投資は軍資金が無ければできませんが、不動産投資の軍資金は株式など他の投資の軍資金と少し事情が異なります。不動産投資は物件を担保にして低い金利でローンが組めるからですが、それにしても、一体、不動産投資の軍資金としてどのくらいの額を用意すれば良いのでしょうか?
また、副業解禁で若いサラリーマンが不動産投資を考える時、どのようにして軍資金を貯めれば良いのでしょうか?今回は不動産投資の軍資金について考えます。
これらを少しでもお考えなられたことがあるなら、当ページがお役に立つと思います。
不動産投資の軍資金とは自己資金・頭金を意味しますが、それぞれの意味は微妙に違うかもしれません。軍資金と自己資金はほぼ同じ意味合いですが、頭金はローンを組む時のキャッシュ部分を意味します。
そして、不動産投資では手数料や税金などで新築の不動産購入額の4%~5%程度、中古の購入額の7%~8%程度のキャッシュを用意する必要があります。
つまり、ほとんどの不動産投資家はローンを利用することになりますが、ローンを除いた自分でまかなう部分が軍資金であり自己資金というわけです。
もちろん、上記の手数料や税金など諸費用も上記に含まれることになります。
それでは不動産投資の軍資金はザックリどのくらいなのでしょうか?
一般的には物件価格の20%程度で、3,000万円の物件であれば軍資金(自己資金)600万円程度が目安と言えそうです。
ただ、首都圏の不動産価格は相当上昇しており、もう少し多額の軍資金が必要になります。
以下、現在の首都圏の物件価格の平均は以下の通りです。
新築分譲マンション | 一戸建て | |
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2018年 | 5,962万円 | – |
2019年東京都 | – | 5,470万円 |
2019年神奈川県 | – | 4,075万円 |
2019年千葉県 | – | 3,838万円 |
軍資金は物件の20%必要だとなると、物件価格にもよりますがなかなかの高額ですよね。
「手が出ないな…」と思われたかもしれません。
しかし、不動産投資熱は一般サラリーマン達にも広がっており、年収がそれほど高くない人たちも不動産投資を始めています。
年収が高くない=軍資金を準備できない、というわけではないですが、
実際には物件価格の20%もの軍資金を用意せずに投資を始めている人も多いとは考えられます。
運転資金が少ないからといって不動産投資を諦めてしまう必要はありません。
軍資金が少ない人向けの不動産投資方法については、当ページ後半で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
不動産投資金額に対して自己資金額が多ければ多いに越したことはないというのは当たり前ですが、不動産投資金額に対して適正な自己資金額を考える場合、ローンの総返済額も併せて考える必要があります。
一般的な軍資金(自己資金)の目安は物件価格の20%程度が普通と書きました。確かに不動産投資金額に対して2割~3割の自己資金額がミニマムと考えるべきで、自己資金額が2割~3割を上回れば上回るほど投資全体のリスクが下がることは間違いありません。
ところが、ここではローンの総返済額は考慮されていません。
つまり、軍資金(自己資金)を600万円用意し3,000万円の物件を買う場合に、残りの2,400万円のローンの金利が問題になってきます。例えば、ローン金利が1%の場合と3%の場合では総返済額は大きく違ってきます。
そのため、物件価格に占める自己資金の割合に加えて、ローン金利やローンの総返済額についても考慮する必要があります。
大家になるための軍資金の目安を考える上で、まず、全国の一棟アパート・一棟マンションなどの収益物件の平均価格を見る必要があります。
2018年8月分のデータで新規に登録された全国の収益物件一棟アパート・ 一棟マンションのデータを集計し、最新の市場傾向としてまとめたのが以下の表です。
これを見ると、一棟アパートの大家になるにはおよそ6,500万円程度の軍資金(キャッシュ+ローン)が必要で、一棟マンションの大家になるにはおよそ1億5,000万円程度の軍資金(キャッシュ+ローン)が必要なことがわかります。
もちろん、首都圏は平均の5割高になりますし、地方の割安物件を探せばはるかに安い物件も少なくありません。
2018年8月分平均データ | |
---|---|
