不動産投資はサラリーマンや自営業者が手軽に始められる投資の1つで高い利益が期待できますが、一方でリスクが高い投資であることも事実です。
そのため外国人投資家などの多くの機関投資家は不動産投資リスクに対して様々なテクニックを駆使してリスクを最小化していますが、大半の個人投資家は不動産業者の言いなりか市場の成り行きに任せる投資スタイルです。
そこで、今回は高い不動産投資リスクを最小化する4つのポイントを掲げ、特に、一般の個人投資家ができるレベルの不動産投資リスク最小化のノウハウを提案します。
これらを少しでもお考えになったことがあるなら、当ページがお役に立つと思います。
そこで、現在、考えられる不動産投資リスクの中でリスク度が高い要因を順番に理解することが先決です。リスク度を理解しなければ対策を打つこともできないからです。
その様な観点で考えると不動産投資リスクの中で、リスク度が最も高い要因は不動産価格の値下がりリスクです。
もともと、不動産投資は元本保証の銀行預金や国債投資とは異なり、元本が保証されず価格変動が前提の投資です。
ですので、居住用・賃貸用を問わず常に価格が変動するものに投資するという側面があることは否定できないことです。
不動産投資リスクを理解する上でREIT(不動産投資信託)の価格推移を見ると解りやすい部分があります。
REITは投資家から集めた資金でオフィスビルやマンションなどの不動産に投資し、賃料収入や売却益などの運用成果を投資家に分配する仕組みの金融商品です。
この上場REITを投資家は株式同様に取引所を通してリアルタイムに売買することができますが、証券会社ではREITをミドルリスク・ミドルリターンの金融商品に分類しています。
つまり、現物の株式よりもREITのリスク度は低いか同等と判断していることになります。
もう1つは長期的な公示地価の動向で不動産価格のリスク度を見れます。
(引用元)海外投資データバンク
1983年を1とした上記の「日米の不動産価格推移の比較」ですが、例えば、1983年の1に対してピークの1989年の指数は4.9程度であり、6年間で日本の公示地価は4.9倍に上昇しています。
一方で、1989年の4.9から10年後の1999年は1.4まで下落しており、公示地価はほぼ70%程度の下落と言えます。
つまり、バブル崩壊後の不動産価格値下がりリスクとしては10年間で70%程度の下落の歴史があり、この下落率が10年間としては最大の値下がり率と言えます。
不動産投資家にとり2番目に恐いリスクはローン金利上昇リスクです。
多くの場合、不動産投資ではローンを組んで物件を購入します。
また、現在の様な超低金利下では変動金利の方が適用金利が低いため、先行きには目をつぶり目先の低い金利での返済を続けています。
ということは、将来的に金利が上昇した際には返済額が大きく増えるというリスクを抱えていることは、誰もが解っていることなのです。
以下の住宅ローン金利推移を見ますと、現在は都市銀行住宅ローン金利やフラット35の金利は年率2.4%~2.6%程度で落ち着いています。
(引用元)ダイヒョウ株式会社
ところが、30年ほどさかのぼる昭和62年から平成3年の5年ほどで、都市銀行住宅ローン金利は5.0%~8.5%に3.5%上昇しています。
また、フラット35は同期間で4.2%程度から5.5%に1.3%程度上昇しています。
ですので、まだ、十分にデフレ経済から脱出したとは言えない現在の日本経済を考えますと、この間の金利上昇を上回る局面は考え難いのが正直なところです。
そして、アパートやマンションの賃貸経営オーナーにとって、もっとも深刻なリスクは賃貸に出した部屋の空室リスクです。
多くの場合、新築時には入居者が付きますし管理会社の営業努力もあり、数年間は空室にならないことが多いのです。
ところが、築5年・10年と経過するうちに経年劣化が進む一方で、近隣に新築アパート・マンションが増えてきます。
こうなると当然のことながらアパート・マンションの競争力が下がり空室が出始めるのです。
ですので、一般的に空室リスクは物件立地・物件人気・管理会社営業力の影響が強いと言われますので、この3つの要素を見極めて投資することが空室リスクを抑える重要なポイントとなります。
加えて、不動産会社や管理会社とのサブリース契約は空室リスク対策の切り札ですが、多くのケースを見ますとサブリース契約は2年毎に更新されることが多いので極端なケースでは2年後の保証家賃が2割以上下がるケースもある様です。
