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先日、公的年金の受給額が減少傾向にあり、老後の生活資金として2,000万円必要であるとの金融庁の公表が話題を集めています。それに伴い、私的年金対策としてアパート経営の検討を始められた方も多いようです。ここでは、アパート経営で成功するためのノウハウ・儲けの目安を中心に解説します。
アパート経営で成功するためのノウハウとして、アパートの選択方法、金融機関融資、保険、管理、設備、出口戦略、ブログについて解説します。
立地、価格・築年数、利回りについて説明をします。
立地は最優先項目です。立地を間違えると、空室問題・家賃値下げに直結します。
入居候補者数の最低限の母数が必要です。
日本の大都市制度は、政令指定都市(人口50万人以上)、中核市(人口30万人以上)、施工時特例市(人口20万人以上)の3段階になっています。2019年6月時点で、人口20万人以上の都市は全国で、129都市あります。ちなみに129番目の都市は東京都西東京市で、200,012人です。
人口20万人以上はあくまでも目安ですが、今後の人口増加率・減少率を勘案した将来の推計人口を鑑みての立地選択が必要です。
これも外せない条件です。「LIFULL HOME’S:見える!賃貸経営」によりますと、入居者ニーズは、駅から徒歩15分を超えると極端に下がります。
周辺環境も大切です。生活関連施設が近くにあり、買い物がし易い環境ですと入居者には喜ばれます。しかし、工場が密集している地域や治安の悪い地域ですと、入居者はずっと住みたいとは思いませんし、入居したがらないです。
大地震による振動・津波、大型台風による強風・高潮、大雨による河川氾濫・土砂崩れは立地を選びません。日本国内であれば、何れかに遭遇します。市町村が発行するハザードマップには、危険地域の範囲が明示されています。危険範囲でのアパート経営は絶対に避けなければなりません。大きな被害にあえば、アパート経営の根幹に関わります。
購入価格・築年数は2番目の優先項目です。
購入価格・築年数は利回りや金融機関融資に影響します。
公益社団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2018年)の中に、「中古マンションの築年帯別平均価格」のデータがあります。中古マンションは年数経過とともに価格が下がります。価格は築10年までは下がり方が急になり、築10年~築20年で下がり方が緩やかになり、築20年を過ぎると再び下がり方が急になります。築25年~築30年で価格は底を打ち上昇に転じます。
Δ中古マンションの築年帯別平均価格 ※2
どの価格帯・築年数を狙うかは単純に価格の高い安いで決められません。アパートの構造と融資期間、金利の違い、利回りによって違います。それらを簡略化しますと下表になります。
築年数 | 価格帯 | 残耐用年数 | 借りられる金融機関 | 融資金利 | 利回り |
---|---|---|---|---|---|
~築10年 | 高い | 長い | 都市銀行・地方銀行 | 低い | 低い |
築10年~築20年 | 中ほど | 中ほど | 信用金庫・信用組合 | 中ほど | 中ほど |
築20年~築30年 | 安い | 短い | 国民生活金融公庫 ノンバンク | 中ほど 高い | 高い |
Δ築年数と価格帯・金融機関・利回りの関係(目安)
必ずしもこの通りになりませんが、大まかな目安として見ていただけると幸いです。
ここで、成功されている大家さんのブログを拝見しますと、投資の初期段階では、築古で価格も数百万円前後の安価な区分マンション1戸の購入から始められている場合が比較的多いです。その後、同様に築古で数千万円前後のアパートを購入し、拡大路線へと進んでいます。金融機関融資も決して都市銀行にこだわらず、ノンバンクや国民生活金融公庫などを取り混ぜて、資金確保されています。要するに利回りの高くなる物件を狙っていることがわかります。
利回りは3番目の優先項目です。
