アパート経営を行う際、多数の方が金融機関融資(アパートローン)を組み、賃貸事業を行います。
そもそも融資とは、金融機関から不動産投資(アパート経営)に要する資金の調達(借入)のことです。
当ページでは、
など、アパート経営をするにあたり必要な金融機関融資について詳しく解説しています。
これからアパート経営を考えている人は必見です。
アパート経営を始めるにあたり、何を目的に据えるかを明確にすることが大切です。
アパート経営の場合は税務上、貸家建付地となりアパート入居者の権利分が差し引かれ、評価を落とすことが出来ます。よって相続税対策としての効果は大きいです。また固定資産税・都市計画税の評価減や所得税対策としても有効です。
アパートの入居率が高いことが前提となりますが、安定した家賃収入が入ります。完全な不労所得ではなく、入居者管理・建物維持・設備維持・清掃などの小まめな管理が必要です。しかし、一括借り上げのシステムを利用すると上記管理の大半を行ってくれますが、その分高い管理料を請求されます。
アパート経営はレバレッジ(てこの原理)を効かすことが出来ます。アパートローンを利用することにより、少ない自己資金で不動産投資を行うことが出来ます。投資の観点からも魅力的です。
金融機関融資(アパートローン)を使って、アパート経営を行うことのメリット・デメリットを説明します。
アパート経営を始めるには多額の資金を要します。
アパートの新築工事費用や既存アパートの購入費用などが必要になります。さらに新築工事や購入に伴う諸経費が、工事費用や購入費用の約7%前後かかります。
少なくとも数千万円を要するアパート経営事業ですが、極端な場合ですが手元に投資資金が無くても金融機関融資を受けられれば、アパート経営を始めることが出来ます。
アパート経営で利益を大きくするためには、物件を増やして投資規模の拡大を要します。
いかに自己資金の割合を小さくし、融資額の割合を大きく出来るかがポインになります。
それが実行出来れば、投資拡大のスピード化を図ることが出来ます。
アパートローンの返済にアパートからの家賃収入を充てることが出来ます。ただし、入居率を高く維持することが条件になります。
入居率が低くなるとアパートローン返済が出来ず、自己資金からの持ち出しとなります。
さらに入居率の低い状態が長く続くと破綻のリスクも抱えます。
破綻までいきますと、アパートだけでなく、自宅などの土地・建物を共同担保として抵当権設定をしている場合、負債の不足分を自宅の土地・建物にて負債処理される可能性があります。
アパートローンは、住宅金融支援機構、都市銀行をはじめとして、さまざまな金融機関が扱います。
審査基準はそれぞれの金融機関によって異なります。
アパートローンを取り扱う公的金融機関には、住宅金融支援機構があります。
旧住宅金融公庫 → 住宅金融支援機構
アパートローンを取り扱う民間金融機関には、都市銀行や地方銀行、生命保険会社や信販会社などさまざまあります。
①普通銀行 :都市銀行、地方銀行、第二地方銀行協会加盟銀行、在日外国銀行
②長期金融機関 :信託銀行
③協同組織金融機関:信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、漁業協同組合、等
①保険会社 :生命保険会社、損害保険会社、等
②ノンバンク:信販会社、クレジット会社、等
アパートローンには、元利均等方式と元金均等方式の二通りの返済方法があります。
元利均等方式は返済期間、ずっと返済額を一定にして融資金額を返済する方法です。
毎回の返済額の中で元金部分と利息部分の割合を変えていきます。
返済初期は利息部分の割合が大きくなります。現在最も利用されている返済方式です。
メリットとしては、返済額が返済期間ずっと一定なのでアパート経営の事業収支計画を立てやすいです。デメリットとしては、元金返済方式よりも総返済額は増えます。
元金均等方式は返済期間、ずっと返済額の中の元金部分を一定にして融資金額を返済する方法です。
返済初期は利息部分の割合が大きく、返済額は多いのですが、返済が進むとともに利息部分が小さくなり徐々に返済額が少なくなる方式です。
メリットとしては、元利均等方式に比べ元金部分の返済額の割合が大きいため、総返済額は少なくなります。デメリットとしては、返済初期の返済額が最も大きくなるので、アパート経営の負担が大きくなります。
金利には、変動金利、固定金利(全期間型)、固定金利(期間選択型)があります。
変動金利は、返済期間中に定期的(一般的には半年)に金利見直しのある方式です。