ですので、サブリース契約が空室リスク対策の絶対的な切り札とはなり得ず、物件立地・物件人気・管理会社営業力が劣る物件は何らかの空室リスク対策を考える必要があります。
以下は総務省統計局「平成25年住宅・土地統計調査の結果」ワースト7位までですが、東京都内の市区町村で25%~34%の空室率であることを示しています。
特に、豊島区や大田区などの区部でも26%~30%の空室率が出ており、物件立地が重要であることを示しています。
順位 | 市区町村 | 借家数 | 賃貸用の空き家数 | 空き家率 |
---|---|---|---|---|
1位 | 青梅市 | 13,910 | 4,830 | 34.7% |
2位 | 日の出町 | 530 | 180 | 34.0% |
3位 | 豊島区 | 83,930 | 25,450 | 30.3% |
4位 | あきる野市 | 6,830 | 2,030 | 29.7% |
5位 | 東大和市 | 13,210 | 3,690 | 27.9% |
6位 | 大田区 | 174,430 | 45,750 | 26.2% |
7位 | 府中市 | 50,270 | 13,010 | 25.9% |
ここまでの不動産価格値下がりリスク・ローン金利上昇リスク・賃貸経営空室リスクに加えて、以下のリスクも想定しておく必要があります。
まず、物件の老朽化などによる物件損壊修繕リスクで、他の株式などの有価証券投資ではあり得ないリスクです。
この物件損壊修繕リスクは、まず、第一義的にはマンションなどの管理組合が長期的な修繕計画を立てることが必要です。
そして、管理組合が良い管理会社を見つけ長期の修繕計画を依頼しておく必要があります。
ただ、現実問題としては管理会社の倒産リスクも増えていますから、管理会社に管理を丸投げするのではなく管理組合が能動的に機能する体制が求められます。
加えて、近年、台風や地震・津波による自然災害が増えていますので、災害による建物の損壊についても想定する必要があります。
特に、地震に対する備えについては後の項で詳しく説明しています。
一般的にアマチュア投資家はリスクよりもリターンに関心が強くリスクを忘れて積極的に投資することも少なくありませんが、プロの投資家はどんなに好調な環境に恵まれていても決してリスクを忘れることはありません。
それは、常にリスクとリターンは背中合わせの存在であることを知っているからで、100のリターンが期待できる投資物件には100のリスクが潜むことを覚悟する必要があります。
その意味で不動産投資・REIT・株式現物投資・投資信託などはミドルリスク・ミドルリターンの投資と言われています。
ただ、株式先物・株式信用取引・FX投資などはハイリスク・ハイリターンに分類されますから、不動産投資の場合もフルローンやキャッシュ比率が極端に低い投資はハイリスク・ハイリターンと言えます。
フルローンやキャッシュ比率が極端に低い不動産投資は投資家が持つ資金に対して数倍の投資をする訳ですから、リスクとリターンはレバレッジ分だけ高まることになるからです。
もともと、リスクマネジメントとはリスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失などの回避または低減をはかるプロセスを意味します。
加えて、近年は危機管理もリスクマネジメントの一部と考えられる様になっています。
民間企業に例えるならば環境リスク・不正リスク・市場リスクなど様々な種類のリスクに対してより高度なリスクマネジメントを行うところが増えており、これらに特化した危機管理部門やリスクマネジメントに特化した専門部署を置く傾向が強まっています。
これを個人や自営業者の不動産投資に例えるならば、投資家自身がリスクを把握し理解することから始める必要があります。
また、理解するだけではなく長期的な対応策を作ることも 重要で、特に、専門的な事柄については不動産会社・管理会社・税理士・弁護士などに依頼することになりますが、それらを統括するのは投資家自身であるということが大事です。
また、そもそも、投資における出口戦略とは利益を確定して投資を終了することを意味しますが、収支がマイナスの時に如何にマイナス幅が小さいうちに投資を終了するかも重要な要素です。
例えば、株式投資の場合は株価のボラティリティーが高いため頻繁に売買を繰り返しますから、出口戦略を余り意識することなく利益確定できます。
一方、不動産投資の売買回数は多い人でも一生で数回というレベルですから、出口戦略を意識して買う人は少ないのが現状です。
ところが、不動産投資に出口戦略は非常に重要で、特に、アパート・マンション経営という投資方法において出口戦略は不可欠です。