アパート経営をしたこともない評論家が、「利回りだけで選択すると失敗する」と書いている書籍やサイトが散見されます。確かにその通りですが、されど「利回りは良いにこしたことはない」です。そもそも利回りの悪いアパートで儲けられるはずがありません。利回りについての詳細は後記で説明します。
ここであえて利回りの良い物件を狙うとすれば、表面利回りは11%、実質利回りは8%、ROI(投資収益率)は3%以上が目安です。昨今、なかなかそのような物件は見当たりませんが、無ければ出てくるまで「待ち」です。決して焦って購入するものではありませんし、待つのも戦術の一つです。それまで自己資金をコツコツつくることです。
決して東京都心だけが市場ではないことの認識が必要です。利回りを軽視すると後々痛い目にあいます。
投資初期は、自己資金の割合を大きくして金融機関に頼る割合を小さくした方が良いです。区分マンション・アパート経営が順調にいけば、拡大路線を図る上でさらなる金融機関融資の活用は必至となります。
公的機関、民間機関には、様々な金融機関があります。
①公的機関 :住宅金融支援機構、国民生活金融公庫
②普通銀行 :都市銀行、地方銀行など
③長期金融機関 :信託銀行
④協同組織金融機関:信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、漁業協同組合など
⑤保険会社 :生命保険会社など
⑥ノンバンク :信販会社、クレジット会社など
これらをアパート内容(規模・構造・価格・築年数など)により、使い分けします。
金融機関の融資担当者への説明の中で大事なポイントは、
① 融資申請者の属性
② 融資申請者の担保力(金融資産、固定資産など)
③ アパート経営の事業収支と担保力
です。ここで、①、②については後記WEBサイトを参考にして下さい。
上記③アパート経営の事業収支と担保力について説明します。
金融機関では、事業収支計算書の作成にあたり、現行金利でのシミュレーションだけでなく、将来の金利上昇を見込み、4%~5%(現況金利+2%)の金利になっても事業収支がプラスになることが一点。もう一点は、入居率が80%(空室率20%)になっても事業収支がプラスになることを点検します。ここでは、利回りの良いアパートが評価され、利回りの悪いアパートは、評価されません。
A × 80% - B - C > 0
(A:満室賃料、B;必要経費、C:ローン返済額:現況金利+2%での返済額)
金融機関でのアパートの担保力(評価)に使用される方法は、積算法と収益還元法です。
① 積算法
土地価格は、
土地価格=土地面積(㎡)×路線価(宅地1㎡当たりの評価額:円/㎡)
で計算されます。建物価格は、
建物価格=再調達価格(円/㎡)×建物面積(㎡)×(法定耐用年数―経過年数)/法定耐用年数
で計算されます。再調達価格は、建物を建てる場合に1㎡当たりの建築費用で国税庁のWEBサイトに記載されている数値を使います。※3 よって、アパート評価額は、
アパート評価額 = 土地価格 + 建物価格
となります。ここでは、築年数の短い建物が評価され、築年数の長い建物は評価されにくくなります。
② 収益還元法
収益還元法は、不動産の収益性に着目し、アパートが生み出す利益(家賃収入―必要経費)を還元利回りで割り、アパート価格を計算する方法です。直接還元法とDCF法の二種類ありますが、ここでは直接還元法だけ簡単に触れます。計算式は、
アパート評価額 = 年間純利益 ÷ 還元利回り(%)× 100
となります。還元利回りは、マンション純利益から不動産価格を計算するときに使用する利回りで、大手不動産WEBサイトから公表されています。
アパート経営を行う際、多数の方が金融機関融資(アパートローン)を組み、賃貸事業を行います。そもそも融資とは、金融機関から不動産投資(アパート経営)・・・
火災保険・地震保険の加入は必須項目です。
主な保険対象項目を下記の通りです。
① 火災
② 落雷
③ 破裂・爆発
④ 風災
⑤ 雪災・ひょう災
⑥ 水漏れ
⑦ 水災
⑧ 盗難
火災保険加入時に付加できる「電気的機械的事故特約」にも加入した方が良いです。
主な保険対象項目を下記の通りです。
① 照明(電気設備)
② 受水槽(機械設備)
