中古住宅0.1% |
不動産取得税 | 住宅用・非住宅用に限らず土地は3% 建物は住宅用が3%・非住宅用は4% |
固定資産税・ 都市計画税 |
不動産の所有 1.4%(標準税率) 不動産の所有 0.3%(制限税率) |
不動産所得税 | 分離課税総合課税 |
譲渡所得税 | 短期譲渡所得(5年以下)39.63%(所得税30.63%・住民税9%) 長期譲渡所得(5年超)20.315%(所得税15.315%・住民59%) 長期譲渡所得(10年超)14.21%~20.315% |
ここでのポイントは印紙税~固定資産税・都市計画税までの税金は税率が固定されているため節税はできませんが、不動産所得税と譲渡所得税は特例などで節税が可能です。節税方法につきましては、後の項で詳しく説明しています。
不動産投資税金メリットを実現するためには前項の不動産投資関連の税金に加えて、基幹税である所得税・住民税・法人税の基本についても知る必要があります。所得税・住民税・法人税の税率は以下の通りです。
所得税
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
住民税
課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
市区町村民税 | 課税額×6% |
都道府県民税 | 課税額×4% |
課税額は所得額から控除金額を控除した金額 |
法人税率
課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
中小法人等年800万円以下 | 19% |
中小法人等年800万円超 | 23.2% |
中小法人以外の普通法人 | 23.2% |
ここまでの税金に比べると相続税は少し複雑ですが、不動産投資にも深く関わることが多い税金の1つです。相続税を理解するには、まず、法定相続人を理解しなければなりません。法定相続人の範囲は以下の通りです。
そして、優先順位は以下の通りです。
優先順位 | 血族の種類 |
第1順位 | 子および代襲相続人 |
第2順位 | 両親などの直系尊属 |
第3順位 | 兄弟姉妹および代襲相続人 |
そして、相続税計算の流れは以下のようになっています。
区分 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | 0円 |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
次に贈与税ですが贈与に当たる行為とは以下の様な行為を指します。
また、贈与税の申告については1年間に発生した贈与分の金額を、翌年の2月初めから3月15日までの期間で税務署に申告手続を取ることになります。
基礎控除後の課税価格 | 200万円以下 | 300万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 3,000万円超 |
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | – | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
不動産投資税金関連メリットの1つ目は、不動産の減価償却によって所得税・住民税あるいは法人税が軽減されることです。この減価償却のテクニックについては後の項で詳しく説明しています。
メリットの2つ目は不動産投資を法人化することで節税につながることで、所得税よりも法人税の税率が低いことが節税の要因です。
また、法人化することで交通費・交際費・管理・修繕費・固定資産税・不動産取得税などが経費とし計上できます。
メリットの3つ目は長期譲渡所得の税率が低くなることなどで、個人では5年以上・法人では経常利益が800万円未満であれば利益が出ても低い税率が適用されます。
メリットの4つ目は不動産投資は相続税対策に使えることで、不動産の相続時の評価は時価ではなく路線価から不動産評価を導きます。
その結果、相続時の評価額は一定の条件を満たすと居住用では80%OFF・投資用で賃貸する場合は50%OFFまで圧縮できます。
最近、サラリーマンの副業が注目されていますが、サラリーマンが副業として個人事業を行なっている場合は、確定申告をしなければならないケースが多くなります。
ただ、副業の年間利益が20万円未満であれば確定申告の必要はありませんが、20万円以上の場合は確定申告が義務となります。
また、その場合に個人事業を法人化することで経費が認められ利益を圧縮できれば、さらに税制面でのメリットが増えることになります。
例えば、法人化して妻や親族を専従者に指定すれば役員報酬を払うことができますから、妻や親族が役員報酬を受け取ることに加えて法人の経費として計上できます。つまり、法人の利益を圧縮することができます。
また、事業開始直後に赤字を出してしまった場合、青色申告でその損失は10年以内であれば繰り越して次年度以降の所得から差し引くことができます。
つまり、欠損金を差し引くことで法人税を抑えることができるというメリットがあります。
さらに、現在の家が賃貸であれば社宅として経費計上できる場合がありますし、交通費や交際費が経費として認められる場合も少なくありません。加えて、生命保険を会社で加入することで節税になる可能性が出てきます。
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まず、個人で投資する場合ですが不動産投資で利益が出たケースでは個人の所得と合算することで税率がアップするケースが多くなりますので、税制面での大きなデメリットと言えます。
また、法人化する場合のデメリットとしては、法人には赤字でも納めなければならない法人住民税があることです。
例えば、資本金が1,000万円以下の場合の法人住民税は7万円程度と大きな金額ではありませんが、赤字の時に取られる税金は痛いものです。