例えば、20年間、家賃収入が黒字だったマンションがあるとします。
しかしながら、最後の売却で大損して収支全体がマイナスになってしまったとしたら、その不動産投資の出口戦略は完全に失敗だったことになります。
つまり、もっと早期の収支全体が黒字だった時期に出口戦略を考えるべきでした。
一般的にアパート・マンション経営で出口戦略を考えるべき理由の1つ目はアパート・マンションの商品としての価格の高さにあると言えます。
つまり、不動産投資は長期投資が前提ですが一生に数度しかない大きな買い物ですから、買う時に利益確定である出口戦略を考えなければなりません。
2つ目はアパート・マンション経営は減価償却できますから経年劣化分を費用として計上できますし、他にも費用として計上できる費目も多いので税金に関する知識も出口戦略に必要です。
3つ目は購入物件の選定時に出口戦略を練ることです。つまり、購入の時の投資家目線で魅力的な物件と感じるかどうかが出口戦略のポイントになります。
何年後かの売却時には買い手の投資家が同じ目線で立地や空室率・利回りを確認するはずだからです。
今やスーモやホームズ・健美屋・楽待などの不動産ポータルサイトで物件を探すのは当たり前の時代ですが、昨年あたりから1つの物件を検索すると似たような物件が自動的に表示される様になっています。
これはいよいよAIを使った広告サービスが押し寄せてきている一例ですが、AIの活用は不動産業界にも広がりつつあります。
もともと、数百件・数千件の物件の中から1件を選ぶという不動産投資はAIやビッグデータ解析に向いていたはずですが、中小零細企業中心の日本の不動産業界にもやっと新しい波が押し寄せています。
例えば、2018年には最新の不動産探しAIツールとして「物件提案ロボ」がリリースされました。
また、LEEWAYS㈱は5,800万件に及ぶ不動産ビッグデータとAIを組み合わせた業務パッケージ「Gate.」を提供しており、その中心は賃料や物件査定・投資分析です。
今後、この様な不動産探しAIツールは他の企業からもリリースされる筈で、ネットで何十件もの条件を見比べて物件を探す時代からAIツールで数件に絞られた投資候補物件を下見する時代がすぐそこまで来ています。
アパート・マンション経営を突き詰めると節税対策に行き着きます。
節税対策をしないと利益が残らないからで、所得税の節税対策は「必要経費を増やすこと」「所得控除額を増やすこと」「税額控除を検討すること」がポイントとなります。
注目ポイントは「必要経費を増やすこと」ですが意外に見落とされがちなのが交通費です。
1つ1つの交通費の金額は小さいかもしれませんが、年間で換算すると大きな金額に膨れ上がります。
特に、所有物件見回りのための交通費や業者との打ち合わせに使った交通費などです。
加えてプライベートで使った交通費の領収証も後で使えることも多いのです。
なぜなら、交通費は一括して交通費という費目で計上されることが多く費目明細を付ける必要が少ないからで、とにかくタクシーの領収書や新幹線の領収書などを残しておくことが大事です。
また、修繕は必要経費となりますが修繕の中でも数十年にわたって減価償却により経費となる費目は別にして、支払った年の必要経費になる20万円未満や60万円未満等の少額の修繕費を増やすと必要経費額が増えることになります。
加えて、収入と経費を把握し青色申告を行うことが有効な節税になります。
さらに、不動産所得が赤字となった場合、他の給与所得や事業所得と損益通算できますから、所得が相殺され所得税・住民税が減額されることも忘れてはならないポイントです。
まず、現状の「新耐震基準」ですが1981年6月に制定された基準で、既に、38年も経過し2011年の東日本大震災も経験していることから陳腐化している可能性があります。一応、以下に内容を記します。
旧耐震基準1981年5月31日以前 | 1950年に制定された建築基準法に基づく基準で中地震程度の揺れに崩壊しない強さを基準としている |
新耐震基準1981年6月1日以降 | 旧耐震基準で中地震で崩壊しない程度としていたものが中地震では損傷しない程度と強化された・また震度6~7程度の大地震で倒壊しない程度の強度を基準 |
また、現在の耐震等級と耐震構造等は以下の通りです。
等級 | 建物の例 | 強度について |
---|---|---|
耐震等級1 | 一般的なマンションなど | |
耐震等級2 | 学校の校舎や警察署の建物 | 耐震等級1の1.25倍 |