③ エレベーター(機械設備)
④ 機械式立体駐車場(機械設備)
⑤ 太陽光発電(電気設備)
実際に保険金がおりるか否かは、保険代理店の手腕によるところが大きいです。通常は、エアコンや給湯器の経年劣化による故障は保険の対象になりません。しかし、筆者の加入する大手損害保険会社の保険は、エアコン・給湯器の経年劣化による故障に対して全て保険の対象になりました。それは加入手続きをした保険代理店の店長の手腕によるところが大です。修繕費の軽減に繋がっています。
成功者といえる大家の管理形態は、自主管理かせいぜい管理委託までです。
一括借り上げを採用している大家はいません。
アパート経営の管理形態として、一部の業務(家賃集金、家賃振込、入居者募集、清掃など)を委託する管理委託という方法と、全部の業務を一括借り上げ会社に委託する一括借り上げという方法があります。
管理委託 | 一括借り上げ | |
---|---|---|
委託料の割合 | 家賃の5%前後 | 家賃の20%前後 |
敷金・礼金等の受取 | 大家 | 一括借り上げ会社 |
主な業務内容 (管理会社により異なる) | 入居者募集、点検・清掃、 クレーム対応、家賃回収・振込 |
|
空 室 時 | 家賃保証無 | 家賃保証有 |
家賃滞納時 | 家賃保証無 | 家賃保証有 |
契約期間 | 2年更新 | 2~30年 |
入居者契約 | 大家 | 一括借り上げ会社 |
入居者管理 | 大家 | 一括借り上げ会社 |
Δ「管理委託」と「一括借り上げ」の比較
筆者がセミナーや勉強会(大家塾)を通じて知り合った大家やブログを通じて知った大家の中で、成功者といえる大家の中に一括借り上げを採用している方はいません。自主管理か管理委託までです。何故、成功している大家は、一括借り上げを採用しないのか?メリット・デメリットを見てみます。
メリット
デメリット
Δ一括借り上げのメリット・デメリット
一括借り上げ会社に丸投げしますので、大家は現在の入居率や入居者状況、建物・設備の不具合を全く把握しないようになります。一括借り上げ会社は、大家がアパート経営について何もわからない状態のままにしておくことで、言いなりにすることができます。それが一括借り上げ会社の狙い(本音)です。
こうしてアパート経営の初心者の中で、煩わしいことに触れたくない大家が一括借り上げの餌食になります。逆に成功者は、入居者とのコミュニケーションを大切にし、建物・設備管理を自ら点検・確認することで、アパート経営能力を培っています。
一括借り上げを採用した時点でアパート経営の成功はあり得ないといえます。理由は、アパート経営能力を培っていない大家は成功者とはいえないからです。
全国賃貸住宅新聞社では、毎年「入居者に人気の設備ランキング」を発表しています。同社が全国の不動産管理会社数百社を対象に「この設備があれば家賃が高くても入居が決まるもの」を独自で調査・集計してランキングしたものです。
順位 | 2016年 | 2017年 | 2018年 |
---|---|---|---|
1位 | インターネット無料 | インターネット無料 | インターネット無料 |
2位 | エントランスのオートロック | エントランスのオートロック | 宅配ボックス |
3位 | 浴室換気乾燥機 | 宅配ボックス | エントランスのオートロック |
4位 | ウォークインクローゼット | ホームセキュリティ | 備え付け家具・家電 |
5位 | ホームセキュリティ | 浴室換気乾燥機 | 浴室換気乾燥機 |
Δ入居者に人気の設備ランキング【単身者向け】(全国賃貸住宅新聞社調べ) ※4
順位 | 2016年 | 2017年 | 2018年 |
---|---|---|---|
1位 | インターネット無料 | インターネット無料 | インターネット無料 |
2位 | 追い炊き機能 | エントランスのオートロック | 追い炊き機能 |
3位 | エントランスのオートロック | 追い炊き機能 | エントランスのオートロック |
4位 | ホームセキュリティ | 宅配ボックス | 宅配ボックス |
5位 | システムキッチン | システムキッチン | システムキッチン |
