アパート経営を始めるタイミングにおいての注意点には、実にさまざまなものがあります。
これらの注意点をきちんと把握しておくことが、アパート経営を成功に導く秘訣と言えます。ここでは、そのアパート経営を始める際の注意点について詳しく解説していきます。
アパート経営を始める際には、まず物件を選ぶ必要があります。
その際の注意点について以下に解説していきます。
利回りとは、その物件の収益性を表す数値で、その計算方法にはいくつかの種類があります。その中で、最も使われることが多いのが表面利回りと実質利回りです。
表面利回りとは、一年間に得ることができる家賃収入を物件の購入価格で割った数値のことを言います。アパート経営用の広告や物件の概要に表示してある利回りは、この表面利回りがほとんどです。
この表面利回りの注意点は、アパート経営を行う際に必要となる経費が一切考慮されていない点です。ですので、実際に表面利回りの全ての金額がアパート経営の経営者の手元に残るわけではありません。
一方実質利回りは、一年間に得ることができる家賃収入から諸々の経費を差し引いた金額をアパート経営用の不動産取得にかかった費用の合計で割った数値のことを言います。
アパートを取得する場合には、物件の購入費用以外にさまざまな諸費用が必要になり、またアパート経営を行う場合にも諸々の経費が必要になります。このような諸費用や経費が考慮されているため、実質利回りは表面利回りよりも現実的な数値です。
購入する物件を選ぶ際には、表面利回りだけではなく実質利回りにも注意しましょう。
アパート経営を行う際に物件を選ぶ場合には、その地域のニーズに合った物件を選ぶことが重要です。
一般的に、駅に近く利便性の高い地域であれば単身者用の物件のニーズが高く、逆に郊外の学校や病院などの施設が充実している地域であればファミリー向けの物件の需要が高いとされています。
このように地域の特徴により、アパート経営を行うための物件のニーズに違いがあるため、その地域のニーズに合った物件を購入することも、アパート経営を始める際の注意点です。
アパート経営を始める前に、その物件の収支計画をできるだけ綿密に行っておきましょう。
アパート経営はアパートを長期的に所有する投資法なので、アパート取得後の家賃収入から物件を所有する際に必要になる税金やアパートローンの返済、管理費などの諸経費を差し引いた後に、自分の手元にどの程度の金額が残るのかをしっかりと把握しておく必要があります。
さらにアパートは所有し続けるうちの、経年劣化による家賃の低下や修繕費用の増加といった点にも注意が必要です。 それ以外に空室リスクなども考慮しておかなければいけません。
アパート経営を始める前に、このような要素を考慮して収益計画のシミュレーションを行っておきましょう。
一般的にアパート経営を行う際には、銀行などの金融機関からアパートローンを借り入れます。では、アパートローンを借り入れる場合にはどのような注意点があるのでしょうか?
ここでは、アパートローンを借り入れる際の注意点について解説していきます。
一般的な住宅ローンに比べて、アパートローンの金利は高いのが特徴です。住宅ローンの金利相場が変動金利型で年0.4~1.3%であるのに比べて、アパートローンは同じ変動金利型でも年3~5%となっています。
住宅ローンと異なり、アパートローンは借入金額も大きくなるため、結果として返済額も多額になる点に注意しましょう。
金利が高いということは、返済期間を長期に設定すると必然的に総返済額もまた多額になるということです。
最初に設定した返済期間を短くするためにも、積極的に繰り上げ返済を行い最終的には10年から12年程度で全額返済ができる金額を借入金額の目安としましょう。
金融機関によっては、ある程度の収入がないとアパートローンが組めない可能性があります。オリックス銀行を例にとると、前年度の見込み年収が700万円以上の方しかアパートローンを組むことができません(令和元年9月14日現在)
【参考資料サイト】
他の金融機関でも必要とされる金額は異なりますが、年収によりアパートローンを組むことができない場合があるので、注意しましょう。
アパート経営を行う際には、いくつかの注意しておかなければならないリスクがあります。
ここでは、その注意すべきリスクや注意点とその対策について解説していきます。
アパート経営を行う上で、常に物件が満室であるということはまずありません。
空室が出ると、その分家賃収入が減り資金繰りに影響をきたす場合もあります。
ここでは、空室リスクを低く抑える方法について解説していきます。
アパート経営を新築の物件を建てて始める場合、その地域のニーズに合ったタイプの物件にする必要があります。
建築予定地周辺の賃貸物件の空室状況をよく調べ、どのようなタイプの物件に空室が少ないかを時間をかけて精査するようにしましょう。
自分が住むわけではないからといって設備や間取りに妥協してはいけません。
自分も住んでみたいと思えるような設備や間取りが充実した部屋にすることで、入居者は長期にわたって住み続けたいと思い、空室が出ても次の入居者が決まりやすくなります。