金利が下がれば利息部分が減り、返済額は減ります。
金利が上がれば利息部分が増え、返済額は増えます。
メリットとしては、固定金利よりも金利は低く、金利が上がらなければ低金利の恩恵を受け続けます。
デメリットとしては、金利が上がるリスクがあり、金利が上がれば返済額も増え、アパート経営の負担が大きくなります。
固定金利(全期間型)は、返済期間中ずっと金利を固定できる方式です。
返済期間中に市場金利が上がっても、金利見直しが無いため返済額の変更はありません。
メリットとしては、返済期間中の金利が固定されていますので、返済額に変動はありません。
デメリットとしては、変動金利よりも金利が高くなります。
固定金利(期間選択型)は、固定金利の期間(3年、5年、10年、等)を選択し、
残りの返済期間は変動金利か固定金利を選択出来ます。
メリット・デメリットともに、変動金利と固定金利のメリット・デメリットを併せ持ちます。
金融機関融資を受けるにあたって大切なものは、申込書類です。
揃える書類は、金融機関により異なりますが、大まかには以下の通りです。
公的書類は3か月以内のものでなければ無効になるため注意しましょう。
①源泉徴収票:3期分または確定申告書:3期分
②給与明細書:3か月分
③納税証明書:3期分
④住民票:3部
⑤印鑑証明書:3部
⑥運転免許証、健康保険証
⑦土地全部事項証明書、建物全部事項証明書(中古アパート購入の場合)、公図、地積測量図
⑧アパート位置図(最寄駅)、アパート周辺環境図(学校、店舗、等)、路線価図
⑨アパート計画図面(配置図、平面図、立面図)、事業収支計画書
⑩借入返済予定表(既に借入がある場合には、全ての返済予定表)
⑪保有資産一覧表(名寄帳、等)
⑫家族構成表(相続人)
アパート経営にとって重要なポイントは、金融機関融資が受けられるか否かです。
金融機関融資を受けられなければ、アパート経営を断念せざるを得ません。金融機関融資を受けるためにも万全の準備を行って融資担当者と交渉に臨むことは言うまでもありません。
金融機関へ融資交渉をするにあたり、上記書類をファイリングして融資担当者へ説明を行います。
融資担当者はさらに上席へ説明を行うため、そのことを見越してわかりやすい資料作成を行います。
特に融資担当者への説明の中で大事なポイントは、アパート経営の事業収支、土地担保力、融資申請者の属性です。
アパート経営の事業収支計算書の作成にあたり、現行金利でのシミュレーションだけでなく、将来の金利上昇を見込み、4~5%の金利になっても事業収支がプラスになる場合も作成し、安全性を強調するようにします。
ここでの注意点は、金融機関側も事業収支を検討するためのシミュレーションプログラムを所有しており、独自の判断基準を持っています。よって、甘い事業収支計画書だけを提示することは芳しくありません。
アパート経営の規模によっては、所有する自宅やそれ以外の土地・建物についても担保提供を求められる可能性があります。その際、共同担保として抵当権設定をすることになりますので、土地・建物の登記事項全部証明書などの書類を準備し提示出来るようにしておきます。
融資申請者の勤務先、勤続年数、年間所得、所有資産、家族構成(相続人)や他の親族についてもヒアリングされます。また連帯保証人も勤務先、勤続年数、年間所得、所有資産、等をヒアリングされ、保証能力についての見込みを確認されます。
連帯保証人を立てられない場合は、保証料を負担して保証会社を立てることも出来ます。 その際、保証会社の審査も通過しなければなりません。
金融機関の融資審査が通らなかった場合、考えられる主な理由として三つ考えられます。
一つは事業収支が悪い場合です。これを機にアパート経営の根本的なプラン見直しや断念するかも含めた再検討を要します。
一つは事業収支が良いのですが、融資申請人の属性に問題がある場合です。
もう一つは中古アパート購入の場合です。
事業収支は良いのですが、建物が建築基準法に抵触する場合です。比較的多いのが、建蔽率や容積率の超過で、既存不適格物件です。事業収支が良ければ、銀行系は融資を避けますが、信販会社やノンバンクは融資を行う可能性があります。ただし、金利は高くなります。
アパート経営の途中で返済期間の短縮は認められますが、返済期間の延長は原則認められません。
余裕を持った返済期間の設定が大切です。
融資審査を通過した後に判明する追加費用があります。