耐震等級3 | 規模の大きな病院など | 耐震等級1の1.5倍の強度 |
耐震構造 | 地面の上に建築されている一般的な建物の構造 建物は丈夫だが直接地面からの揺れが伝わり他の構造と比べると揺れやすい |
制震構造 | 建物内にダンパーを配置し地震の揺れを吸収する構造 耐震構造よりも建物の揺れは小さくなる |
免震構造 | 免震装置の上に建物を建築する 揺れは建物の下にあるダンパーと呼ばれる装置が吸収するので、耐震構造・制振構造よりも建物の揺れは小さくなる |
これらを解りやすく1つのパターンにまとめたのが以下です。
(引用元)suumo
そして、新しい知識とAI活用として期待されるのが、測量学の世界的権威である東大名誉教授の村井俊治氏が会長を務めるJESEA(地震科学探査機構)が今年実用化したAIによる地震予測です。
このAIによる地震予測は国土地理院が全国1,300か所に配備する電子基準点の過去12年分のデータをAIにインプットし、最新の電子基準点の動きから地表の異常変動(上下・水平など)を察知し全国30エリアにおいて「震度4以上の地震が3か月以内に発生するリスク」を6段階評価で割り出すものです。
今後は地域のハザードマップと併せて不動産投資に使わない手はありません。
(引用元)NEWSポストセブン
継続的に需要の高い好立地物件を見つける秘訣は投資家自身が強い分野を持つことです。
例えば、ワンルームマンションやファミリーマンション・店舗・一戸建てなどの中から、得意分野を絞り込むことが大事です。
例えば、投資対象をワンルームマンションに絞るとしますと、首都圏や福岡市など人口が増えている地域ではワンルームマンションの需要が継続的に強い状態であることが解ります。
その理由として考えられることは、外国人も含めた単身者が増えていることで、特に、最も借り手がつきやすいワンルームマンションは賃料の価格帯が5〜7万円の物件と言われています。
現在、首都圏で賃料の価格帯が5〜7万円の物件は遠隔地を除けば新築や築浅の物件では届かない金額で、結果として中古ワンルームマンションの需要が継続的に強い状態が続いています。この様に投資対象を絞り込みち密な視点で見ることが大事です。
人口 | 1,315万人 |
総世帯数 | 639万世帯 |
単身世帯数 | 292万世帯 |
単身世帯率 | 45.7% |
単身者住宅不足数 | 200万戸 |
マンション収益物件選びで大事なことは最初から出口戦略を意識した投資を考えることです。
その出口戦略の中でも特に大事なポイントは何年で出口戦略を始めるのかということで、つまるところ何年くらいで売却したいのかということです。
例えば、20年後に出口戦略を考える場合の物件選びは、20年経っても変わらない要素を重視することに他なりません。
建物の構造や耐久性に始まり近隣の交通や利便性・環境・再開発の有無までについて、20年後を想定することが大事なのです。
もう1つのポイントは投資物件に安定した賃貸需要があるのかどうかです。
言うまでもなく投資物件の生命線は人が集まる場所であるのかということです。
例えば、新宿駅から5分の物件はどの方角に行こうと人が集まる場所だということは誰もが知っています。
その意味で企業が多いのか、大学が多いのか、観光地が近いのか、利便性が高いのか、再開発があるのかなどが大きなポイントとなります。
全国的な地価の上昇は8年以上となりますが、特に、首都圏の上昇が顕著です。
つまり、相対的に首都圏の不動産投資リスクが高まっていることは否定できません。
投資の常識としては上昇しているものに乗る順の投資と出遅れているものに乗る逆張りの投資がありますが、首都圏の不動産投資は順の投資で地方への不動産投資は逆張りの投資と言えます。
ですので、複数の不動産投資を行なっている投資家の分散投資の必然性として、地方エリアへの分散投資も有効な投資と言えます。
特に、人口が継続的に増加傾向が続く愛知県・福岡県・沖縄県などが狙い目かもしれません。
ここまで高い不動産投資リスクを最小化するポイントについて考えてきましたが、その中でも不動産投資の出口戦略を考えることと、新しいテクニックでリスクの高い不動産投資をヘッジすることは今後の投資成績を左右する要素です。
特に、リスクの高い不動産投資においては出口戦略が不可欠で、それまで家賃収入で黒字だった物件が最後の売却に失敗することで全体収支がマイナスになってしまうということは不動産投資では珍しいことではありません。
ですので、不動産投資リスクを最小化するには、出口戦略を意識した購入物件選びが最初の一歩なのです。