一棟アパート | 6,591万円(前月比-2.07%減) |
一棟マンション | 1億5,351万円(前月比-1.5%減) |
前の項で示した一棟アパート・一棟マンションの平均値は6,500万円程度と1億5,000万円程度ですが、この物件価格に対して20%の軍資金(自己資金)を用意するとすれば一棟アパートで1,300万円・一棟マンションで3,000万円程度の軍資金(自己資金)が必要になります。
これらは相当にハードルの高い金額で、特に、若手のサラリーマンにとっては手の届かない金額と言えます。以下の年代別平均貯蓄金額を見てみてください。
年代 | 平均貯蓄金額 |
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29歳以下 | 154万8千円 |
30~39歳 | 404万1千円 |
40~49歳 | 652万7千円 |
50~59歳 | 1,051万2千円 |
60~69歳 | 1,339万4千円 |
70歳以上 | 1,263万5千円 |
平成28年国民生活基礎調査(各種世帯の所得等の状況・厚生労働省)
このように、とくに若年層の平均貯蓄金額は多くありません。
しかし、一棟アパート・一棟マンション経営に多くの若手投資家が参入しているのは、ローンを使えばレバレッジを効かせることができるからです。
特に、利回りの高い一棟アパート・一棟マンションなどの収益物件の場合は5%程度の軍資金(自己資金)があればローンの審査が下りるケースも増えています。
平成28年厚生労働省の国民生活基礎調査によりますと、30~39歳の平均貯蓄額は404万円となっています。
したがいまして、400万円から逆算すると2,000万円までの物件が適当となりますが、2,000万円以内の物件ということは相当、物件が制限されてしまいます。
一方で不動産投資が長期投資であることのメリットを生かすには、若いうちに不動産投資した方が有利であることは間違いありません。
以下で20代・30代で不動産投資を始めた方が有利であることの根拠を示しますが、それを解決するのはローンを活用する他ないということになるのです。
1.長い融資期間を確保できる
2.ローンを早く返済できる
3.ローン審査が有利
4.無借金経営に早くたどり着ける
5.経験と実績を積むことで2棟目・3棟目にトライできる
6.60歳手前で不労所得生活に入れる
不動産投資に対して銀行などの金融機関は積極的に融資を行ってきましたが、その理由はいくつかあります。
理由の1つ目は不動産投資ローンに対して買付物件を担保に取ることができることです。不動産は株式などと比べて価格変動を意味するボラティリティーが低いため、担保としての価値が高い訳です。
2つ目は不動産投資が長期投資を前提にしていることで株式投資のように短期で売買するわけではないので、銀行は安心して融資することができます。
3つ目は不動産投資ローンの融資金額が大きく利ざやが取れることです。
一方、投資家サイドのメリットとしては、何よりもローンを利用してこそ初めて不動産投資の真価が発揮できるという側面があります。
つまり、ローンのレバレッジ効果により小さな軍資金(自己資金)で大きな力を生み出すことができるのです。
中には軍資金(自己資金)ゼロのフルローンや、軍資金(自己資金)が10万円や100万円のローンも少なくありません。
ただ、軍資金(自己資金)とローンの比率は2対8か3対7程度が適性水準であることも忘れてはなりません。
自己資金ゼロで申込みできるフルローンの審査は難しいのが現状です。
特に、最近は不動産市場の上昇やスルガ銀行の不正融資問題の余波で、金融庁は不動産投資ローンへの規制を強めています。
そのような環境下でフルローンや軍資金(自己資金)の比率が低いローンを行うには、それなりの審査をしなければなりません。それらの審査のポイントは物件の価値算定の厳格化に他なりません。
また、試算された物件の算定金額に対する掛目も厳しくなっています。
例えば、それまでは物件の算定金額に対して7割の金額で融資していたケースが6割や5割になるわけです。
加えて、現在では融資ができる地域の選別が始まっています。
例えば、東京23区内だけとか東京都内に限るとか首都圏に限るとかの選別です。
もちろん、以下の基本的な属性が審査されことは言うまでもありません。
基本情報 | 氏名・年齢・住所 |