周辺地域の家賃相場を入念に調べておくことも、空室リスクを減らすために重要なことです。同じような設備や間取り、地域であれば入居希望者は家賃が安い物件への入居を希望するのは当然の事だといえるでしょう。
そこで、アパート経営を行う場合には周辺の家賃相場を調べておき、そこから大きく外れない家賃を設定することが重要です。
経年劣化などにより、建物が老朽化してくると、築浅のときに設定していた家賃と同等の家賃を設定しておくことが難しくなります。これを家賃下落リスクといいます。
特に新築物件の場合には、この家賃下落リスクが高い傾向があります。新築後10年程度は、家賃が下がり続けると考えておきましょう。
しかし築後10年から20年の物件では、家賃下落のペースが緩やかになるため、この程度の築年数の物件を選ぶことで家賃下落リスクを低く抑えることができます。
また、間取りや設備を充実させ、入居者の入居期間を長くすることも家賃下落リスクの対策になります。なぜなら、そのアパートに入居中の人から家賃の値下げを要求されることは非常に稀なことだからです。
このような方法で、家賃下落リスクを低く抑えるようにしましょう。
家賃滞納リスクとは、入居者から家賃が支払われず家賃収入が下がってしまうことを言います。
この家賃滞納リスクを下げるためには、保証会社を利用するという方法があります。入居者はこの家賃保証会社に一定の金額を支払い、入居者が家賃を支払えない状態になった場合に入居者に代わってこの保証会社が家賃を支払うという仕組みです。簡単に言ってしまえば、昔の連帯保証人制度と似たような仕組みになります。
また、入居時に審査をしっかりと行うことも大切です。一般的な入居審査以外にも、直接入居希望者と接する不動産業者などに入居希望者の印象などを聞いておくことも大切です。
アパート経営を始める際に、ほとんどの場合アパートローンを借り入れることになるのですが、この時に金利を変動金利型にしておいた場合に起こるリスクのことです。
変動金利型とは、その名の通り定期的に景気動向などによって定期的に金利が見直されるアパートローンのことを言います。ですので、定期的に金利が下落したり上昇したりするため毎月の返済額もまた定期的に変動することになります。
この時金利が上昇すると、当然毎月の支払額も多くなり、時にはアパート経営が赤字になってしまうことも考えられるのです。これを金利上昇リスクといいます。
この金利上昇リスクを軽減するためには、「金利が上昇し、月々の支払額も高額になる可能性がある」ということを念頭に置いてアパートローンを組むことです。
アパート経営を行う際には収益の中から税金を支払う必要が出てきます。
その税金を節税するための注意点について解説していきます。
アパート経営を行う場合に、アパート経営自体が赤字になってしまうことがあるかもしれません。そのような場合、本業からの収入とアパート経営の赤字分を相殺して支払うべき税金を低く抑えることができます。
これを損益通算といい、この損益通算を行うことによって所得税や地方税などを低く抑えることが可能です。ただし、損益通算を行う場合にも確定申告が必要になるので注意しましょう。
節税のためには、アパート経営に要した経費を余すところなく計上することが大切です。
経費として計上できるのは以下のようなものです。
経費計上できるもの | 内容 |
---|---|
減価償却費 | 購入金額を法定耐用年数(木造なら新築時から22年)で割った金額。たとえば築2年の木造アパートを2,000万円で購入した場合には、2,000万円÷(22年-2年)=100万円となり、この費用を耐用年数が経過するまで経費として計上することができる。 |
支払済みアパートローンの金利部分 | アパートローンは元金と利息を合計した金額を毎月支払う。この時利息分に値する金額 |
租税公課 | 固定資産税・都市計画税・登録免許税・不動産取得税・印紙税・事業税・アパート経営用に使用する自動車の自動車税など。 |
修繕費用 | 雨漏り・水漏れ・給湯器の故障などの修繕費用。 |
損害保険料 | 火災保険・地震保険・賃貸住宅費用保証料など。 |
物件に関わる交通費 | アパート経営を行うために利用した公共交通機関の料金や、車を利用した場合のガソリン代、有料道路代など。 |
管理費 | 物件の管理を行うために管理業者に支払った料金など。 |
物件に関わる通信費 | アパート経営を行う際に利用した電話代や切手代、インターネットのプロバイダ料など。 |
物件に関わる接待交際費 | 不動産業者や管理業者の担当者と物件に関する打ち合わせなどで飲食などを共にした際の費用。 |
物件に関わる消耗品費 | アパート経営を行う上で使用した消耗品の費用。 |
アパート経営を行う場合に、法人化するケースもあります。ここでは法人化する場合のメリットと注意点であるデメリットについて解説していきます。
個人でアパート経営を行っている人には所得税と住民税が課せられます。その税率は累進課税となっており、所得に応じて課せられる所得税の割合が変わってきます。この所得税と住民税の最高税率は55%です。