Δ入居者に人気の設備ランキング【ファミリー向け】(全国賃貸住宅新聞社調べ) ※4
単身者向け、ファミリー向けともに3年連続「インターネット無料」が1位になっています。スマートフォンの普及・機能向上により、Wi-Fiなどのインターネット環境が必須条件となりつつあります。また、「宅配ボックス」も徐々に順位を上げています。空室対策・家賃値下げ対策として、両者ともの設置が不可欠になりつつあります。
アパートを購入する時点で、出口戦略も考えておくことが大切です。そうすることで、例えば10年後の売却価格も考えるようになるので安易に購入できなくなり、慎重にならざるを得ません。
売却理由は、アパートを長期間所有することによる「修繕費の増加」や「老朽化による入居者の減少」などのリスクが生じるからです。
売却のタイミングですが、株式投資と同じで、価格が安い時期に購入し、高い時期に売却できれば理想です。運用益(インカムゲイン)の他に売却益(キャピタルゲイン)を得ることができます。しかし、「言うは易く行うは難し」です。
経済指標の中で、比較的先行して経済状態を表すのが株価です。不動産価格は概ね株価に追随します。下図は2019年9月27日時点の日経平均株価です。
Δ日経平均株価:ローソク足:月足
現在は、株価が「高止まり」している状態ですので、それに連動して不動産価格も「高止まり」しています。現在のアパート売買の選択は「売り」です。特にリーマンショック後に購入された方が売却すると、キャピタルゲインを得ることができます。決して「買い」の時期ではありません。待つことも戦術の一つです。タイミングを見計らって購入し、売却することを繰り返して所有アパートの築年数を維持し、収益力を維持することが、成功ノウハウの一つです。
アパート経営で成功もしくは失敗された大家さんが作成するブログを閲覧することもノウハウの一つです。成功談・失敗談を知ることは、今後のアパート経営の改善に活かすことができます。下手な評論家の記事よりも余程参考になります。
儲けの目安は利回りです。利回りをよくするために、必要経費やローン返済額を抑える努力が大切です。
代表的な利回りとして、表面利回り、実質利回り、ROI(投資収益率)があります。
投資物件情報の大半は表面利回りです。
表面利回り= 満室賃料 ÷ 物件購入価格 × 100
実質利回り=(満室賃料―必要経費)÷(物件購入価格+購入諸経費)×100
ROI=(満室賃料―必要経費―ローン返済額)÷(物件購入価格+購入諸経費)×100
となります。ただし、どの計算式も満室賃料で計算されていますが、実際には満室状態が続くことはあり得ません。そこで、実質利回りとROIについては空室率を加味して検討します。
実質利回り=(満室賃料―必要経費)÷(物件購入価格+購入諸経費)×(100―空室率)
ROI=(満室賃料―必要経費―ローン返済額)÷(物件購入価格+購入諸経費)×(100-空室率)
表面利回りと実質利回りの違いは、必要経費と購入諸経費が加味されているか否かです。実質利回りとROIの違いは、ローン返済額が加味されているか否かです。
金融機関の融資審査において、空室率を加味したROIの計算式を採用しているところが多いです。
ちなみに空室率20%、現行金利+2%の条件で入力した計算結果がプラスになるか否かを見ています。
投資判断のための利回りの使い方ですが、物件候補選択などに使うのが表面利回り・実質利回りです。
最初に検索機能の付いた「楽待」や「健美家」などのWEBサイトから「表面利回り」にて、例えば11%以上と入力し物件候補を数十件ほど抽出します。この段階で大まかに立地・価格・築年数を点検し、該当しないものは外します。そこから「実質利回り」にて絞り込みをします。
実質利回りの計算式の中で、必要経費の目安はアパートの場合、満室賃料の約20%前後です。(EV付は約25%)購入時諸経費は、アパート購入価格の約7%前後です。空室率は10%をみます。よって次の実質利回り概算式で計算した結果が、例えば8%以上の物件であれば残します。
実質利回り={満室賃料×(100-20%)}÷{物件購入価格×(100+7%)}×(100―10%)