加えて、法人化の場合は設立や運営上のコストがかかることもデメリットと言えます。
法人の設立費用や様々なランニングコスト・税理士費用などの事務コストが個人事業よりも割高になることが多いのです。
メリット
デメリット
アパート・マンション経営による節税効果の基本は確定申告を行い赤字計上をすることで過払いした税金を取り戻すということです。
例えば、会社から給料を支給されている人は所得税と住民税が課税されていますが、アパート・マンション経営による経費計上ができるようになり所得税・住民税の税率が下がる可能性が出てきます。
例えば、アパート・マンション経営の管理費・固定資産税・修繕費・ローン金利・減価償却費などが経費計上できる訳です。
つまり、アパート・マンション経営を行うことで、所得の黒字に対してアパート・マンション経営による黒字を相殺する損益通算が可能になり税金を減らすことが期待できる訳です。
上記の必要経費を計上できる点に加えて法人化の節税効果として大きいのは所得税と法人税の税率の差です。
一般的には不動産による年収が500万円ほどになったら法人化するとメリットがあると言われていますが、個人事業の場合は本業と不動産による年収を合算することになります。
例えば、年収500万円のサラリーマンの不動産による年収が500万円ほどとすると、所得税率は33%が適用されます。
一方、法人化して不動産による年収が500万円ほどになったとすれば、法人税率は19%となります。
しかも、法人の場合は管理費・固定資産税・修繕費・ローン金利・減価償却費などが経費計上できる場合が増えてきます。
不動産投資の税金メリットを考える上で上記の経費計上で法人税が圧縮できますが、加えて相続税を圧縮することもできます。
ですので、20~30年後に相続が発生する可能性のある中高年の場合は、金融資産から不動産に投資して相続税の圧縮を図ることができます。
なぜなら、相続税において現金や株式などの金融資産は時価で評価されますが、
不動産の場合、土地は時価の8割程度の評価となり建物は工事費用の5~6割程度の評価になります。加えて、賃貸することでさらに評価を圧縮できるため、相続税対策で賃貸経営が行われることが多いのです。
その評価額は相続のとき、一定の条件を満たすとその評価額は、居住用では80%オフ、投資用で他人に貸す場合は50%オフされ小規模宅地の特例と言われています。
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経費は所得金額の計算に大きく影響する訳ですが、誰が見ても経費と解る様な不動産業者や入居者との交渉に伴う交通費・交際費や固定資産税・不動産取得税・管理・修繕費などが経費として認められます。
そして、より経費の計上を増やすには事業用とプライベート用に区分できない費用を経費に計上することが効果的です。
例えば、家賃・電気代・電話代などの費用で、特に、自宅兼事務所として使用している場合は事業用に使用した部屋の面積で事業割合を算定することになります。
また、ガソリン代・月極駐車場代・コインパーキング代・高速代など車関連費用も事業用とプライベート用に区分し難い費用ですから、逆に考えれば費用として計上できる場合があるということです。
加えて不動産の減価償却により所得税・住民税あるいは法人税が軽減されます。
減価償却とは不動産は時間の経過と共に価値が落ちていくものなので、価値の目減り分を損金として必要経費に算入できる制度です。
仮に減価償却により不動産所得がマイナスになった場合は、確定申告にて給与所得などからそのままマイナス分を引くことができます。その結果、所得税・住民税を0円にすることもできるのです。
不動産投資の税金メリットを考える上で減価償却は最も重要な要素と言えます。
不動産投資で税金メリットを実現するには青色申告は不可欠です。
青色申告制度とは正しい申告をする人に税制上の特典を与える制度で、所得税の確定申告の所得を減らすことで所得税・住民税・国民健康保険料などが減額される制度です。
その特典内容の1つ目は10万円を利益から控除できることで、青色申告特別控除と呼ばれています。
加えて、事業規模が5棟以上か10室以上のアパート経営のケースで貸借対照表を提出すれば65万円まで控除できます。
2つ目は専業主婦などを従業員として雇用すると給与を専従者給与として経費計上できることで、青色事業専従者給与と呼ばれています。
3つ目は1件30万円未満の減価償却資産購入は全額費用計上できることです。
加えて赤字決算の場合は3年間赤字を繰り越すことができます。
一方、確定申告の対象は年間の所得(利益)が38万円以上の個人事業主と副業の年間の所得(利益)が20万円以上の給与所得者と給与所得が2,000万円以上の会社員です。
一般的なサラリーマンの多くは税務署・確定申告と聞くだけで関わりたくない気分になりますが、不動産投資で税金メリットを実現するには確定申告・青色申告に慣れる必要があります。
慣れるコツとしては日々の領収書を月毎に分けて残しておくことで、経費計上できるか否かは別にして何でも残せるものは残しておくことです。
そして、できれば日々の出納帳(入出金控え)を付けていればベターです。
現在はカードを使えばスマホで管理できる世の中です。加えて、確定申告を楽に終わらせる裏ワザとしては、無料のクラウドソフトを使うことです。
ここまで不動産投資税金メリットを実現するためのポイントについて説明してきましたが、ポイントの中でも経費計上・減価償却・法人化・青色申告などが重要なポイントであることが解ります。これらを確実に実践して多くの果実を得られれば幸いです。
ただ、不動産には価格が下落するというリスクがあることも考えなければなりませんので、投資対象物件の厳選や物件の出口戦略も重要な要素です。
不動産投資で税金メリットは得られたものの、結局はキャピタルロスを出したのでは本末転倒になってしまうからです。