法人化してアパート経営を行う場合、法人税、法人住民税、法人事業税が課せられることになります。アパート経営を行う人の課税総所得金額が800万円程度になったとき、課せられる所得税などの税率は法人税等の税率と逆転し、法人税等の税率の方が低くなります。
そのため、アパート経営を行う人の総所得が850万円を超えた場合には、法人化することにより節税を行うことができるようになるのです。
個人でアパート経営を行っている人が死亡した場合、経営している土地とアパートは相続の対象となり、その他の遺産の合計金額によっては相続税が発生することもあります。
法人化してアパート経営を行っていれば、相続する場合には土地やアパート自体ではなく、その法人の株式を相続することになります。株式にも相続税が課せられますが、一般的に土地やアパートより株式のほうの評価額が低くなる場合が多いため、相続税を節税することができるのです。
しかも、土地・建物であれば相続人同士で分けるのが困難ですが、株式であれば容易に分けることができるのもメリットです。
個人でアパート経営を行う場合に計上できる経費については前述したとおりです。
しかし、法人化してアパート経営を行う場合、個人としてアパート経営を行う場合に計上できる経費以外にも、出張費や社員のための福利厚生費、社宅として借り入れた物件の家賃などを経費として計上することが可能になります。
このように経費として計上できる支出が増えるため、法人化したほうが税金を節約することができます。
アパート経営を法人化する場合には、定款の作成、公証人による認証、法務局での登記が必要になります。このように法人化し、設立登記することで法人格が形成され、法的な効力が発生することになります。
法人化することで、法律の権利主体としてアパート経営を行うことになるため、入居者や入居希望者は法人経営のアパートに社会的な信頼感を持ちやすくなるのです。
法人化する場合、会社設立のための費用が必要になります。
例えば合同会社を立ち上げる場合には設立報酬と税金を合わせた15万円が必要になります。また、資本金・法定費用・雑費といった費用も必要となり、個人でアパート経営を始める場合はゼロコストで始めることができるのに対して、会社設立費用が必要になる点がデメリットです。
法人化してアパート経営を行う場合には、その法人を運営していくための費用が必要になります。
法人化すると会計が複雑化するため、その処理は素人では難しいことがほとんどです。
そのため、税理士や会計士にその処理を依頼することになり、その報酬などの費用が必要になってきます。
法人としてアパート経営を行う場合、個人でアパート経営を行う場合に比べて税務調査が入る確率が高くなります。
個人でアパート経営を行っているからといって脱税を行っても良いわけではありませんが、法人化した場合税務署から脱税を行っていないかをより強く監視されるようになります。
そのため、法人化してアパート経営を行う際には、節税や納税の金額をより一層厳密に計算することが大切です。
建築業者は、業者ごとにより得意とするデザインや間取りなどが異なります。そのため自分が建てたいと思っているアパートを得意とする建築業者に依頼するようにしましょう。
近年では、入居するアパートを探すためにインターネットを利用することが増えてきました。そこで、「○○(地域名) 賃貸物件」などの検索ワードで検索上位に来る業者に依頼することをお勧めします。
そうすることにより、自分が所有する物件を多くの人に知ってもらうことができます。
自分が所有しているアパートの管理を依頼する業者の選定を行う前に、まず自分がどのような管理を望んでいるかを明確にしておくことが大切です。その上で、自分の希望に沿った管理を行ってくれる管理業者を選ぶようにしましょう。
その際には、管理料はどのような料金体系になっているか、その管理業者が管理している物件の数や空室率はその程度なのかといった点にも注意して管理業者を選ぶことをお勧めします。
一括借り上げは、不動産会社と賃貸経営を結び毎月一定の賃料を受け取る仕組みのことです。一括借り上の契約を結ぶことで、空室による家賃収入の減少や家賃滞納リスクを回避することが可能です。そのため安定した賃貸経営を行うことができるのですが、この一括借り上げにはいくつかの注意点があります。
その注意点とは、一括借り上げの契約期間中ずっと一定の家賃収入を得ることができるわけではないという点です。
経年劣化などによるアパート自体の資産価値の低下により、得られる家賃が変動するリスクがあるため、数年に一度家賃や契約の見直しが行われ、その際に家賃収入が低下する可能性もあります。また契約内容見直しの際に、見直し内容に双方が納得できない場合、契約の解除が行われることもあります。
一括借り上げによりリスクを回避できることもありますが、契約内容などによく注意しておくことも大切です。
ここまで、アパート経営を行う上での注意点について解説してきました。アパート経営を始める際にも、始めてからもさまざまな注意点があることがお判りいただけたと思います。
アパート経営を行う際には、ここで紹介した注意点をよく把握しておくようにしましょう。
注意点をきちんと把握し、リスクやトラブルへの対処法を考えておくことが、アパート経営を成功させるうえで非常に重要になるのです。