概算式必要経費率購入諸経費率空室率
(EV付:25%、区分マンション:25%)
残った物件を最終的にROIで比較します。
ローン返済額は金利、借入期間、自己資金投入額により違ってきますので、条件を変えながらシミュレーションし、比較検討します。ROIの目安は3%以上です。3%に満たなければ外すか、自己資金の増額、金利のさらに安い金融機関の選択、返済期間の延長などを調整して3%を確保します。また、この段階でも最終的に立地・価格・築年数を再点検し検討し直します。ROIの特徴は、建築構造や購入金額の異なる物件を比較検討できる点です。
以上をまとめますと、表面利回り・実質利回りは物件候補の選択・絞りだしに使い、最後の投資判断の決め手にROIを使います。
大都市と郊外とでは、購入価格が違うため一概にいえません。しかし、あえて目安を出すとするならば、筆者のこれまでのアパート経営の経験と成功されている大家とのやり取りの中で出てきた数字は下表の通りです。
利回りの種類 | 地域 | 利回りの目安 |
---|---|---|
表面利回り | 大都市 | 9%以上 |
大都市以外 | 11%以上 | |
実質利回り | 大都市 | 7%以上 |
大都市以外 | 8%以上 | |
ROI (投資収益率) |
大都市 | 2%以上 |
大都市以外 | 3%以上 |
Δ中古アパート購入の場合の利回りの目安
あくまでも一つの目安として見ていただければ幸いです。
アパート経営を検討する際、儲かる場合の利回りの目安を知りたい方は多いです。利回りによりある程度の目安は付けられますが・・・
実質利回り・ROIをよくするために必要経費・購入時諸経費を抑える努力が大切です。
必要経費・購入時諸経費は下記の通りです。
必要経費(毎年出費) | 購入時諸経費(購入時出費) |
---|---|
管理費(管理業務委託費) | 測量費・境界明示費(無い場合) |
固定資産税・都市計画税 | 不動産取得税・登録免許税・印紙税 |
日常修繕費・大規模修繕積立金 | ― |
火災・損害保険料(毎年払いの場合) | 火災・損害保険料(一括払いの場合) |
広告宣伝費・賃貸仲介料 (通常家賃1~2か月分) | 広告宣伝費・売買仲介料 (通常購入価格の3%) |
税理士報酬(確認申請) | 司法書士報酬(登記手続き) |
資料費・消耗品費 | 資料費・消耗品費 |
接待交際費・交通費 | 接待交際費・交通費 |
水道光熱費(共用部分) | ― |
Δ必要経費・購入時諸経費
家賃収入から出費されるものの中で一番大きくなる金額です。
ローン返済率は、満室家賃収入に占めるアパートローン返済額の割合です。40%以下に抑えるとアパート経営は安全圏に入ります。自己資金投入により返済額を抑えることは、ROIを良くする意味でも大切です。
ローン返済率 | 安全度合 |
---|---|
40%未満 | 優(安全) |
40%以上~50%未満 | 良(注意) |
50%以上~55%未満 | 可(警告) |
55%以上 | 不可(危険) |
Δローン返済比率と安全度合
アパートローン返済以外にも、必要経費がかかり、その割合は満室家賃収入の約20%です。エレベーター施設があると、必要経費は約25%をみます。管理形態を一括借り上げにしますと、管理費だけで20%前後を要しますので、さらにキャッシュフローは悪くなります。空室率は最低でも10%はみておきます。それらを図示しますと下図のようになります。
満室家賃収入 100% | キャッシュフロー (利益) | 約20% |
---|---|---|
必要経費(管理費、固定資産税など) | 約20% | |
空室率 | 約10% | |
ローン返済額 (元金+利息) | 約50%未満 |
Δ家賃収入に対する出費割合の目安
必要経費とローン返済額を抑えた分、キャッシュフロー(利益)は増えます。例えば、管理を自主管理にして5%分を浮かします。さらにローン返済率40%に抑えると10%浮きます。合わせて15%浮かすことができ、キャッシュフロー(利益)は35%となり、高利回り(ROI)を実現できます。