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勤務先情報 | 勤務先・年収・勤務形態・勤続年数 |
住居状況 | 持家・賃貸マンション・賃貸アパートの別 |
家族構成 | 妻子の有無 |
その他 | 退職金や年金の有無・資産の有無・他の借入の有無 |
不動産のネットを見ますと未だにフルローン投資や頭金10万円からの不動産投資などのコピーが目立ちますが、これらは軍資金(自己資金)が少ない投資家にローンを奨める投資スタイルに過ぎません。
一方、ここで言う不動産少額投資とは、1口1万円からの不動産投資のような投資資金作りのための少額投資を意味します。
そのような不動産少額投資の1つ目は不動産小口化商品で、1つの不動産を投資家が共同所有し家賃収入や売却益を分配する仕組みとなっています。
したがって、高利回りの不動産小口化商品に投資できれば軍資金作りに役立つ訳です。
2つ目は不動産投資クラウドファンディングで、不動産投資会社が資金を募り運用して利益を投資家に還元する仕組みです。ただ、クラウドファンディングは金融機関が仲介しないので不動産投資会社の選別が重要になります。不動産投資会社が破綻するとクラウドファンディング自体も破たんすることは言うまでもないことです。
3つ目はJ-REIT・不動産投資信託でJ-REITは金融機関が仲介する不動産投資信託ですから、投資のタイミングさえ間違えなければ一定の果実が期待できる商品と言えます。
貯金ゼロのサラリーマンが軍資金を得るにはコツコツお金を貯めるしかありませんが、 そこにはいくつかの手順とコツがあるのでご紹介します。
まず、手順の1つ目としては目標を立て具体的な計画を立てることで、何事も目標設定と具体策がなければ事が前に進みません。
2つ目は強制貯金習慣を付けることで、給料などの収入が入ると一部を強制的に貯金に回しそのお金は最初から無かったものとして残りのお金で生活をすることです。
3つ目は固定費のコストカットです。
その気になれば意外に大きな金額がコストカットできる場合があります。
以下に固定費コストカットの例とその他のコストカットの例を示しました。
固定費コストカットの例 | 家賃・住宅ローン・車・携帯・ネット料金・クレジットカード会費・保険料・習い事・ジム費等 |
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その他のコストカットの例 | 自炊し外食回数を減らす |
上記の努力を続けながら最終的に貯蓄に成功するには、もう1つコツがあります。
それは、「使う口座」「貯める口座」「増やす口座」の3種の口座を作って管理することです。
「使う口座」は1ヶ月生活するための消費や必要経費を管理する口座として使います。
「貯める口座」は「使う口座」で残ったお金をこちらの口座に移して貯めていく為の口座で万が一の備えにもなります。
そして「貯める口座」の金額が50万円・100万円と一定の金額に達した場合、 「増やす口座」に移してJ-REITや投資信託などで運用することになります。
ただ、あくまでも不動産投資のための軍資金作りが目的ですから、 リスクの高い株式投資やFX投資ではなく手堅い投資信託までにすることです。
このような努力を何年間か継続できれば、不動産投資のための数百万円クラスの軍資金を作ることができるはずです。
口座の別 | 金融機関 | 使い方 |
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「使う口座」 | ネット銀行 | 家賃・食費・日用品・光熱費・ローンや保険の支払い等 |
「貯める口座」 | 都市銀行 | 定期預金(安易に下さないように) |
「増やす口座」 | 都市銀行か証券会社 | J-REITや投資信託などで運用 |
不動産投資に成功するための鉄則の1つは余裕資金で投資することですから、 できるだけ多くの軍資金を用意して投資することが求められます。
とは言えタイミングが大事な不動産投資においては、少ない軍資金で始める場合も出てきます。そこで、軍資金に関する様々なノウハウが必要になってきますが、大事なことは投資家自身が理解し納得した不動産投資であることです。
また、不動産投資は長期投資が前提ですから、何よりも安心感のある投資を続けることが重要です。そのためには軍資金に関するノウハウはもちろんですが、不動産市場や物件に関する知識も必要です。目先のテクニックやマーケットの勢いに任せた投資は長が続きしないからです。