例えば、既存の築古アパートを建替えする際の入居者立退料の高騰です。他にも近隣対策費の高騰、地中埋設物撤去工事、埋蔵文化財発掘工事などです。金融機関がアパート経営に関係する費用として追加融資を認める場合もありますが、自己資金での資金調達を求められる場合もあります。
この場合も事前調査にて、ある程度想定出来ますので、注意を要します。
安易に連帯保証人になり、借金の返済義務が生じても返済出来ずに悩みを抱える連帯保証人は少なくありません。そうなる前に、連帯保証人の義務をよく理解することが大切です。
保証人も連帯保証人も、主債務者が契約通りに借金を返済できない場合に、主債務者に代わって金融機関に返済する義務を負う人という点では同じですが、以下のように違いがあります。
保証人には、催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益を有しますが、連帯保証人にはありません。 主債務者と連帯保証人は同じ立場にあります。そのことを説明します。
金融機関が保証人に対して借金返済を請求した場合です。
保証人であれば、金融機関に対して主債務者に請求をするように主張することが出来ます。(催告の抗弁権)しかし、連帯保証人は左記のような主張することが出来ません。
主債務者が借金返済出来るだけの資産があるにも関わらず借金返済をしない場合です。
保証人であれば、主債務者に借金返済出来るだけの資産の所有を理由に、金融機関に対して主債務者の資産に強制執行を行うように主張することが出来ます。(検索の抗弁権)しかし、連帯保証人は左記のような主張をすることが出来ません。金融機関に対して借金返済をしなければなりません。
保証人が複数いる場合です。
保証人は借金を保証人数で割った金額を金融機関に対して返済すればよいです。
しかし、連帯保証人は、借金を連帯保証人数で割ることが出来ず、全額を返済しなければなりません。
連帯保証人は、主債務者と同じ立場であり、一般的には主債務者に代わって借金返済が出来るだけの経済力を求められます。
しかし金融機関はアパートローンの場合、連帯保証人として主債務者の配偶者(専業主婦であっても)を求めます。主債務者が万が一亡くなった場合、配偶者がアパートを含めた資産を相続する可能性が高いからです。
金融機関はアパートの家賃収入からアパートローンの返済が行われることを融資の前提としています。配偶者がアパート経営を継続することが、金融機関にとってもメリットとなります。
アパート経営は多額の資金を要するため、アパートローンを検討する際、必然的に融資額は多額となります。そのため、アパートローンの連帯保証人として家族の同意が得られない場合や家族への負担を避ける場合も出てきます。その際活用できるのが、保証会社や団体信用生命保険(団信)です。
団体信用生命保険(団信)は、主債務者がアパートローン返済中に亡くなったり、高度障害者になったりした場合に適用されます。主債務者に代わり、保険会社がアパートローンの残債を弁済する補償保険です。
主債務者が亡くなったり、高度障害者になった場合、アパートローンの返済義務が無くなり、家賃収入がそのまま入ります。相続人や重度障害になった主債務者にとって残債が無くなりますから、経済的には大きなメリットになります。
保証する分、金利は上がります。
通常、アパートローンの金利に約0.3%上がります。また融資額に上限が設けられています。
下記のモデルケースを想定して、金利の違いによる場合(モデルケース1)と返済期間の違いによる場合(モデルケース2)の収益性をシミュレーションします。
【モデルケース1】
・木造2階建、総戸数1DK10戸
・資金総額:6,500万円(建築費:6,000万円、諸費用:500万円)
・アパートローン借入額:5,000万円、自己資金:1,500万円
・返済期間:20年、元利均等方式
・家賃収入:6万円/戸(60万円/月、720万円/年)
・入居状況:満室
・管理:業者に委託(管理費:家賃収入の5%)
内訳 | 金利1.0% | 金利3.0% | 金利5.0% | |
---|---|---|---|---|
収入 | 家賃収入 | 60.0万円/月 | ||
720.0万円/年 | ||||
支出 | ローン返済額 | 23.0万円 | 27.7万円 | 33.0万円 |
管理費(5%) | 3.0万円 | |||
光熱費・清掃費等(5%) | 3.0万円 | |||
固定資産税・都市計画税 | 4.2万円 | |||
支出合計 | 33.2万円 | 37.9万円 | 43.2万円 | |
利益 | 月間利益 | 26.8万円 | 22.1万円 | 16.8万円 |