キャッシュフローは収入と支出の差額の手残りです。 アパート経営の成功の鍵は、キャッシュフローをいかに増やすかという点です。
収益を良くすることは、利回りを良くすることです。
大家にできることは下記の通りです。
① 高い入居率を維持:現時点での入居者の長期入居、不動産会社連携による迅速な入居者付け
② 必要経費を抑える:できれば自主管理することにより管理費を0にする
③ アパートローン借入額を抑え、返済額を少なくする
④ アパートローン金利を低くし、返済額を少なくする
⑤ アパートローンの返済期間を長めに設定し、返済額を少なくする
⑥ 自己資金に余裕ができれば、繰上げ返済し、返済額を少なくする
これらが出来れば、長期安定収入を確保でき、アパート経営の成功に繋がります。
先ず、アパート経営のメリット・デメリットをまとめると下表の通りです。
メリット
デメリット
Δアパート経営のメリット・デメリット
メリットを活かすことができると、アパート経営は順風満帆となります。
建物評価は数十年経過すれば0になりますが、土地評価は維持し続けます。2019年3月20日、国土交通省より平成31年度公示地価が公表されました。
日本全国の平均公示地価・基準地価は1991年のバブル崩壊と2008年のリーマンショックから下がり続けましたが、2013年で下げ止まり、現在は緩やかな上昇に転じています。前年と比較しますと平均公示地価は1.16%の上昇となっています。この30年間の地価推移より考察しますと、地価は微増の傾向と思われます。 ※5
同じく2019年2月、国土交通省より「不動産市場動向マンスリーレポート」が公表されました。それによりますと、住宅地の価格指数は2011年から横ばいとなっています。 ※6
Δ不動産価格指数(住宅)全国 国土交通省
以上国土交通省の公表より、全国の地価は微増、全国の住宅地は横ばいとなっています。
アパート経営は、レバレッジ(てこの原理)を活かすことが出来ます。金融機関のアパートローンを利用することにより、少ない自己資金でアパート経営を行うことができます。
フルローン(アパート購入金額全額):100%融資が適用されますと、自己資金は購入時諸経費(概ね7%)だけとなります。よって自己資金の約15倍の融資が可能となります。しかし、通常は購入金額の70%~80%の融資ですから自己資金の約3倍~4倍の融資となります。
相続税、所得税・住民税・事業税の節税になります。
土地の相続税評価額は路線価方式で評価され、地価公示価格の約80%の価格となります。
さらに土地にアパートを建て賃貸すると貸家建付地評価となり、土地評価額はさらに約20%(借地権割合×借家権割合)下がります。つまり土地の相続税評価額はトータルで、80%×(100-20%)=64%の評価となります。
建物の相続税評価額は固定資産税評価額が使われ、一般的に建築工事費の50~60%の評価になります。さらに建物が賃貸されている場合、建物の相続税評価額は30%(借家権割合)下がり、70%の評価となります。つまり建物の相続税評価額はトータルで、50%~60%×(100-30%)=35%~42%の評価となります。
■所得税・住民税・事業税
アパートローン返済初期は、
利息 > 元金 、 減価償却費 > 元金
となりますので、
利息 + 減価償却費 > 利息 + 元金
(課税所得上の経費) (実際のローン返済額)
となり、課税所得上はマイナスとなり、キャッシュフロー(利益)はプラスになるという現象が生じ易くなります。不動産所得がマイナスになりますと、給与所得のプラス分と損益通算できますので、課税所得(不動産所得+給与所得)を抑えることができます。よって、所得税・住民税・事業税の節税となります。
公的年金の受給額は減少傾向にあり、受給年齢も引き上げされ、不安は高まる一方です。アパート経営を始め、経験を積み安定的に家賃収入を得るノウハウを身に付ければ、私的年金の確保となります。
金融機関からアパートローンを受ける場合、「団体信用生命保険(団信)」に加入することができます。「団体信用生命保険」に加入すると、契約者がローン返済期間中に万が一、死亡もしくは高度障害者となった場合、ローン残高は保険金から返済されます。残された家族には、無借金のアパートを残すことができ、安定した家賃収入を得ることができます。