年間利益 | 321.6万円 | 265.2万円 | 201.6万円 | |
総返済額 | 元金+利息 | 5,518.7万円 | 6,655.2万円 | 7,919.5万円 |
利回り | 表面利回り | 12.0% | ||
実質利回り | 5.4% | 4.4% | 3.4% |
Δ金利の違いによる収益性
ここで、金利3.0%の場合の表面利回りと実質利回りの計算式を挙げますと、
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 建築工事費
= 720万円 ÷ 6,000万円 = 12.0%
実質利回り = (年間家賃収入 - 年間支出) ÷ 建築工事費
= ( 720万円 - 37.9×12 ) ÷ 6,000万円 = 4.4%
ここで金利の違いによる収益性を考察します。
金利1%と金利5%の場合を比較しますと、年間利益は120万円違ってきます。総返済額にいたっては2,400万円違ってきます。やはり都市銀行系のアパートローン(金利が低い)を活用した方が、ノンバンク系のアパートローン(金利が高い)を活用するよりも圧倒的に金利が低く設定されて有利であることがわかります。ただし、都市銀行系のアパートローンの審査は厳しいです。
また、金利1%の場合の月間利益は26.8万円ですので、4戸空室になっても月間利益はプラスになり、5戸空室になって月間利益はマイナスとなります。一方金利5%の場合の月間利益は16.8万円ですので、2戸空室になれば月間利益はプラスですが、3戸空室になれば月間利益はマイナスとなります。空室率への対応が2戸違ってきます。空室率の観点からも少しでも金利の低い都市銀行系のアパートローンを選択した方が有利です。
【モデルケース2】
・木造2階建、総戸数1DK10戸
・資金総額:6,500万円(建築費:6,000万円、諸費用:500万円)
・アパートローン借入額:5,000万円、自己資金:1,500万円
・金利:3.0%、元利均等方式
・家賃収入:6万円/戸(60万円/月、720万円/年)
・入居状況:満室
・管理:業者に委託(管理費:家賃収入の5%)
内訳 | 返済期間20年 | 返済期間25年 | 返済期間30年 | |
---|---|---|---|---|
収入 | 家賃収入 | 60.0万円/月 | ||
720.0万円/年 | ||||
支出 | ローン返済額 | 27.7万円 | 23.7万円 | 21.1万円 |
管理費(5%) | 3.0万円 | |||
光熱費・清掃費等(5%) | 3.0万円 | |||
固定資産税・都市計画税 | 4.2万円 | |||
支出合計 | 37.9万円 | 33.9万円 | 31.3万円 | |
利益 | 月間利益 | 22.1万円 | 26.1万円 | 28.7万円 |
年間利益 | 265.2万円 | 313.2万円 | 344.4万円 | |
総返済額 | 元金+利息 | 6,655.2万円 | 7,113.2万円 | 7,588.8万円 |
利回り | 表面利回り | 12.0% | ||
実質利回り | 4.4% | 5.2% | 5.7% |
Δ返済期間の違いによる収益性
ここで返済期間の違いによる収益性の考察をします。
返済期間30年と返済期間20年の場合を比較しますと、年間利益は79.2万円違います。総返済額は933.6万円違ってきます。返済期間の長い方が年間利益は多くなりますが、総返済額も多くなります。
また、返済期間30年の場合の月間利益は28.7万円ですので、4戸空室になっても月間利益はプラスになりますが、5戸空室になると月間利益はマイナスとなります。一方返済期間20年の場合の月間利益は22.1万円ですので、3戸空室になれば月間利益はプラスですが、4戸空室になれば月間利益はマイナスとなります。空室率への対応が1戸違ってきます。空室率の観点からは返済期間の長い方が対応出来ます。
最近、スルガ銀行の融資問題はアパート経営にとって少なからず影響を及ぼしています。特に個人向けのアパートローンに注力していたため、アパート経営を始めた個人投資家も多いと思われます。しかし、スルガ方式が崩れたことにより、金融機関融資全体に歯止めがかかり、アパート経営への参入は厳しさを増しました。逆にいえば、健全経営の出来るアパート経営にしか融資されなくなりますので、破綻する投資家も少なくなるということです。金融機関融資の審査の厳しさをうまく活用してアパート経営の参入を検討されることをお勧めします。