デメリットに対して、いかに速やかに対処できるか否かがプロとアマの違いとなり、アパート経営の成功か失敗かに繋がります。アパート経営のコツはデメリットを克服することです。克服できれば、メリットを活かすことができます。
近所に新たなアパートが建築された場合、競合が増えますので入居者確保が徐々に難しくなります。家賃値下げなどの対策により対処しても効果が上がらない場合には、空室となります。家賃収入が減少しますので、ローン返済に支障をきたすこととなります。
空室リスクをできるだけ小さく抑えるためにも、購入前の立地調査と併せて市場調査(周辺家賃、空地状況など)は大事になります。
騒音問題、ゴミ問題、ペットなど様々な入居者トラブルがありますが、厄介なのが家賃滞納リスクです。家賃を払わずに部屋を使用されているため、空室リスクよりも手間がかかり、場合によっては立退きまで発展します。その予防として入居者には必ず家賃保証会社へ加入することを条件にします。
建物・設備ともに経年劣化・損傷が出てきます。これを放置しますと傷口が大きくなり、入居者ストレス→入居者退去→空室→新たな入居者が入らない→空室拡大へと悪循環が生じます。
自身の建物・設備点検で劣化・損傷に気づいた時や管理会社・入居者から連絡が入った際は、速やかに対処するようにします。放置するよりも初期段階で対処した方が修繕費も安くつきますし、入居者のストレスも小さい段階で解消できます。
また日頃からの修繕費の積立をするように心がけます。目安は満室賃料の5%です。これでも不足する場合がありますので、余裕がある時は少しでも将来の修繕費にとっておくようにします。
アパートローンで変動金利型を利用する場合、返済期間中に金利が上昇して返済額が増えるリスクがあります。そのことを想定して金利が2%~3%上昇しても利益が出るように事前のシミュレーションを行い、アパートを選択することが大切です。
アパートの購入・売却は、それぞれ数週間から半年ほど要します。株式投資の場合、デイトレードのように1日の中で何度も売買ができるのと比較すると流動性はかなり低くなります。
土地活用にも色々な方法がありますが、その代表格がアパート経営といえます。何事にもメリット・デメリットはありますが、当然アパート経営にもメリット・デメリットがあります。
先輩大家が自らの経験を綴ったアパート経営の格闘記ともいえるブログは宝の山です。そこには成功のノウハウがぎっしり詰まっているからです。また失敗談を赤裸々に綴っているブログも多々あります。これを活かさない手はありません。多数のブログの中から、成功例と失敗例を記したブログを数点挙げてみました。参考にされることをお勧めします。
http://blog.livedoor.jp/capital_flight/
http://investment-it.com/index.htm
https://www.rakumachi.jp/news/column/58092
http://fudosan-jigoku.doorblog.jp/
以上、アパート経営で成功するためのノウハウと儲けの目安を中心に解説しました。よくアパート経営のメリットとして、「不労所得になる」と記載されている書籍やWEBサイトを見かけますが、完全な不労所得にはなりません。最小限の手間暇をかけなければ、アパート経営の成功へと繋がりません。特に家賃収入の源泉である入居者に対してどれだけサービスを行うことができるかが鍵となります。「入居者あってのアパート経営」であることを再認識し、成功への道のりを歩まれることを祈願いたします。
出所
※1 「見える!賃貸経営」 LIFULL HOME’S 不動産投資
※2 「築年数から見た首都圏の不動産流通機構(2018年)」 公益財団法人東日本流通機構
※3 「建物の標準的な建築価格表(単位:千円/㎡)」 国税庁
※4 「(全国賃貸住宅新聞社調べ)入居者に人気の設備ランキング2016~2018」一般社団法人ハトマーク支援機構
※5 「土地総合情報システム」 国土交通省
※6 「不動産市場動向マンスリーレポート」 国土交通省